死が二人を分かつまで

”日常その肆”

【現代っ子】

「だからそこじゃなくて、こっちのボタンだって」


「･･････？」



　新樹の部屋で二人は格闘していた。



　戦い？



　いやいや･･････スマホとだ。



　セツナにとって、スマートフォンとはもはや魔法そのもの。



　薄っぺらい板で、何でもできる。自由に映像も見られるし、離れている人物ともコミュニケーションがとれる。



　だが･･････難しい。



　今のところ、彼女が使えているのはメッセージのやりとりと、電話くらいだ。



　数日前の『芥川VSジャック・ブライン』の動画を観るべく、新樹から使い方をレクチャーしてもらっているのだが･･････



「ここ！　押す場所！！」


「･･････（ググッ！）」


「わわわ！　力強く押しすぎだって！！」



　フリック入力すらまともに使えていない。



　このままだと、動画を観る前に液晶画面を破壊しかねない。



「まったく･･････セツナだって現代っ子なんだから、使いこなせないと･･････」


「･･････」


「あっ･･････ごめんって･･････ゆっくり教えるから･･････な？」


「･･････（コクリ）」



　ここ最近になって、新樹はセツナの扱い方を少しずつだが心得るようになっていた。



　彼女の機嫌はまず顔に出る。



　そのまま不機嫌に突入したら、無言になる。



　さらに放置すると･･････目で殺されるんじゃないかと思えるほど睨まれる。



　新樹は彼女の機嫌を速やかに察知して、上手いこと対処していた。