死が二人を分かつまで

KAI

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”VS最強編”

【師匠の意地】

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 その後は、早かった。



 ブラインたちは、人目につかないようにタクシーを呼んで帰って行った。



 代わりに、芥川のファイトマネーを置いておこうとした。



 だが、芥川は受け取ろうとしなかった。



 そこで折衷案として、芥川の治療にかかる費用分だけ貰うということになり、去って行ったのだ。



 もちろん・・・・・・新樹に彼の名前入りのサインを書くのも、忘れなかった。



「スッゲー!! 『ミスター・アラキヘ』だって!! 最高!!」


『よかったわね』



 喜んでいる彼を見ると、セツナもうれしくなる。



「にしても、強かった・・・・・・正直、貴方がたに負ける姿を見せる寸前でした」


「僕らもヒヤヒヤしましたよ!」


「・・・・・・あそこまで完膚なきまでに殴られると、床に倒れたままになりたくなる」



 芥川が、ポツリとこぼす。



「あのまま寝転んでいれば、どれだけラクか・・・・・・勝ちも負けもどうでもいいや・・・・・・なんて思えるほどの相手でしたよ」


「だったら、なんで立ったんです?」


「・・・・・・聞こえたからですよ」


「へ?」


「お二人の、私を呼ぶ声が・・・・・・アレを聞いたら、たとえ心臓をえぐり取られていようとも、師匠として立たねばならぬ・・・・・・そう思いました」



 どうやら照れたらしく、芥川は二階に戻ろうとした。



「今日の稽古は終わりです・・・・・・お二人に後で動画を送っておくので、好きなときに観ておいて下さい・・・・・・以上!」



 タンタン・・・・・・



 頭を掻きながら逃げていく師匠を、二人は誇らしげに、それと茶化しながら、笑顔で見つめていた。



『・・・・・・今年はいい年になりそうね』


「そうだね・・・・・・」



 新しい年の、始まりだ。


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