死が二人を分かつまで

”VS最強編”

【ボクシングの強み】

（やっぱしだ･･････苦しっ！）



　ボクシングの連続パンチ。



　それも分厚いグローブが視界を支配してくる。



　感情的にも、体感的にも、圧迫感が襲ってきて空気を吸う瞬間が見当たらない。



　酸素濃度が薄くなり･･････



　次の行動のための、脳から身体への伝達が遅くなる。



　その隙を狙って、またもや打たれる。



　そして、ダメージが加えられる代わりに酸素が失われていく。



　それの繰り返し･･････



　かつて･･････ボクシングと異種格闘技戦をした者たちが、口を揃えていった言葉がある。



『組み付けば、何とかなると思っていた』



　パンチしかないスポーツ。



　こんな単純な物の見方で、戦うと･･････自分の見る目のなさを後悔することとなる。



　毎日毎日繰り返される、トレーニング。



　その過酷なトレーニングの全てが、二本の腕に乗っかっている。



　パンチだけ？



　違う。



『パンチだけで事足りる』のだ。



　パァン！　パァン！　パァン！



　顔面に喰らっている･･････



「先生が･･････圧されている･･････」


「･･････」



　ドリュッッ！！



　もう一発･･････ストレート･･････



　パシッ！！



　ようやく来た･･････チャンス･･････到来･･････



　薄くなっている意識で、芥川は狙っていた。



　肘関節･･････



「先生が取ったぁ！！」



　そのまま捻り･･････



　シュポッ！！



　！？



　腕が逃げていった･･････



　引きの力･･････



　ボクシングにとって、腕を伸ばす力が必須なのは周知の事実である。



　だが･･････同時に、腕を引く力も、重要。



　伸ばして引くーーーー



　その単純にして簡単な動きを･･････いったい何十万回してきた？



　関節技を狙った掴みなど･･････振りほどくのは容易い。



（おっと･･････逃した魚は大きかったですねぇ）



　関節を取るべく、近づきすぎた･･････



　この後の展開は･･････分かる。



　恐るべき、未来だ。



　ボッ！！



　ガキョッッ！！



「ぐふ･･････」



　鉤打ち･･････



　要するに、フックだ。



　コレがよく効く･･････



　アゴに見事当たれば、頭が揺さぶられて脳みそが叩きつけられる。



　そうじゃなくても、頭蓋骨が壊れていく。



　腰を捻り、あらゆる筋力を総動員させた、フック。



　それを至近距離でもらっちまった･･････