死が二人を分かつまで

KAI

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”各々の年越し”

【熱戦の予感】

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 ピコン♪



 セツナの新品スマホが鳴った。



 芥川と悪戦苦闘の末に、ようやくメッセージのやりとりができるくらいまで使えるようになった。



 画面には・・・・・・



『今、何観てる?』



 新樹からのメッセージが。



 シャリンッ



 手首につけたブレスレットがキラリと光る。



「・・・・・・」


『歌』



 慣れない手つきで、文字を入力していく。



 返事は秒速で返ってきた。



『僕は格闘技観てる』


『ママさんとパパさんと一緒に?』


『二人は一階で紅白観てるんだ。僕は自分の部屋でテレビつけてる』


『そう・・・・・・何か用事があった?』


『別に・・・・・・セツナは今、何やってるのかなって、気になっただけ』



 耳が熱い・・・・・・誰かに意識されているという幸福感で満たされてしまう。



『こうやってメッセージやりとりしていると・・・・・・なんだか、一緒にいるみたい』



 ・・・・・・



 既読になってはいるが、新樹からの返事が止まった。



 自分でも少し恥ずかしいことを言ったなと思ったが、彼の反応を楽しんでいる自分もある。



『お前・・・・・・そういうこと、他のヤツと連絡先交換しても、あんまり言うなよ?』


『なんで?』


『言わなくても分かれ。無意識!』



 口角を上げながらやりとりを続けていると・・・・・・



「ふ~! 外は寒いですねぇ!」



 ヤニ休憩を終えた芥川が帰ってきた。



 どうしてそんなことをしたのかは分からなかったが、咄嗟にスマホを胸に押し当てて隠した。



「どうです? 面白い歌ありました?」


『うん! 聞き惚れちゃった! こういうのが日本人の子供に人気なのね!』


「ほぉ・・・・・・」



 芥川がテレビ画面を見ると、そこでは往年の演歌歌手が、七〇年代ヒットソングを熱唱している。



(これが・・・・・・ねぇ・・・・・・)



 ウソはすぐに分かる。



 だが、あえて触れずに、テーブルに戻って日本酒の瓶を傾けた。



「格闘技に変えてみましょうか・・・・・・きっと・・・・・・新樹さんのことですから、観ているでしょう」


『そうね・・・・・・』



 ピッ!



『さてさて今夜のメインイベンツゥゥゥ!! ボクシング世界統一ヘヴィー級チャンピオン!! ジャック・ブライィィィン!!』



 凄まじい声援に包まれて、黒人の筋骨隆々の男が登場してきた。



 驚くことに、すでに汗まみれ。



 目は充血し、ギラギラと炎が宿っている。


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