死が二人を分かつまで

KAI

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”各々の年越し”

【大晦日】

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 大晦日の夜ーーーー



 街は静まり返る。



 それは、大都会東京でも同じこと。



 江東区にある芥川道場には、煌々と電気がついていた。



「今年も良い稽古ができました。神前に礼!」



 芥川とセツナが並んで正座をし、深々と頭を下げていた。



 セツナは、怪我によりここにいない新樹の分まで、神様にお礼をした。



「さて・・・・・・紅白歌合戦と格闘技・・・・・・どっち観ます?」


『どっちも』


「いいでしょう! 格闘技のチャンネルでCMになったら紅白を観て、興味のない歌が始まったらチャンネルを戻す、日本人特有の大晦日の儀式をしましょう!!」



 テレビの前で、セツナは釘付けになった。



 慣れてきたとはいえ、やはり液晶テレビ・・・・・・薄い液晶の中に、人間が映っている・・・・・・信じられない光景だ・・・・・・



 まずは格闘技・・・・・・ではなく、紅白歌合戦。



 なぜか?



「格闘技の試合って、大抵前座の戦いがあって、中盤終盤にかけてメインマッチがあるんです!! なので、歌う順番も知りたいので最初は紅白からです!!」



 ・・・・・・らしい。



 今年の紅白歌合戦は、ネットで話題になった歌手が中心に選ばれている。どうやら、若者をターゲットにした座組のようで、アラフィフに片足を突っ込んでいる芥川には難しくて分からないことばかりだった。



 ではセツナは若いから興味がある?



 いやいや・・・・・・故郷にはテレビがなかった。



 ゆえに、流行の歌手も知らない。



 二人で紅白の演出にツッコミを入れた辺りで飽きてきてしまった。



『・・・・・・格闘技観たい』


「同感」



 ピッ!



『さあ!! アジアチャンピオンに挑戦するのは、中国で負け無しの王者!! リー・チェン!!』



 ・・・・・・セツナにしてみれば、レベルが低い戦いだった。



 何しろ、日頃から芥川だの沼田だの丹波だの『』たちを見ている。



 ゆえに、なんだかいい大人がペチペチやっているな~程度にしか思えなかったのだ。



『・・・・・・歌』


「はいはい!」



 ピッ!



 紅白では、人気アニメソングが熱唱されている。



 正直芥川はピンとこなかったが・・・・・・



「・・・・・・!」



 セツナの琴線には触れたらしい。



 しばらく、ヒットアニソンメドレーが続いたので、セツナは聞き込み、芥川は音を立てないようにそうっとベランダに出てタバコ休憩をしていた。



 ピコン♪



 セツナの新品スマホが鳴った。


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