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”日常その参”
【座頭の願い】
しおりを挟む二つの眼窩は木の洞のようにぽっかり黒く、視力が有る無し以前の話しであることが分かる。
「こんなにしてくれちゃったアイツ・・・・・・嗚呼・・・・・・今も見えてるヨ・・・・・・あっしの目ン玉をえぐり出してるアイツの顔・・・・・・忘れない・・・・・・忘れないヨネ」
「・・・・・・心中お察しします」
「う~ん・・・・・・無理だネ」
「はい?」
「目ン玉両方ほじくられた人間じゃないとさ、この二〇年間の気持ちなんて・・・・・・分かるはずないと思わない?」
「・・・・・・ま、そうですね」
「冬重さんも残念だったよね・・・・・・もう十年かぁ・・・・・・早いネ」
「・・・・・・」
あえて無言を選んだ芥川は、紫煙を吐き出す。
「冬重さん・・・・・・惜しい・・・・・・」
門次の体が震えだした。
そしてーーーー
「プ・・・・・・ププ・・・・・・ピヒャハハハハッッ!! あっしが殺したいと思ってたのにぃ!! 横取りされちゃったンだもんネ!! ヒャハハハハッッ!!」
狂ったように笑い出した。
「・・・・・・きっと、冬重先生が聞けば、喜んだでしょうね」
「うんうん・・・・・・あっしの『死針拳』が完成してたら・・・・・・真っ先に殺しちゃおうって楽しみにしてたンだけど」
ブ~ン・・・・・・
換気扇からだろうか?
一匹の蜂が迷い込んできた。
大きい・・・・・・成人男性を殺すこともできるオオスズメバチだ。
透明な羽を動かして、空中を優雅に飛んでいる。
芥川は動かなかった。
ここは・・・・・・田中 門次の・・・・・・彼の縄張り・・・・・・彼の領域。
そこにうごめく生物の、生殺与奪の権は、彼が握っているのだ。
「・・・・・・」
ビュンッッ!!
ビシッッ・・・・・・
・・・・・・ポタ・・・・・・
テーブルの上に、オオスズメバチが落ちてきた。
針が、貫通している。
虫の死に際なのに、ピクリとも痙攣していない。
一針だ・・・・・・
生物へ致命の一撃を、細い針で・・・・・・しかも、視覚に頼ることもなく・・・・・・
「ピヒャハハ・・・・・・」
針をつまみ・・・・・・
そして・・・・・・
バリ・・・・・・むしゃ・・・・・・
ゴクン・・・・・・
「蜂って美味しいヨネ♪」
「ふっ・・・・・・イカレてる」
「最高の褒め言葉だヨ~!! ピヒャハハハハッッ!!」
さて、狂人との談笑もここまでのようだ。
ピピピッ!!
「十五分・・・・・・経ちましたね」
「アララ・・・・・・時間が過ぎるのは早いネ~」
とーーーー
「・・・・・・年明け」
「はい?」
「出血大サービス・・・・・・黒真会が動くのは、年が明けてから・・・・・・」
「・・・・・・ほう」
「それまで、せいぜい幸せな生活を楽しむんだネ~!! 年が明けたら・・・・・・血みどろのパーティーの始まりだからねぇ!! ピヒャハハハハッッ!!」
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