死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その参”

【田中 門次】

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「ドウモ・・・・・・田中 門次デス」



 見えていないはず・・・・・・



 なのに二人に向かって手を振っている・・・・・・



「門次先生・・・・・・実は弟子のひとりが怪我をしてしまい・・・・・・」


「ウン・・・・・・そうね・・・・・・左足かな? 挫いたね」



 あ・・・・・・当ててみせた・・・・・・



「冷やした?」


「ええ」


「なら・・・・・・ここに寝てもらってイイカナ?」



 恐る恐る・・・・・・ベッドに横に・・・・・・



「おや?」



 門次が鼻を鳴らす。



「女の子・・・・・・キミ、ダネ・・・・・・がとは言わないでおくケド」


「・・・・・・!」


「おま!! デリケートなことに首突っ込むなよ!!」



 顔を赤くしている彼女の代わりに、新樹が抗議した。



 すると・・・・・・



「ピ・・・・・・」


「ぴ?」


「ピヒャハハハハッッ!! ごめんネ!! オジサンなぁんでも鼻で分かっちゃうからサ!!」



 南国の鳥のような、奇怪な笑い声・・・・・・



「先生・・・・・・そこまで」


「あ~すまんすまん。足のことだったネ」



 門次は横に戻った新樹の足を触る。



 その指はタコの触手のように、うねうねくねくね・・・・・・動き回り、さぐる。



「ウン・・・・・・炎症はもう引いてるネ。だけど、ちょっと筋肉が伸びちゃったカナ?」



 触っただけで分かるのか・・・・・・?



「失礼なこと言ったお詫びに、特別サービスで治してアゲル」



 カチャカチャ・・・・・・



 門次は慣れた足取りで手洗い場に行くと、何本もの細い針を用意してきた。



「今はすごいヨネ~あっしらの頃みたいに太くて痛い痛い針じゃなくて、治療用の細いヤツがあるんだからサ」



 門次はアルコールで新樹のふくらはぎを消毒する。



 そしてーーーー



「はいっ」



 ・・・・・・刺された感触すらない。



 針の頭を、門次が指で弾いて刺したことは分かるが・・・・・・痛みは皆無。



「息を吸って~」



 言われた通りに深呼吸をする。



「ハイ! 吐いて~」



 息を吐く・・・・・・ぅぅっっ!?



 門次が針を指でくりくりと微調整した。



 すると、筋肉が動いているのが分かる・・・・・・!



 なんだ・・・・・・?



 この感覚は・・・・・・



「ウン。届いたネ」



 じゃあ次・・・・・・と、門次がアルコールで膝の皿から少し下の、外側を消毒した。



「はいっ」



 !?



 今度は伝わった・・・・・・



 だが、痛みじゃない・・・・・・



 足全体が・・・・・・緊張から解放されるような、痛気持ちいい感覚・・・・・・



「ココはネ『足三里あしさんり』って言うツボだよ。かの松尾芭蕉まつおばしょうが旅の道中に灸を据えていたと、語り継げられているくらいよく効くからネ」



 プスッ



 プスッ



 プスッ



 ・・・・・・



 あっという間に八本の針が刺さった。

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