死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その参”

【武人の社会的地位】

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 稽古が終わり、芥川は二人を見送ると、とある場所に出かけていた。



 今日は宇嶋道場も休み。



 フリーな日だったが、芥川は尋常ではない状況に置かれる。



 それは・・・・・・



「え~・・・・・・道場経営。門下生は二名・・・・・・月謝は取っていない・・・・・・と」



 消費者金融会社の、面接だった。



「あの・・・・・・一応、あの『』の指導員もしておりまして・・・・・・」


ですよね? ちょっと収入源として認めることは・・・・・・」


「はあ・・・・・・そうですか・・・・・・」



 担当者のインテリ眼鏡は、書類とも言えない紙切れ一枚を見て呆れかえっている。



 それもそうだろう。



 この芥川。



 武術家としては超超一流。



 武道界・警察・ヤクザ・・・・・・あらゆる分野の強者たちが評価をして、敬っている。



 が・・・・・・それは強さのみを基準にした特殊な世界の話し。



 一般的な社会での、彼の価値は・・・・・・



「え~前職は二〇年前に出版社に勤めていたと・・・・・・しかし、二年で退職・・・・・・この十八年間の空白の間は何をされてましたか?」


「ええっと・・・・・・修行?」


「はぁ・・・・・・申し訳ありませんが、返済能力があると認めることはできません」


「そこを何とかぁ!!」



 芥川はめり込むほど頭を下げた。



「道場の維持費と税金、光熱費と愛する弟子のスマホ代+交友費を!!」


「ですから・・・・・・申し訳ありませんが・・・・・・」


「そこをなんとか・・・・・・」



 あれほど『武』を追求し、強さを有している男とは思えぬほど頼りない。



 がーーーー



 担当の眼鏡がキラリと光った。



「・・・・・・ここだけの話し・・・・・・」



 突然、小声になる。
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