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”日常その弐”
【本能への敗北】
しおりを挟むまただ・・・・・・あの匂い・・・・・・
ミルクのような甘ったるい匂いと、稽古の後の汗の香り・・・・・・
違う・・・・・・これは・・・・・・
フェロモン。
鼻腔をくすぐり、息に熱を持つ。
熱い・・・・・・
熱い・・・・・・ッッ!!
シルクの銀髪を、撫でたい。
大きなルビーのような瞳に、自分だけを映したい。
淡い色の唇に・・・・・・柔らかで細い身体に・・・・・・触れたい。
呼吸の数が無意識に多くなっている。
心臓の鼓動がうるさい・・・・・・ッッ!!
だが・・・・・・
「ハッハッ・・・・・・」
「・・・・・・?」
もう・・・・・・
止められない。
ガバッ!!
気がついたら、セツナの折れそうなほどの身体に、腕を巻き付けていた。
「・・・・・・!?」
「・・・・・・その・・・・・・僕は・・・・・・」
がーーーー
フルフル・・・・・・
カタカタ・・・・・・
「!?」
セツナの体が・・・・・・細かく震えている。
緊張状態で、身を固めて、恐怖に震えている。
バッと体を引き離したら・・・・・・
「!?」
「・・・・・・っ」
泣いていた・・・・・・
切れ長の目から、涙がポロリと零れてくるのだ。
呆気にとられていると・・・・・・
ぐっ・・・・・・
顔を腕で覆い隠して、セツナの口から・・・・・・
「ヤ・・・・・・メテ・・・・・・」
・・・・・・ッッ!!
初めて聞いた・・・・・・
凜とした、鈴のごとき声ーーーー
「ヤメテ・・・・・・ゴメン・・・・・・ゴメン・・・・・・」
ポロポロ・・・・・・
止まらない・・・・・・
新樹がした行動は・・・・・・そしてその結果を見て、彼は・・・・・・
「も・・・・・・申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!!」
土・下・座!!
カーペットに額を擦りつけて、自分のしでかした悪行を悔いた。
「本当にごめんなさい・・・・・・魔が差したとか、言い訳しないから・・・・・・」
「グス・・・・・・グスッ・・・・・・」
「その・・・・・・俺を思い切り殴ってください!! 気が済むまでタコ殴りに・・・・・・!!」
そうだ・・・・・・
失念してしまっていた・・・・・・
この娘は、人売りに捕まって、売春目的で売り飛ばされたのだ。
それは男性の行動に、異常なまでに敏感になるに決まっている。
その辺の雑誌に書いているような『イイ雰囲気』なんて、アテになるわけないじゃないか!!
愚か者だ・・・・・・
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