死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その弐”

【宇嶋の化けの皮】

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「・・・・・・ぐぁぁッッ!!」


「・・・・・・小僧ぉ・・・・・・てめえ・・・・・・何言ったぁ?」



 ガッ!!



 今度は両の肩を老人に掴まれた。



 ガコンッッ!!



「が・・・・・・!!」



 肩脱臼・・・・・・



「おめえが親父の金玉で泳いでた時分から・・・・・・追求して半世紀以上・・・・・・舐められたらよぉ・・・・・・ワシも本気出すしかねぇだろ?」



 明らかに先ほどまでの高齢者じゃない!!



 鬼!!



「なぁ? ・・・・・・なあ!?」



 ガクンッッ!!



 両肩に手を置かれたまま、膝から崩れ落ちた。



 跪く形だ。



 小柄な老人と・・・・・・標高が同じになった。



「額汚して、謝ってもらうっきゃねえなぁ?」



 グググッ・・・・・・



「くっ・・・・・・!? ぐっ・・・・・・!!」



 どれだけ足に力を入れても、無理。



 まるで、見えない石板を何枚も何枚も置かれているかのようだ・・・・・・



「ションベン漏らしたんだ・・・・・・これくれぇ・・・・・・どうってこたぁねえだろ?」



 グググッ・・・・・・



 とうとう、老人を見上げてしまった。



 そして・・・・・・



 身体が畳まれていく。



 比喩ではない。



 折り畳まれている!!



「ひ・・・・・・ヒイ!!」



 とうとう地面から離れているのは頭だけになった。



「よっこらせ・・・・・・」



「・・・・・・ッッ!!」



 土下座・・・・・・ッッ!!



 日本人の、最大限にして最屈辱の、謝罪方法ッッ!!



「・・・・・・コホン。言葉遣いが悪かったのぅ」



「ぐぬぬぬっっ!!!!」



「こうして、抑えてしまえばもう反撃は不可能じゃ。そして・・・・・・術の研鑽を積めば!!」



 ツン・・・・・・



 宇嶋は右手の人差し指を、レックス・谷の金色のオールバックのてっぺんに刺した。



 というか・・・・・・置いた。



 端から見れば、土下座している大男の頭に、老人が指を押し当てているだけ。



 しかしながら、芥川の目には全て見えていた。



(・・・・・・技術の全てが見える)



 人差し指で・・・・・・制している。



 起き上がろうとする抵抗を、総動員されている筋肉のパワーを、殺すつもりの闘志を・・・・・・その全てを、指一本。それだけで抑えつけている。



 離れ技にもほどがある・・・・・・



 これが・・・・・・合気・・・・・・



「ぐううぅぅぅぅううう!!!!」



 とーーーー



「カメラマン君」



 宇嶋が柔らかい笑みを浮かべながら、カメラマンに声をかけた。



「綺麗に撮れておるかね?」



「え、ええ・・・・・・そりゃあもう・・・・・・」



 いつの間にか、カメラマンの手汗が滝のように流れ、タブレットが地面に滑り落ちていた。



『オシッコ漏らして土下座・・・・・・ある意味歴史に残る(笑)』



『弱ぁ・・・・・・引いたわ・・・・・・』



『汚ねぇケツ向けんな』



『達人最強!! 達人最強!!』



 こんなコメントがずらりと並んでいた。


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