死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その弐”

【宇嶋の実戦】

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「こ、ここでなにやってやがる!?」


「お手伝いで、教えてるんです」


「チ・・・・・・」


「いやはや、丹波さんのキック効いたでしょう? 大丈夫でした? あの後」


「ちょ、お前・・・・・・!!」



 タブレットの画面にはーーーー



『誰? 知り合い?』


『イケオジやん』


『てか何? 怪我してたん?』


『説明はよ』


「ま、マズいッス谷さん! 視聴者が・・・・・・」


「あ~! 今日はお前に用はないンだよ!! この道場で一番強いヤツ出せ!!」


「ん~・・・・・・私で良ければ」



 レックス・谷とカメラマンの顔から血の気が引く。



「・・・・・・と、言いたいところですが、私じゃダメ」


「は?」


「この道場で一番強い・・・・・・ならば他ならぬ・・・・・・」



 芥川が得意気に車椅子に座る老人の肩を叩いた。



「宇嶋先生でしょ♪」



 ・・・・・・



 ・・・・・・なぁんだ・・・・・・



「このジイさん? それマジで言ってる?」


「おや、疑うのですか?」


「棺桶にほぼ全身入ってンじゃ~ん!! 無理無理!!」



 レックス・谷は嘲笑するが、宇嶋はピクリとも動かない。



「あれれ? ジイさんお眠かな?」


「・・・・・・カッカッカ!!」



 あまりにも急に笑ったので、一種のホラーのようになった。



「コレは面白い・・・・・・今時、道場破りなどとは・・・・・・懐かしいのぅ」



 ヨイショ・・・・・・



 よろり・・・・・・よろり・・・・・・



 着物姿で、立ち上がって歩く。



 道場中央で、止まった。



「まあ、来なされ。遠慮なく」


「は~~~~ぁ?」


「言葉は不要・・・・・・どちらが強いか、舌を動かすよりも立ち合えばすぐに分かるコトさね」


「・・・・・・マジで?」



 コメントには・・・・・・



『高齢者をひとりでも減らせ~! レックス~!』


『本当に死んだら放送事故(笑)』


『達人なんて現実にいない。レックス! 見せつけろ!』


「谷さん! もう引けないッス!」


「・・・・・・いいぜ」



 レックス・谷が変顔をしながら、カメラにくるっと向かう。



「み~んな~!! 俺様、達人の化けの皮剥いじゃうから!! 応援シクヨロ!!」



 一方・・・・・・



「大先生!!」


「師範代・・・・・・君は学んでいなさい」


「しかし・・・・・・先生は・・・・・・」


「なぁに・・・・・・大丈夫じゃよ♪」



 タンクトップ姿のレックス・谷VS宇嶋 蓮太郎の始まりだったーーーー



 レックス・谷・・・・・・後ろから生徒たちと共に見学していた芥川の目には、身長から体重まで数値が鮮明に見えていた。



(あの男・・・・・・身長は一八五といったところ・・・・・・畳の沈む音から察するに、体重は一〇〇キロほど・・・・・・一見肥満に見えるが、筋肉量は相当・・・・・・体脂肪率は二五%未満か・・・・・・)



 やはり、いいガタイだ。



 他方で宇嶋先生。



 身の丈は女性よりも小さい。



 身長で言えば一四四センチ。体重は最近ダイエットにハマっていると聞き及ぶ・・・・・・元から痩せてたが、さらに絞って四〇キロ弱・・・・・・



 加えて、二人の格好にも注目だ。



 レックス・谷は動きやすいタンクトップにハーフパンツ。



 しかし宇嶋は冬用の着物を着て、しっかりと帯まで結んでいるのだ。



 はてさて・・・・・・どうなるか・・・・・・



 芥川の目にはーーーー



 結果は見えていた。



 いや・・・・・・おそらく、師範代含め生徒全てが、戦う前から分かっている。



 問題は・・・・・・どう勝つのか・・・・・・



 落とすのか、投げるのか、絞めるのか、突くのか・・・・・・



 ともかく・・・・・・これだけは確かだ・・・・・・



 宇嶋先生が勝つ!!
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