死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その弐”

【凸】

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「次は誰だ!! この俺様がぶっ飛ばーす!!」


「イイッスね谷さん!! 同接三〇〇〇突破しましたよ!!」


「みんな見ってる~? 今日も生で激弱道場を破っていくよ~!!」



 年が暮れ始めているというのに、黒のタンクトップ姿の、腕が太い巨漢が叫んでいる。



 カメラを持った男が、後方でタブレットも操作しながら撮っていた。



「え~っと『本日三つ目の道場破り』と・・・・・・固定コメントに書いておきました!!」


「はりきって行くぜ~!」



 ガチャリ・・・・・・



 キィ・・・・・・



 キィ・・・・・・



 キィ・・・・・・



「ん?」



 奥のドアが開き、使い古された車椅子に座った仙人のごとし老人が、現れた。



 そして・・・・・・その車椅子を押しているのは!!



「げっ!! お前!!」


「あっ! たしか『』さんでしたっけ?」


「『』だっ! このヤロー!!」



 一ヶ月前に、芥川道場に道場破りを仕掛けてきた有名配信者。



 しかし、あの時は新樹によってあっさりと倒された上に、小細工も失敗。



 さらにさらに、出現したヤクザ者丹波によってボコボコにされたのだった。



 あれから一ヶ月、顔面を蹴られていたので、配信も動画投稿もできなかった。



 強さで売っている。



 強ければ、ウザくても目障りでも空気が読めなくても不快でも、許される免罪符になる。



 それゆえに、むしろ強さという鎖で繋がれているのだ。



 ボコボコの自分を撮影なんてできない。



 一ヶ月の長期休業を余儀なくされた。



 信じられないほどの急流であるネットの世界。



 一ヶ月も動きのないチャンネルは忘れられてしまう。



 勝手に『オワコン』扱いされてしまう。



 必死にSNSで『ちょっと度肝抜く企画考えてっからよ! みんな待ってろよ!』と威勢のいいことを投稿して茶を濁していたが、それも限界。



 とうとう、これまでの迷惑行為をさらに超える『ライブ道場破り』を決行!!



 反響は凄まじく、二つの道場の師範を倒して登録者数が増えてきた。



 無論、突然の道場破りにルール無用の戦い方。



 怪我のリスクも通報されるリスクもある。



 そして一番は・・・・・・負けるリスク。



 前回の新樹への敗北は、動画のお蔵入りということで事なきを得たが・・・・・・生配信でそれは通用しない。



 それでもやらなければいけない・・・・・・



 忘れ去られ、ネットの底辺をもう一度味わうくらいなら・・・・・・



 殺す気でやってやる!!



 ・・・・・・と、格好はつけているが、実際は二つの道場はホームページも持たない小さい小さい道場。



 視聴者から『ショボい』と指摘された。



 なので、急成長を続け警察への指南もしているこの『宇嶋流 合気道 身守りの会』にやってきたのである。



 ちょうど、師範代による演武の途中だった。



 いいカモだ・・・・・・



 二発で倒してやった。



 これで、俺様のスタイルに文句を言うヤツも黙らせることができる・・・・・・



 そう思っていたところだった。



 まさか、二度と会いたくない男トップの芥川がいるとは・・・・・・


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