死が二人を分かつまで

”芥川 月の誕生”

【京月 冬紀】

　彼女はまだ二十にもなっていなかった。



　一方で芥川は三十路･･････



「･･････本当によろしいのですか？」



　あつらえられた部屋の寝室で、芥川が質問した。



「貴女の美貌であれば･･････私なんかよりももっと優れた男性と･･････」


「パパの言葉に逆らえないです」



　パサッ･･････



　冬紀が上着を脱いだ。



　大きな双丘の形が、薄暗い部屋でも視認できる。



「･･････貴女が望まないのであれば、私は何もしない」



　芥川は湧き上がってくる劣情を飲み込み、ベッドの上で足を組んでいた。



「結婚生活を偽装することくらい、何とかなりましょう･･････先生にはウソをつき、貴女には真まことの幸せを･･････」



　ぎゅっ･･････



　いつの間にか裸になっていた冬紀が、抱きついてきていた。



「私の言葉･･････聞いてくれませんか？」


「･･････なんですか？」


「私も･･････強い子種が･･････そして、強い夫が欲しかった･･････」


「･･････左様で」


「私たち親子がおかしいことくらい、知ってるわ･･････でもね、あなたもその中に入る」


「･･････」


「これで家族ね･･････うれしい」



　ドッ！



　ふぁさっ･･････



　鼻息荒い芥川が、冬紀を押し倒した。



「もう･･････後戻りはできませんよ？」


「いいわ･･････私を求めて？　抱いて？　思う存分、ぶつけて？」



　そこからは･･････獣の盛り。



　詳しくは描写しないでおく。



　しかし、性的に興奮した冬紀に特徴的だった行動がある。



　ひとつは決して避妊をしないこと。



　もうひとつは『行為』の最中に、思い切り噛みついてくることだ。爪も立て、皮膚が裂かれる。



　甘い一夜を過ごした翌日は、背中のジンジンする痛みに悩まされた。



　だが、この新婚生活が、芥川・冬紀の両者にとって幸せであったことは、誰にも否定できない事実である。



　金は、冬重が無条件に無限に援助してくれた。



　あれほど過酷な鍛錬も、週に数回と減った。



　二人はじっくりと仲を深める時間ができたのだ。



　おしどり夫婦ーーーーその言葉がピッタリと合う。



　しかし･･････身体も心もひとつになるにつれ、知りたくもないことを知ることになる。



　冬紀はーーーー虐待されていた。