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”芥川 月の誕生”
【空術の成り立ち】
しおりを挟む「芥川君・・・・・・」
「はぁはぁ・・・・・・師匠」
「見事・・・・・・ヒヒヒ・・・・・・全く見事!」
血まみれで骨も折られているのに、笑っていた。
逆の方向に向いている手で、無理矢理拍手をしていた。
「ヒャハハハ・・・・・・傑作ができた・・・・・・ヒヒヒ」
パ・・・・・・チ・・・・・・パチ・・・・・・
「師匠のおかげです。ありがとうございます」
深々と礼をしているーーーー
殺したいと思うほど憎んでいた相手にーーーー
「・・・・・・今日の夜・・・・・・空けておきなさい」
「はい」
夜になり。
包帯でグルグル巻きの冬重と、酒を酌み交わした。
「君も強くなったよね」
「何度でも言いますが、師匠のおかげです」
「いや~もう私から学ぶことないよ」
「そんなことは・・・・・・」
「・・・・・・芥川君」
「なんです?」
「・・・・・・空術について、教えてあげる」
唐突だったが、耳の穴をかっぽじって、聞き逃すまいと耳を拡げた。
『空術』・・・・・・歴史は文献が残っている平安時代よりも古い。
遙か昔には、大和王朝に破れた豪族が、山の奥で密かに『空の手で人を殺める技』の探求を始めたらしい。
形になったのは源平合戦の時代。
武器を持たずに、人間を殺す『殺人術』を完成させた。
戦国時代には多くの忍たちが、町人に混じって暗殺をすべく『空術』という武術の推移を高めた。
まだ、解体新書もない時代に、遺体を秘密裏に掘り出しては解剖をして人体の構造についての研究が始まった。
もちろん・・・・・・その次は生きた人間を捕らえ、様々なバリエーションの技を試した。
一〇〇を超える技が存在したが、実際に試し、即死に至らなかった技を排除して三五のみが残った。
純粋な『殺人術』の結晶こそがーーーー『空術』
しかし、戦乱の時代が終わり、戦いが減ると同時に『空術』を使う者は幕府の役人によって捕縛。処刑された。
本は燃やされ、稽古は見つかるために、口伝でのみ伝えられることとなる。
その影響でさらに使用者は激減。
開国した頃には、伝承者の数は両の指で事足りた。
そして現在ーーーー
「ま、私が、最後のひとり」
「・・・・・・最後の?」
「うん。最後」
「しかし・・・・・・私がいるじゃないですか」
「うん。君は確かに強い。私よりも。多分、世の中のチャンピオンよりも」
でもね・・・・・・
「『空術』ってなると・・・・・・どうなのかなぁ~って」
「まだ足りぬ・・・・・・と?」
「う~ん・・・・・・君を拾った時にね、殺したいほどの憎しみが『空術』の源流に近いと思ったンだけど・・・・・・ちょっと違うかな」
「違うとは?」
「たとえばさ、今、私を殺せる?」
「それは・・・・・・」
剃刀のような視線が、芥川を捉える。
「できるかできないか・・・・・・だけで答えなさい」
「・・・・・・できない」
「そうそう。そこだよ。結局、君が身につけたのは『武』であり『殺人術』じゃない。人も殺せない『空術使い』なんて、いないいない」
お猪口を空にする冬重。
「どうしたら『空術』を完成させることができるのか・・・・・・ずぅっと悩んでいるんだけどねぇ」
とーーーー
ふすまが開き、焼かれた肉が山盛りの大皿を持った冬紀が現れた。
彼女はサナギが蝶になるかのごとく、見事なまでに美女に育っていた。
その美しさは、まさしく『美』という言葉の具現化の成功と言えるだろう。
「あっ! そうだ!」
冬重はニマァ~と笑った。
「芥川君。冬紀を娶りなさい」
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