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”芥川 月の誕生”
【空術】
しおりを挟む芥川は普通の家庭に育った。
普通の高校に行き、中の上の成績。
まあまあな大学に行き、そこそこの企業に就職。
そんな、普遍的な人生のはずだった。
転機は、両親の死だった。
強盗に入られた。
金品を狙った、チンケな男。
そんな男と、不幸にも鉢合わせてしまった。
その場で二人をナイフで殺害。
逃げようとしたが、血まみれの逃走中の姿を発見されて逮捕。
裁判では極刑が言い渡されて、死刑が確定。
そんな、流れるような捜査と裁判の過程でずうっと、息子は考えていた。
(俺が、強ければ助けられたかな・・・・・・)
誰に話しても「そんなことはない」と否定されるが、考えずにはいられない。
犯人を憎いと思うよりも、自分の無力さを無念に感じていた。
そんなオリに、獄中の犯人から手紙が来たのである。
謝罪の言葉だった。
空虚な文章で、何も感じることなく、破って捨てようと思っていたが・・・・・・最後の一枚に有り得ないことが書いてあった。
『認められるためには人殺しも厭わぬーーーー』
『自分はその道で生きると決めーーーー』
『ーーーーと、敬愛なる師により試練を与えられた』
『ーーーーそして、あの日がやってきた』
『ーーーーその名は『空術』最強の武術ーーーー』
死に際の悪漢の戯れ言など、どうでもいい・・・・・・
その日のうちに探偵を雇い、徹底的に『空術』について調べた。
プロを使ってなお、その不気味な武術は不鮮明だった。
平安時代の文献に『空術』という単語があること。
いくつかの古書にも見つかったこと。
そして、教えている者がひとりだけ居ること。
それを知れた。
道場の場所を探偵が調べると、直行・・・・・・
・・・・・・現れたのは、まるで妖怪のような壮年の男性だった。
禿鷲のような印象を受けたその男性は『京月 冬重』
黒い作務衣を着て隠れていたが、身体中にあらゆる種類の傷跡が残っていた。
「はいはい。なんでしょうか?」
青年、芥川 月は全てを話した。
すると・・・・・・
「イヒヒヒ・・・・・・ヒャハハハ!!!!」
狂ったように笑う。
否・・・・・・嗤う。
「そうでしたかぁ!! あのバカ弟子がぁ!? ヒャハハハ!!!!」
「・・・・・・貴方が殺しを唆したんじゃないのか!!」
「ええ!! 殺せと言いましたよ!! でも、そんな素人さんを・・・・・・ぷ・・・・・・しかも捕まって死刑なんて・・・・・・プヒャヒャヒャ!!!!」
許せん!!
芥川は相続した家を売った金で購入した、拳銃を向けた。
「殺してやる・・・・・・ッッ!!」
「どうぞ!! いっぺん死んでみたいと思っていましたぁヒャハハハ!!!!」
「死んで当然の人間だ!! この悪魔め!!」
パァン・・・・・・
!?
消え・・・・・・
「アヒャヒャヒャ!!」
下!?
銃口を向けたが、ガッチリと銃身を掴まれた。
グッ・・・・・・グッ・・・・・・
「なっ・・・・・・!?」
「そうなんです!! ココをね!! 強く握られると撃てないんですよ銃って!!」
そのまま、アゴにデコピンを喰らった。
・・・・・・暗闇・・・・・・
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