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”記憶に残る一日篇”
【悪魔の美貌】
しおりを挟む女神のごとき女・・・・・・
美しすぎて・・・・・・眩しいくらいだ。
しかし、むしろ完璧すぎて不気味だ。
そして、たたえている笑みも、妖しい。
「うふふ・・・・・・可愛いじゃない」
「・・・・・・」
匂う・・・・・・
香水?
体臭?
違う・・・・・・血の臭気だ・・・・・・
セツナの脳裏に浮かんだのは、紛れもない肉食獣。
牙を生やしてヨダレを垂らし、得物の香りを愉しむ猛獣。
「ふ~ん・・・・・・こんなかわい子ちゃんに、彼、目玉とられちゃったんだ」
彼・・・・・・芥川のこと?
「可愛さに目が眩んだのかしら・・・・・・それとも、本当に強さで?」
とーーーー
ザシュッッ!!
「!?」
身体に伝わった、確かな感覚ーーーー
斬られた。
それも、バッサリと。
女は動いていない。
もちろん、物理的にはなんの異常もない。
しかし・・・・・・ッッ!!
確実に一刀両断された・・・・・・!!
「・・・・・・」
「あら・・・・・・殺気に気がつくとはね・・・・・・まあ及第点ってとこかしら」
「はぁはぁ・・・・・・」
シュッッ!!
セツナの鞭のようなハイキックがーーーー
「あらあら・・・・・・ダメよ~ワンピースでキックなんてしたら、下着が見えちゃうじゃない」
簡単に止められた。
格が・・・・・・違う・・・・・・
「じゃあ、かわりばんこ・・・・・・私の番♪」
ジャッッ!!
セツナの心臓のちょうど上に、貫手が・・・・・・
「心臓、えぐっちゃった♪ 私の勝ちね♪」
勝てない・・・・・・
この時・・・・・・セツナの頭に浮かんだのは、意外な人物だった。
(新樹・・・・・・危ない・・・・・・!!)
ここは彼の家の前だ・・・・・・にしても、死守すべき相手として真っ先に思い浮かんだのが新樹であることに、セツナ自身も驚いていた。
「クンクン・・・・・・甘酸っぱい匂い♡」
「・・・・・・」
「まだ恋なんて言えない苗の感情ね。だけど、その感情があなたを強くするわ」
誰なんだ・・・・・・
この女は・・・・・・
「そんなに睨まなくてもいいじゃない・・・・・・私は冬紀。よろしくね♪」
「・・・・・・」
「あらら? 月君から聞いていない? 寂しいわね~」
芥川の知り合い?
確かに・・・・・・先ほどから感じる。
この女のどこかに、芥川と同じ気配がする。
「ねえ、あなた・・・・・・黒真会に来ない?」
「・・・・・・?」
「黒真会のことも知らされていないのね。月君、本当にあなたを強くするつもりがあるのかしら?」
どういう意味だ?
「ねえ・・・・・・男と女が惹かれ合う原因って、考えたことある?」
「・・・・・・」
「強い遺伝子を残すこと・・・・・・優秀な子孫を残すことよ」
「・・・・・・」
「その点、月君は合格ね。彼の優れた子種なら、喜んで受け取るわ♡」
こいつ・・・・・・何言ってるんだ・・・・・・?
「でも・・・・・・あの子犬さんに、その価値はあるのかしら?」
咄嗟に、新樹の顔が浮かんだ。
「お金持ちだしどうやら学歴もピカイチね。優秀よ。だけど、結局は強さの前では意味なんてない」
「・・・・・・」
「あんな雑種の子種よりも、芥川 月の種のほうがいいわ。そうは思わない?」
何を言ってるのか正直よく分からない・・・・・・
分からない・・・・・・が!!
ビュッ!!
新樹がバカにされていることは、分かる!!
パシィ!!
「う~ん・・・・・・イイパンチね。殺す気満々って感じ」
またもや、止められた。
「黒真会に来なさいよ・・・・・・もしくは、このまま連れて行っちゃおうかしら・・・・・・」
女が両腕を拡げる。
攫われる・・・・・・ッッ!!
あの夜の、色あせてくれない思い出が・・・・・・蘇る・・・・・・
誰か・・・・・・誰か!!
「そこまでよ!!」
二人は同時に声の主を見た。
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