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”記憶に残る一日篇”
【一番弟子 新樹】
しおりを挟む「っしゃあ!! 弱者は淘汰される! レックス・谷!! いっきま~す!!」
最初に動いたのはレックス・谷だった。
右ストレートを・・・・・・
ガスン!!
「!!!?」
レックス・谷の膝が曲がった。
膝の皿に、新樹の足刀が置かれている。
「ぐわぁぁ!!」
レックス・谷が倒れると、そのまま馬乗りになる新樹。
「決着は・・・・・・決めてなかったな」
「チィ・・・・・・!!」
張り手をくり出すも、新樹が逆に腕を掴んだ。
そして足を絡めて、肘を固定する。
グイッ!
新樹の足はクロスされた状態でレックス・谷の顔付近に伸ばされ、膝は肘に巻き付き、手は相手の手首をがっちりホールドしている。
「腕ひしぎ・・・・・・痛いよ」
ググッ・・・・・・
「ぎゃ!! ギブギブ!!」
新樹の足をタップして、ギブアップした。
新樹の・・・・・・勝ちだ。
あまりにあっさりとした戦いに、セツナはポカンとしている。
パチパチ・・・・・・
パチパチ・・・・・・
「見事見事!」
!?
芥川の声だ。
しかし、道場を見渡しても、芥川の姿はない。
ミシミシ・・・・・・
天井から、軋む音がする・・・・・・
仰向けに倒れていたレックス・谷が、初めに気がついた。
「うわっ!」
続けて新樹・セツナ・カメラマンが上を見上げる。
「いやはや。お強くなられましたねぇ~感心感心!」
芥川が四メートルはある高さの天井に立っている・・・・・・
言葉として正確ではないのかもしれないが、こう表現するしかない。
芥川の頭が下にあり、重力を無視したように平然と足で天井の上に立っているのだ。
「せ、先生!!」
「新樹さん。確かに関節技に持っていったのは見事! ですが、手心を加えて緩く絞めましたね? ダメですよ~本気でやらなくちゃ~」
逆さまのまま、賛辞と批評をしてくる。
「はい・・・・・・で、先生は何してるんですか?」
「さ、逆さまに!?」
レックス・谷とカメラマンは驚きのあまり視線が外せないでいる。
「んん~? 教えたじゃないですか~」
足の指がギシギシと鳴るほど天井を噛んでいた。
「『足噛』・・・・・・足で噛んでいるんです」
「・・・・・・で、理由は?」
「新樹さんの成長を間近で見たかったんですけど、私が現れるとそちらの方々が挑んできちゃうかなぁと思いまして、見つからないように天井に張り付いて見物させていただきました」
よっと・・・・・・
芥川は足の指を離すと、宙で一回転して、地面に着地する。
「さて・・・・・・お望み通り道場主が現れましたが・・・・・・いかがします?」
レックス・谷は膝と肘に痛みがあるが、さほどのことはない。
しかし、妖怪のようなこの作務衣の男が発しているオーラが、自分や過去に立ち会ってきた相手とは比べものにならない・・・・・・
「や、やめときます」
「ええ~楽しみにしてたんですけどねぇ」
こうして、新樹の初陣は勝利で終わった。
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