死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その壱”

【拝啓、尊敬する師へ】

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 一方その頃。



「ブヘックションッッ!!」



 芥川が派手にくしゃみをしながら、国道をものすごい勢いでダッシュしていた。



 走っているのではない。



 だ。



 雪駄を両手に持ち、アスファルトを裸足で蹴り上げながら、猛烈なスピードでグングンと歩行者・自転車・バイクを追い抜いていく。



「はぁはぁはぁ・・・・・・ッッ!! なんで・・・・・・ッッ!!」



 芥川は足を必死に動かしながら、自分の選択を後悔していた。



「なんで・・・・・・今月も厳しいのに、セツナさんにタクシー代渡しちゃったんでしょうか私!! しかも車で送迎なんて想定外です!!」



 ダッダッダッ!!!!



 ダッダッダッ!!!!



 ダッダッダッ!!!!



「い、急いで帰らないと・・・・・・ッッ!! セツナさんを家でひとりぼっちにさせてしまう!! 寂しい想いをさせましませんぞぉ!!」



 あまりの健脚に、そして必死の形相に、通行人はふり向かわざるを得ない。



 スマホで撮影している者もいる。



「マジか・・・・・・裸足だぜ・・・・・・」


「マラソン選手?」


「いや、短距離の速度で、長距離を走ってるんだよ・・・・・・」


「そんなに急いで・・・・・・出産にでも立ち合うのかな?」



 車が目の前にあれば、下を滑ってくぐり・・・・・・!!



 信号が赤になっていれば「車体よりも高ければ問題ないッッ!!」と、横断歩道の端から端まで異常な脚力で跳び越える!!



 ザシュッ・・・・・・



 着地・・・・・・ぃぃぃ!!!!



 止まらないッッ!!



 ダダダーッッ!!



「映画のスタントマン?」


「ワイヤー・・・・・・で、吊せないよな?」


「飛んだの? マジで?」



 チーターのように前傾姿勢となり、より速く、より早く!!



「まだまだぁ!!!! セツナさんを笑顔で迎えないとぉぉぉ!!!!」



 駆け出した・・・・・・



 その頃ーーーー



「セツナ君!! 車、寒くないかい!?」


『暖かいです。ありがとう』


「そうだ! ママと新樹ちゃんには内緒で、美味しいパンケーキ屋さんに寄っていこうか!! パパ、こう見えて大臣だから、ドライブスルーになっちゃうけどいいかな!?」


『それじゃあ・・・・・・お言葉に甘えて』


「うん! じゃあレッツゴー!!」



 さらにその頃ーーーー



 ダダダーッッ!!



 ダダダーッッ!!



 はっはっはっ!!!!



「今帰りますぞ~!! セツナさぁ~ん!!!!」



 真冬の東京は、何時でも騒がしいのであった・・・・・・



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