死が二人を分かつまで

KAI

文字の大きさ
上 下
48 / 300
”日常その壱”

【悪くない敗北】

しおりを挟む


 新樹が裸足でハイキックを放った。



 が、



 シュッ・・・・・・



 セツナは両足の位置を交差させただけ。



 それだけだったが、新樹の狙った頭部は後ろに引かれ、当たらない。



 さらに、新樹の足を掴むことにも成功した。



「・・・・・・マジかぁ~」



 ここまでくると、むしろ変な笑いがこみ上げてくる。



「・・・・・・」


「・・・・・・どうしたんだよ・・・・・・この続きも習ったんだろ!? やってみろ!!」



 もう打開策はない。



 蹴り足は取られ、軸足だけで立っている状態だ。



 セツナは少しばかりの逡巡の末にーーーー



「・・・・・・むんっ!!」



 蹴り足を肩に担ぎ上げる要領で、距離を縮めた。



 当然、セツナの接近により新樹の足は天高く上がってゆき、立ってられないマリオネット状態になってしまった。



 そして・・・・・・



 ガッ!



 セツナは骨盤付近まで急接近すると、新樹の軸足の膝を刈った。



 そのまま・・・・・・



 ドスンッッ!!



 新樹は辛うじて受け身をとったが、またもやマウントを取られ、セツナの美貌を見上げる形になった。



「・・・・・・シュッ!!」



 拳が降ってくる・・・・・・ッッ!!



 新樹は目をつむった・・・・・・



 だが、予測していた打撃は来ない。



「えっ・・・・・・?」



 寸止め・・・・・・



 伝統派空手などで見られる、勝負の決め手。



 新樹の鼻の上で、拳が静止している。



 サァ・・・・・・汗が滝のように流れる。



「認める・・・・・・僕の負け・・・・・・だ」



 それを聞くと、セツナは新樹の身体から離れて、ホワイトボードを拾い上げた。



『胸を貸していただき、ありがとうございました』



 ペコリ・・・・・・



 ・・・・・・



「へっ・・・・・・僕が腐ってる間に、礼節まで身につけやがって・・・・・・」


「新樹ちゃん!」



 急いで、パパとママが飛び込んできた。



「大丈夫? 怪我はない?」


「うん・・・・・・正直、視界がぐにゃっとしてるけど・・・・・・」


「頭を冷やしましょう。家の中へ戻りなさい」


「はい・・・・・・」



 息子を倒したんだ・・・・・・きっと、嫌われた。



 セツナはダウンを着ると去ろうとした。



 が、



「お嬢ちゃんも、家の中に入りなさい」



 ママだ。



「??」


「外は寒いわ。温かいココアでも飲んでいって」


「母さん・・・・・・」


「新樹ちゃん・・・・・・」



 その時ーーーー



 温厚な母親の頭から、角が生えているのが見えた・・・・・・



「出会い頭に女の子を蹴ろうとして、まさかこのまま帰すなんてこと・・・・・・許すと思う?」



 ヤバい・・・・・・



 夕食の具にされる・・・・・・



「・・・・・・すみませんでした」


「まったく・・・・・・お嬢ちゃん、お名前は?」


「そいつはセツナって言うんだよ」


「セツナちゃん。どうか息子の無礼な行動を許してあげて・・・・・・」


『そもそも、無礼とは思っていない』


「くつろいでいって。さ、家の中へ」



 セツナはちょっと考えた後に、靴を脱いで家の中に入った。



 バタン・・・・・・



 ・・・・・・



 ・・・・・・



 ・・・・・・



「・・・・・・作戦成功」



 曲がり角でタバコを吸っている、作務衣姿の男がいた。



「『』・・・・・・ミックスさせたオリジナル技を使うとは流石・・・・・・ハックション!!」



 ぶるりと、芥川は震えていた。



「寒いぃ・・・・・・カッコつけて遠くから見守るんじゃなくて、私もお邪魔したかったぁ!」



 白い息を吐きながら、弟子たちの様子を窺っていた、芥川なのだったーーーー



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...