死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その壱”

【悩ましき少女】

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 芥川道場にてーーーー



「はい。今日の鍛錬はこのくらいにしましょう」



 芥川が軽く汗をかいているセツナへ言った。



 タオルで拭うと、芥川が冷たいお茶を持ってきた。



「水分補給は欠かさずに」


『ありがとう』



 ゴクゴクッ・・・・・・



 汗に濡れたビーナス・・・・・・美少女が喉を鳴らしているだけでも絵になるものだ。



「さて、出前でもとりますか」



 キュキュッ・・・・・・



『・・・・・・さすがに出前しすぎじゃない?』


「だって、自炊は面倒くさいですし・・・・・・」


『だったら私が作るから』


「ダメです!! 包丁で指でも切ったらどうするんですか!!」


『・・・・・・過保護』



 結局、カツ丼の出前を取り、芥川の部屋で二人並んで食べていた。



「美味しいですねぇ」


「・・・・・・」


「お口に合いませんでしたか?」



 首を振るが、その顔は暗い。



「・・・・・・何か悩み事でも?」


「・・・・・・」



 キュキュッ



『新樹・・・・・・来ない』


「あ~・・・・・・もう一ヶ月半になりますかねぇ・・・・・・このままやめてしまうかもしれません」


『・・・・・・私のせい』


「いいえ。あくまでも新樹さんの人生は新樹さんが決めることです。私たちが介入できるものではありません」


『でも・・・・・・』


「・・・・・・あんなに新樹さんから嫌われていたのに、気になりますか?」


『うん』


「ほう・・・・・・」


『できるなら、会って話しをしたい』


「ん~どうでしょうかねぇ・・・・・・より一層ややこしくなるかもしれません・・・・・・」


『・・・・・・ダメ?』


「いいとも、ダメとも言えません」


『意味が分かんない』


「・・・・・・弟子を迎えに行くことは、師匠はできません。教えを請う立場の人間は、師の居る場所まで己の意志で辿り着くしかない・・・・・・そういうものなんですよ」


『男の意地の張り合いにしか、思えない』


「まあそういう見方もあるでしょう。ですが、新樹さんの住所を教えることはできません。個人情報ですし、貴女はまだ東京を移動するほど慣れていない・・・・・・」


『・・・・・・』


「ですので・・・・・・教えることはできませんねぇ」



 セツナは食事が終わると、自分の部屋に戻った。



 モヤモヤが心の中を占領し、気分が晴れない。



 ・・・・・・ん?



 机の上に、何か紙が・・・・・・



 ペラッ・・・・・・



『東京都世田谷区○丁目○番地 東山邸 タクシー料金片道一万円』



 そのメモ書きと一緒に、一万円札が置かれている。



 ・・・・・・



(素直じゃない)



 メモ用紙と万札をポケットに入れると、動きやすいジーパンに白のダウンを羽織って、外に出た。



 大通りに出ると、タクシーを拾い、メモ書きを見せて出発。



 その後ろ姿を、見つめる男がいたーーーー


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