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”日常その壱”
【袖振り合うも多生の縁】
しおりを挟む「しみるわぁ~」
「我慢しててください」
丹波の顔の裂傷に、消毒液に浸したコットンを押し当てる新樹。
そばには、救急箱を持っている関が立っていた。
「車に正面衝突なんて・・・・・・無茶ですよ?」
「思いつきの遊びや。堅いこと言わンでや~」
「多分、鼻も折れてますし口の中も・・・・・・」
「だからかすり傷や」
絆創膏・ガーゼ・テーピングを施された丹波が、関に視線を送る。
関は頷き、
「すみません東山さん。この家にお酒ってありますかね?」
「お酒ですか? 父のウイスキーなら・・・・・・」
「定価の三倍払いますので、どうかいただけないでしょうか?」
「お金はいいですけど・・・・・・まさか・・・・・・」
「消毒や! ケンカの後の一杯は格別やで!!」
「親父、用意してきます」
関はキッチンに向かうと、ウイスキー用のグラスに氷を入れ、スコッチのアードベックの瓶を持ってきた。
緑色の特徴的な形の瓶が傾けられると、べっこう色の美しい液体が注がれる。
「どうぞ」
「おうっ」
グイッ!
「くぅ~イイ酒や!! 新樹ちゃんもどないや?」
「いえ・・・・・・僕まだ十九歳なので・・・・・・」
「何言うてるンや~若いウチから酒に慣れておかんと、大人になってから大変やで? ガハハ!!」
「親父、未成年に飲酒を勧めるのはいけません」
ヤクザとは思えない正論をぶつける関。
「ま、飲まんのならしゃ~ない。ワシだけ楽しませてもらうで」
四〇度はあるウイスキーを、ガブガブと飲んでは注ぎ足している。
「で・・・・・・芥川ちゃんは元気か?」
「いや・・・・・・ハハハ・・・・・・」
「なんやその反応? ハッキリ言い」
「・・・・・・実はもう一ヶ月は会っていないんです」
「道場、追い出されたン?」
「・・・・・・僕が飛び出したんです」
新樹の深刻そうな顔を見て、丹波はグラスをテーブルに置いた。
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