43 / 300
”日常その壱”
【袖振り合うも多生の縁】
しおりを挟む「しみるわぁ~」
「我慢しててください」
丹波の顔の裂傷に、消毒液に浸したコットンを押し当てる新樹。
そばには、救急箱を持っている関が立っていた。
「車に正面衝突なんて・・・・・・無茶ですよ?」
「思いつきの遊びや。堅いこと言わンでや~」
「多分、鼻も折れてますし口の中も・・・・・・」
「だからかすり傷や」
絆創膏・ガーゼ・テーピングを施された丹波が、関に視線を送る。
関は頷き、
「すみません東山さん。この家にお酒ってありますかね?」
「お酒ですか? 父のウイスキーなら・・・・・・」
「定価の三倍払いますので、どうかいただけないでしょうか?」
「お金はいいですけど・・・・・・まさか・・・・・・」
「消毒や! ケンカの後の一杯は格別やで!!」
「親父、用意してきます」
関はキッチンに向かうと、ウイスキー用のグラスに氷を入れ、スコッチのアードベックの瓶を持ってきた。
緑色の特徴的な形の瓶が傾けられると、べっこう色の美しい液体が注がれる。
「どうぞ」
「おうっ」
グイッ!
「くぅ~イイ酒や!! 新樹ちゃんもどないや?」
「いえ・・・・・・僕まだ十九歳なので・・・・・・」
「何言うてるンや~若いウチから酒に慣れておかんと、大人になってから大変やで? ガハハ!!」
「親父、未成年に飲酒を勧めるのはいけません」
ヤクザとは思えない正論をぶつける関。
「ま、飲まんのならしゃ~ない。ワシだけ楽しませてもらうで」
四〇度はあるウイスキーを、ガブガブと飲んでは注ぎ足している。
「で・・・・・・芥川ちゃんは元気か?」
「いや・・・・・・ハハハ・・・・・・」
「なんやその反応? ハッキリ言い」
「・・・・・・実はもう一ヶ月は会っていないんです」
「道場、追い出されたン?」
「・・・・・・僕が飛び出したんです」
新樹の深刻そうな顔を見て、丹波はグラスをテーブルに置いた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる