死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その壱”

【狂人・丹波】

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 板垣イタガキは、たしかに噂通りのタチの悪い男だった。



 老若男女関係なく、威嚇したかり、金を巻き上げる。



 横柄な態度も、タイマンをして勝利したという人数も日増しに大きくなっていった。



 しかし、本物の強さの前では・・・・・・井の中の蛙だった。



 龍の絵が刺繍されているスカジャンを着ている横に太い身体は、地面に伏している。身体中のあらゆる箇所から出血し、オールバックがめちゃくちゃになっている。



 そして上には、真っ赤なスーツを着た丹波がタバコを吸っていた。



「あ~退屈」



 ぽうっと煙を吐く。



「関・・・・・・話しがちゃうやないか~」


「それは親父が強すぎるだけです」


「つまらん~つまらん~」



 咥えたタバコを唇でピコピコ動かしている。



 ・・・・・・この男・・・・・・



 道着姿で固まっていた新樹の脳細胞が、ようやく驚きから返ってきた。



(知ってる・・・・・・たしか・・・・・・道場に何回か来たことがある・・・・・・)



 とーーーー



「ん?」



 やっと丹波が新樹の存在に気がついた。



「なんや、まだおった!」



 ニコニコ楽しそうに、板垣の背中から下りた。



「なぁ! ヤり合おうやないか~!! 兄ちゃん!!」


「いえ、あの・・・・・・」


「そないな格好までして、準備万端やん!! 行くで~!!」



 丹波が腰に差していたドスを抜いた。



 ギラリと街灯を反射しているその刀身は・・・・・・って!!



「ちょ、ちょっと待ってください!!」


「ケンカに待てはないで!!」


「違います!! 僕の顔・・・・・・」



 その瞬間だった。



 丹波の足を、横たわっていた板垣が掴んだ。



 ガシッ・・・・・・



「あぁ?」


「い・・・・・・イエーイ・・・・・・オッサンゲットぉ~」



 ブタを思わせる醜い顔を不気味に歪ませている。



「オドレにもう用はないんじゃ。離せ。殺すで?」


「・・・・・・暴走列島舐めんじゃねぇ!!」



 板垣が叫ぶと、道路の奥からエンジンの駆動音が近づいてきた。



 見ると軽トラだった。



 ライトもつけずに、アクセルを全開にして、丹波目がけて走ってくる!!



「オマエ死ぬ~俺のぉ勝ちぃ~」


「はぁ・・・・・・アホくさ」



 ザクッッ



「グギギッッ・・・・・・」



 丹波はダルそうに、板垣の手にドスを刺した。



 刃は貫通し、血液が付着している。



「立てや」



 ドスの柄をグイッと持ち上げると、痛みによって板垣の身体もついてきた。



「なにす・・・・・・」


「おもろいこと考えた・・・・・・じゃ。やってみるやろ?」


「は?」



 ブーンッッ!!



 車はもう数メートルのところまで来ている。



 が、関をはじめとした仁侠会の者たちには緊張感がなかった。



 むしろ「またか~」とため息をついている。



「どや? ヒリヒリヒヤヒヤ・・・・・・スリリングやでぇ~」


「何言ってン・・・・・・」



 突然!!



 むんず・・・・・・



 丹波が板垣のオールバックを乱暴に引っ掴んだ。



「な、な、なっ!?」


「ほーら!! 来た来た!!」



 もうどれだけブレーキを踏んでも、衝突は免れない。



 ガーッッ!!



 迫り来る車に対して、板垣は恐怖に怯え、丹波は笑っている。



「せー・・・・・・の!!」



 グワシャンッッ!!



 二人は並んで軽トラのフロントガラスに顔から激突し、そのまま吹き飛んでいった。



 ゴロゴロとアスファルトを転がる二体の悪漢。



 フロントガラスが壊されたことによって、軽トラはコントロールを失い電柱にガシャンと衝突して停止した。



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