41 / 300
”日常その壱”
【狂人・丹波】
しおりを挟む板垣は、たしかに噂通りのタチの悪い男だった。
老若男女関係なく、威嚇したかり、金を巻き上げる。
横柄な態度も、タイマンをして勝利したという人数も日増しに大きくなっていった。
しかし、本物の強さの前では・・・・・・井の中の蛙だった。
龍の絵が刺繍されているスカジャンを着ている横に太い身体は、地面に伏している。身体中のあらゆる箇所から出血し、オールバックがめちゃくちゃになっている。
そして上には、真っ赤なスーツを着た丹波がタバコを吸っていた。
「あ~退屈」
ぽうっと煙を吐く。
「関・・・・・・話しがちゃうやないか~」
「それは親父が強すぎるだけです」
「つまらん~つまらん~」
咥えたタバコを唇でピコピコ動かしている。
・・・・・・この男・・・・・・
道着姿で固まっていた新樹の脳細胞が、ようやく驚きから返ってきた。
(知ってる・・・・・・たしか・・・・・・道場に何回か来たことがある・・・・・・)
とーーーー
「ん?」
やっと丹波が新樹の存在に気がついた。
「なんや、まだおった!」
ニコニコ楽しそうに、板垣の背中から下りた。
「なぁ! ヤり合おうやないか~!! 兄ちゃん!!」
「いえ、あの・・・・・・」
「そないな格好までして、準備万端やん!! 行くで~!!」
丹波が腰に差していたドスを抜いた。
ギラリと街灯を反射しているその刀身は・・・・・・って!!
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
「ケンカに待てはないで!!」
「違います!! 僕の顔・・・・・・」
その瞬間だった。
丹波の足を、横たわっていた板垣が掴んだ。
ガシッ・・・・・・
「あぁ?」
「い・・・・・・イエーイ・・・・・・オッサンゲットぉ~」
ブタを思わせる醜い顔を不気味に歪ませている。
「オドレにもう用はないんじゃ。離せ。殺すで?」
「・・・・・・暴走列島舐めんじゃねぇ!!」
板垣が叫ぶと、道路の奥からエンジンの駆動音が近づいてきた。
見ると軽トラだった。
ライトもつけずに、アクセルを全開にして、丹波目がけて走ってくる!!
「オマエ死ぬ~俺のぉ勝ちぃ~」
「はぁ・・・・・・アホくさ」
ザクッッ
「グギギッッ・・・・・・」
丹波はダルそうに、板垣の手にドスを刺した。
刃は貫通し、血液が付着している。
「立てや」
ドスの柄をグイッと持ち上げると、痛みによって板垣の身体もついてきた。
「なにす・・・・・・」
「おもろいこと考えた・・・・・・ド根性比べじゃ。やってみるやろ?」
「は?」
ブーンッッ!!
車はもう数メートルのところまで来ている。
が、関をはじめとした仁侠会の者たちには緊張感がなかった。
むしろ「またか~」とため息をついている。
「どや? ヒリヒリヒヤヒヤ・・・・・・スリリングやでぇ~」
「何言ってン・・・・・・」
突然!!
むんず・・・・・・
丹波が板垣のオールバックを乱暴に引っ掴んだ。
「な、な、なっ!?」
「ほーら!! 来た来た!!」
もうどれだけブレーキを踏んでも、衝突は免れない。
ガーッッ!!
迫り来る車に対して、板垣は恐怖に怯え、丹波は笑っている。
「せー・・・・・・の!!」
グワシャンッッ!!
二人は並んで軽トラのフロントガラスに顔から激突し、そのまま吹き飛んでいった。
ゴロゴロとアスファルトを転がる二体の悪漢。
フロントガラスが壊されたことによって、軽トラはコントロールを失い電柱にガシャンと衝突して停止した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
よんよんまる
如月芳美
キャラ文芸
東のプリンス・大路詩音。西のウルフ・大神響。
音楽界に燦然と輝く若きピアニストと作曲家。
見た目爽やか王子様(実は負けず嫌い)と、
クールなヴィジュアルの一匹狼(実は超弱気)、
イメージ正反対(中身も正反対)の二人で構成するユニット『よんよんまる』。
だが、これからという時に、二人の前にある男が現われる。
お互いやっと見つけた『欠けたピース』を手放さなければならないのか。
※作中に登場する団体、ホール、店、コンペなどは、全て架空のものです。
※音楽モノではありますが、音楽はただのスパイスでしかないので音楽知らない人でも大丈夫です!
(医者でもないのに医療モノのドラマを見て理解するのと同じ感覚です)
カラマワリの兄弟
衣更月 浅葱
キャラ文芸
3歳年上の兄はおれにとって、まるで台風のようだった。
舞台は貴族の街、ルピシエ市。
この街の一警官ギルバートはある秘密を抱えていた。
それは、『魔薬』によって人ならざる者と化した兄を魔薬取締班から匿っているといること。
魔薬とは、このルピシエ市に突如として蔓延した、摩訶不思議な力をさずける魔法のような薬であり、そしてそれは簡単に人を人間の域から超えさせてしまう悪魔のような薬でもある。
悪魔と化した元人間を誰が受け入れようか。
秩序を守る為にその悪魔達は、『魔薬を使用した』ただ一つの罪を理由に断罪された。次々と魔薬取締班に処刑された。
ギルバートの兄にも、その足音は近づいている…。
TAKAMURA 小野篁伝
大隅 スミヲ
キャラ文芸
《あらすじ》
時は平安時代初期。小野篁という若者がいた。身長は六尺二寸(約188センチ)と偉丈夫であり、武芸に優れていた。十五歳から二十歳までの間は、父に従い陸奥国で過ごした。当時の陸奥は蝦夷との最前線であり、絶えず武力衝突が起きていた地である。そんな環境の中で篁は武芸の腕を磨いていった。二十歳となった時、篁は平安京へと戻った。文章生となり勉学に励み、二年で弾正台の下級役人である少忠に就いた。
篁は武芸や教養が優れているだけではなかった。人には見えぬモノ、あやかしの存在を視ることができたのだ。
ある晩、女に救いを求められる。羅生門に住み着いた鬼を追い払ってほしいというのだ。篁はその願いを引き受け、その鬼を退治する。
鬼退治を依頼してきた女――花――は礼をしたいと、ある場所へ篁を案内する。六道辻にある寺院。その境内にある井戸の中へと篁を導き、冥府へと案内する。花の主は冥府の王である閻魔大王だった。花は閻魔の眷属だった。閻魔は篁に礼をしたいといい、酒をご馳走する。
その後も、篁はあやかしや物怪騒動に巻き込まれていき、契りを結んだ羅城門の鬼――ラジョウ――と共に平安京にはびこる魑魅魍魎たちを退治する。
陰陽師との共闘、公家の娘との恋、鬼切の太刀を振るい強敵たちと戦っていく。百鬼夜行に生霊、狗神といった、あやかし、物怪たちも登場し、平安京で暴れまわる。
そして、小野家と因縁のある《両面宿儺》の封印が解かれる。
篁と弟の千株は攫われた妹を救うために、両面宿儺討伐へと向かい、死闘を繰り広げる。
鈴鹿山に住み着く《大嶽丸》、そして謎の美女《鈴鹿御前》が登場し、篁はピンチに陥る。ラジョウと力を合わせ大嶽丸たちを退治した篁は冥府へと導かれる。
冥府では異変が起きていた。冥府に現れた謎の陰陽師によって、冥府各地で反乱が発生したのだ。その反乱を鎮圧するべく、閻魔大王は篁にある依頼をする。
死闘の末、反乱軍を鎮圧した篁たち。冥府の平和は篁たちの活躍によって保たれたのだった。
史実をベースとした平安ダークファンタジー小説、ここにあり。
限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです 第一部 中学一年生編
釈 余白(しやく)
キャラ文芸
現代日本と不釣り合いなとある山奥には、神社を中心とする妖討伐の一族が暮らす村があった。その一族を率いる櫛田八早月(くしだ やよい)は、わずか八歳で跡目を継いだ神職の巫(かんなぎ)である。その八早月はこの春いよいよ中学生となり少し離れた町の中学校へ通うことになった。
妖退治と変わった風習に囲まれ育った八早月は、初めて体験する普通の生活を想像し胸を高鳴らせていた。きっと今まで見たこともないものや未体験なこと、知らないことにも沢山触れるに違いないと。
この物語は、ちょっと変わった幼少期を経て中学生になった少女の、非日常的な日常を中心とした体験を綴ったものです。一体どんな日々が待ち受けているのでしょう。
※外伝
・限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/398438394/874873298
※当作品は完全なフィクションです。
登場する人物、地名、、法人名、行事名、その他すべての固有名詞は創作物ですので、もし同名な人や物が有り迷惑である場合はご連絡ください。
事前に実在のものと被らないか調べてはおりますが完全とは言い切れません。
当然各地の伝統文化や催事などを貶める意図もございませんが、万一似通ったものがあり問題だとお感じになられた場合はご容赦ください。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
農業大好き令嬢は付喪神様と一緒に虐げられスローライフを謳歌していたい
桜香えるる
キャラ文芸
名門卯家の次女・愛蘭(あいらん)は義母や義姉に令嬢としての立場を奪われ、身一つで屋敷から掘っ立て小屋に追いやられ、幼くして自給自足生活を強いられることになる。だがそこで出会った「付喪神」という存在から農業を学んだことで、愛蘭の価値観は転換した。「ああ、農業って良いわあ!」自分が努力しただけ立派に野菜は実り、美味しく食することが出来る。その素晴らしさに心酔した愛蘭は、彼女を苦しめたい家族の意図とは裏腹に付喪神と一緒に自由気ままな農業ライフを楽しんでいた。令嬢としての社交や婚姻の責務から解放された今の生活に満足しているから、是非ともこのままずっと放っておいてほしい――そう願う愛蘭だったが、東宮殿下に付喪神を召喚する場面を見られてしまったことで彼に目をつけられてしまう。っていえいえ、宮中になんて行きたくありませんよ! 私は一生農業に生きていきますからね!
初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる