死が二人を分かつまで

KAI

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”日常その壱”

【受難】

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 プルルル・・・・・・



 プルルル・・・・・・



 また電話だ。



 震える指で、通話ボタンを押す。



「・・・・・・」


『もうダメだわ。ガマンのげんか~い』


「ど、どうするつもりなんだ?」


『お前の家行くわ。そんで、パパさんに金出してもらう』


「・・・・・・」


『三日やるから。用意したら持って来いよぉ。それと、マッポにチクったらぁ捕まる前にオマエコロスから』



 プツッ・・・・・・



 どうしよう・・・・・・



 厄介にもほどがある相手に捕まってしまった。



 解決策はないものか・・・・・・



 翌日ーーーー



『はい。オマエ、ウンコの形に根性焼き決定ぇ~』



 二日目ーーーー



『ざんね~ん。オマエ、顔面タトゥーの刑執行ぉ~』



 三日目ーーーー



『マジでムカついたから、オマエのリンチ、ネットに生中継すっから』



 その日は続きがあった。



『でさぁ、もう待てないからぁ俺たち直接オマエの家行くわ』


「・・・・・・」


『覚悟しといてぇ~マジでボコるから。マジで』



 遂に・・・・・・こうなってしまった・・・・・・



「か、母さん・・・・・・」


「どうしたの? 新樹ちゃん・・・・・・顔真っ青よ?」


「ちょっとお願いがあるんだけど・・・・・・」



 そして夜ーーーー



 外からはブルンブルンと、バイクのエンジン音が何重にもなって響いてくる。



 タバコや酒の臭気が、ドアすらも貫通して漂ってくる。



「ア~ラ~キ~く~ん!! 遊びましょ~」



 ゲラゲラ下品な笑い声が聞こえる。



 ・・・・・・母親には、夜に友達が来るからと、半ば強引に外出してもらっている。



 この家には、自分ひとり。



 そして、自分は・・・・・・



 ギュッ・・・・・・



 玄関で道着を着て、帯を締めていた。



 震える指が、言うことを聞いてくれず、なかなか結べなかったがコレでよし。



 相手が何人いるのか・・・・・・



 武器は・・・・・・もちろん持っているよな・・・・・・



 死ぬかも・・・・・・



「ハハハ・・・・・・僕もバカになちゃったかな・・・・・・」



 だが、自分の背中には芥川道場の看板があるのだ。



 横暴な輩にへつらい、金を差し出すような無様・・・・・・許されない。



 であれば・・・・・・ッッ!!



「芥川先生・・・・・・もしも死んじゃったら・・・・・・ごめんなさい」



 いざ・・・・・・出陣・・・・・・



 震える手で、ドアノブを・・・・・・




 とーーーー




「誰だてめぇ!!」


「ギャァァァ!!」


「ぶっ殺・・・・・・ぐはっ!!」


「チェーン持って来・・・・・・ぐふぅ!!」



 大勢の悲鳴が聞こえてくる。



 何者かが正面切って突撃し、そして圧倒している!?



 こんな芸当ができるのは・・・・・・!!



「まさか・・・・・・先生!?」



 ガチャッッ!!



「先生!!」



 と、ドアを開けた瞬間に、頭から有り得ないほど流血している男が目の前に立っていた。



「た、助けて・・・・・・」


「ど・・・・・・どけえ!!」



 バキッ!!



 初めての前蹴り・・・・・・



 綺麗に決まり、男のアゴに当たって意識と共に吹き飛んでいった。



 やったぞ・・・・・・少なくともひとりは倒せた・・・・・・



 コレで、先生に顔向けができる・・・・・・



「せんせ・・・・・・」



 と・・・・・・思っていた。



 だが、広がっている光景に、目が飛び出そうなほど驚いた。



 死屍累々とはまさにこのこと。



 出血したり顔面が変形している男たちが、うめき声を上げて転がっている。



 そして同じく、激しい損傷を受けているバイクも、転がっていた。



 戦場ーーーー



 脳裏によぎったのはこの二文字。



 そして、そこに居たのはーーーー



?」



 ひときわ大きい醜男の上でタバコを吸っている、真っ赤なスーツの男・・・・・・死神だった。


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