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”もうひとりの門下生”
【実戦稽古】
しおりを挟む沼田の脳裏によぎったのは『釣り』だった。
待ちのスポーツ・・・・・・あの感覚・・・・・・
足の指一本も動かせない。
『白真会ルールで』
始めは挑戦だと受け取った。
自分を過小評価しているのだと。
だが、それ如きで憤る沼田ではない!!
むしろ好機と受け取って、白真会の強さを証明してやる・・・・・・そう意気込んでいた。
しかし・・・・・・隙がない。
それで尚、目を離せない。
瞬きという生理現象すら嫌悪の対象になる極限状態・・・・・・猛獣と遭遇したら、きっとこんな感じなのだろう。
それでも・・・・・・ッッ
(引いてはいけない!!)
怒濤の打撃にさらされてきた沼田だからこそ分かる。
一歩でも引けば、そのまま押し切られる。
どれだけ大きな滝のようでも、恐ろしい谷底のようであっても・・・・・・
(逃げぬ・・・・・・ッッ)
ゆえに、初手を沼田が取ったのは必然と言えるだろう。
ボッ!!
顔面の中央を狙った、右ストレート。
芥川は左側へ避けた。
だが、これこそが沼田の狙い!!
「シャラァ!!」
得意技の右のハイキックーーーー
側頭部目がけてーーーー
「シュッ!!」
ガツン・・・・・・
「~~~~ッッ・・・・・・」
何が起こった!?
沼田の顔が苦痛で歪んでいる!!
「・・・・・・」
キュキュッ
『スネに、肘』
セツナがあまりにも良い眼をしていることに、新樹は驚いたが、負けてはいないぞと解説をした。
「ああ・・・・・・鋼鉄のスネにある唯一の痛点・・・・・・弁慶の泣き所を突いたッッ」
『だけれど・・・・・・ゲツにはダメージがない』
「その通り・・・・・・通常、蹴り足を肘で単純に受けたら腕が持っていかれる。けれど、先生は違う・・・・・・わずかに・・・・・・」
『右に数ミリ、動いてた』
「僕のセリフとるんじゃないよ・・・・・・わずかに移動して蹴り足を完全に伸び切らせたんだ。キックは伸びきった瞬間に、力点としての力が減少する。そこを見逃さずに肘でガードをするのと同じ要領で、突いたんだ・・・・・・」
この間、半歩も動かずに芥川は様子を窺っていた。
「・・・・・・やりますね」
芥川は褒めた。
「力を相殺したつもりでしたけど・・・・・・かなりスネも鍛えてらっしゃる。ビリビリ来ましたよ」
「・・・・・・じぇねえよ」
「はい?」
「白真会のルールはなぁ・・・・・・こんな小手先のモンじゃねえよ!!」
沼田が、地面を蹴ったーーーー
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