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”もうひとりの門下生”
【白真会スタイル】
しおりを挟む新樹とセツナは邪魔にならないように道場の端っこで見学していた。
二人の目には何が見えるか?
この沼田という空手家、首が太い。
白真会では改革後、顔面パンチへの対応として、首の筋肉が重要になっていた。これにより打撃への耐性を上げ、脳震盪のリスクを下げているのである。
さらに注目点としては、背中の筋肉だ。
打撃の要となるのは、背筋。
大きめに作られているはずの道着の上からでも、ハッキリと視認できるほど背中から肩にかけてこんもりと山が作られている。
そして拳ーーーー
何度も何度も叩きつけた跡。
ただのサンドバック打ちやミット打ちでは、こうはならない。
荒縄・砂・岩・コンクリート・・・・・・それも素手で殴る。その結果できた『拳ダコ』が、拳を変形させている。
不自然で不合理なまでの鍛錬・・・・・・白真会の十八番だ。
「なるほど・・・・・・相当鍛えてらっしゃいますね」
「押忍・・・・・・」
「にしても、格闘技にお詳しい新樹さんをもってしても名を知らないとは・・・・・・大会などへは?」
「他者の賛美などいらないのです。あくまでも、自身を強くすることだけに時間を割きたい」
「分かりました・・・・・・その情熱に胸打たれました」
とーーーー
スッ・・・・・・
芥川が構えた。
しかも、両の拳をアゴの高さまで上げ、打撃用の姿勢である。
「敬意を表して・・・・・・貴方がた『白真会ルール』に則ってやりましょう」
「・・・・・・本当によろしいので?」
「ええ。私も、体験してみたいと思っていたところなので。ダメですか?」
「・・・・・・構いませんッッ!!」
沼田も構えた。
ボクシングやキックなどと違い、重心を低くとり、腰を落とす空手特有の構え方。
両者の間に、見えない鍔迫り合いが発生しているかのように、空間が歪んだ。
その時だった。
「あっ!」
沼田が、手を出して『待った』を申し出た。
「いかがしました?」
「空手道白真会の規則に則るのであれば・・・・・・まずは礼から始めなければ・・・・・・」
「・・・・・・失念しておりました」
くるり・・・・・・
「新樹さん。お願いしてもよろしいですか?」
「は、はいっ!」
改めて、二人は脱力した状態で向き合った。
「神前に礼ッッ!!」
腕をクロスさせ、空を切る。
「お互いに礼ッッ!!」
続いて、互いに向かって礼をする。
「構えて・・・・・・ッッ」
二人が構えた。
「・・・・・・ッッ 始めぇ!!」
始まったッッ!!
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◆◇◆◇
もくじ
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二章 闇メン
三章 護りのミサト!
四章 スノウドロップ
伍章 ジンギ!
六章 あなた好みに切ってください
七章 コバヤシ君の日報
八章 カラスたちの戯れ
【サイドストーリー】
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【エンディング】
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