死が二人を分かつまで

KAI

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”もうひとりの門下生”

【道場破り】

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「失礼します!!!! 押忍ッッ!!!!」



 鼓膜が痺れるほどの大声。



 三人が一緒に、声の方向へ振り向いた。



 そこに立っていたのは・・・・・・



 岩のように大きく、丸坊主の、道着を着た男が。



 顔は仁王像のようで、彼の歩んできた道の険しさを物語っている。



「おや、どなたですか?」


「押忍ッッ!! 空手道『白真会はくしんかい』本部所属!! 沼田ぬまた 清次せいじです!!」



 何とも誠実な闖入者ちんにゅうしゃだ。



 豆鉄砲を喰らっているセツナと新樹を置き去りに、芥川は立ち上がった。



「白真会の方ですか・・・・・・何用で?」


「自分は今度、五段の審査を控えておりまして!!」


「・・・・・・『白真会五段の壁』・・・・・・」


「ど、道場破りだ・・・・・・」



 格闘技通の新樹が、呟いた。



「白真会は五段に上がるために、何処でもいいから道場破りを完遂させなければいけない・・・・・・ゆえに『』と呼ばれている・・・・・・」


『そんな荒々しい団体なの?』


「それがフルコンタクト空手の最大団体『白真会』なのさ・・・・・・って!! お前に教えてやるつもりはない!!」



 ギャーギャー仲良くやっている弟子たちを尻目に、芥川は柔和に問う。



「で・・・・・・道場破りに来た・・・・・・と?」


「押忍ッッ!! 失礼を承知で来ました!!」


「私にならラクに勝てると踏んで?」



 たしかに、こんな弱小道場、確実な昇段を狙っているのなら良い獲物だろう。



 だが・・・・・・



「・・・・・・会長が」


「はい?」


「会長が『』と仰ったのが、この芥川道場です」



 ニマァ~



 芥川の眼が光り輝き、口角が天井に刺さるのではないかと思えるほどに上がった。



「その上で、私に?」


「押忍。挑みに来ました」


「その意気やヨシ・・・・・・」



 芥川はくるりと振り返り、二人に言った。



「今から急遽稽古です! ささ、お二人とも見学していてください!!」



 眼が爛々としていた。


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