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”出逢い”
【覚悟と安心】
しおりを挟む数時間後ーーーー
芥川はベッドに横になり、ドアに背を向けている。
キィ・・・・・・
部屋のドアが少し開いた。
セツナだ。
ジッと観察して、芥川の身体が呼吸で揺れているのを確認した。
(眠っている・・・・・・)
そろりそろり・・・・・・
ベッドの脇にまでやってきてしまった。
・・・・・・覚悟を決めるんだッッ
毛布を手で掴み、スッと隙間に滑り込む。
そして、彼の背中に・・・・・・双丘を・・・・・・
「シャァッッ!!」
バシュッッ!!
芥川の肘の尖端は、ギリギリ彼女の顔の上で静止した。
「ハァハァ・・・・・・セツナさんでしたか・・・・・・」
「ッッ・・・・・・」
「すみません・・・・・・眠っていたので反射的に反応してしまいました」
セツナの眼には見えていた。
不意に接近した相手へ、肘を当てんとした芥川の顔を。
瞳孔が開き、確実に敵を仕留めるつもりの、獣のような眼光。
アレが無意識下での行動だとすれば・・・・・・
やはり、この男はただ者ではない。
「お怪我は? 大丈夫でしたか?」
コクリ・・・・・・
「良かったぁ~」
心底ホッとした顔。
さっきの顔がウソのようだ。
「・・・・・・どうされましたか?」
「・・・・・・」
「眠れませんか?」
ブンブン・・・・・・首を横に振る。
「違う・・・・・・では、私に用事が?」
・・・・・・コクリ
「ほう・・・・・・何用ですかな?」
・・・・・・ススッ
セツナは、ワンピースで隠れていた柔らかで淫靡な太ももを、覗かせた。
足の付け根まであと数センチ・・・・・・そのところで、芥川が手を押さえてきた。
「セツナさん・・・・・・」
グッ・・・・・・
その止めてきた腕に、自分の胸を押しつけた。
下着は・・・・・・外してきた。
「・・・・・・」
『そういうこと』の経験はない。
だが、身体さえ預ければ、あとは男は自分の好きなようにするはず・・・・・・
これは・・・・・・罰なのだ。
恩人の左眼を奪った罰。
身の程知らずの罰。
一宿一飯の罰。
自分に対する罰だ・・・・・・
「はぁ~・・・・・・セツナさん」
芥川が左手でセツナの肩を触り、もう片方の手でアゴをクイッと上へ上げた。
芥川の顔が、息が届くほど近くにある。
抱かれ・・・・・・
「・・・・・・震えてらっしゃいますよ」
「・・・・・・ッッ」
ダメだ・・・・・・
恐い・・・・・・
男が・・・・・・
男性特有のゴツゴツした指が・・・・・・
誰かに身体を触られるのが・・・・・・
恐い。
「左目のこと、気にしてますね?」
「・・・・・・」
「左目の代わりに、私に抱かれると?」
・・・・・・コクリ
とーーーー
「・・・・・・小娘ぇ・・・・・・」
!?
朗らかだった芥川の顔が鬼のように・・・・・・
身体が何倍にも膨れ上がったかのような、強烈な圧迫感。
獅子のごとき威圧。
「この私の眼が、一夜の関係ごときの価値だと・・・・・・? 舐めるのも大概にしなけりゃぁ、たいらげちまうぞ・・・・・・ッッ!!」
尋常ではない眼光が、自分に向かって照射されている。
さっきまでとは違う別の恐怖。
殺される・・・・・・
生唾を飲み込んだ。
だけれども、覚悟を決めて来たのだ!!
殺されたって・・・・・・あのまま春を売らされる運命が、少し変わっただけのこと・・・・・・
私の覚悟も、甘く見るなッッ!!
ジッと・・・・・・目を離さなかった。
実際には十数秒程度・・・・・・しかし、何時間もの感覚・・・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・フッ・・・・・・ハハハ!!」
おかしくて仕方がない。
そんな大爆笑だった。
セツナは冷や汗をかいていて、息が詰まる想いだ。笑いどころじゃない。
「いやはや、貴女って人は本当に面白い・・・・・・実に興味深い・・・・・・実に強い」
ずれたワンピースの裾を戻し、そしてセツナの頭をポンポンと撫でた。
「いいんですよ。気にしてません。コレは・・・・・・言わば私と貴女との初戦の証・・・・・・宝物です」
「・・・・・・(でも・・・・・・)」
「それでも気になってしまうのでしたら・・・・・・幸せになって下さい」
「??」
「いっぱいご飯を食べて、いっぱい眠って、たくさん身体を動かして文化的で健康的な生活を送ってもらいます」
「・・・・・・」
「その資格が自分にない・・・・・・なんて思ってらっしゃるのなら、私が勝手にします。勝手にご飯を作り、勝手にふかふかのベッドを用意して、勝手に預かります」
それが・・・・・・
「貴女の御両親に贈ることのできる、最大限の追福の念です」
「~ッッ!!」
「貴女を幸せにしてみせる・・・・・・残った右目に誓って、必ず」
彼女の細い身体を護るように、ぎゅっと抱きしめた。
「さ、夜に考え事をしても良いことはありません。ゆっくり寝ましょう」
・・・・・・コクリ
「おやすみなさいセツナさん・・・・・・安心して。お眠り下さい」
そこからの記憶は、セツナにない。
目が覚めたら、いつの間にやら陽光が窓から差し込んできていた。
こんなに熟睡できたのも、一ヶ月ぶりだ。
この安堵感・・・・・・
護られているという安心感・・・・・・
信じてもいい・・・・・・
この男を・・・・・・
芥川 月という男を・・・・・・
信じてみよう。
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