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青春イベント盛り合わせ(9月)
野球部閑話【密着取材】
しおりを挟むある日の帰りのHR、裕紀は最後に釘をさすように言い放つ。
「あー、明日は1日テレビ取材が入るから、変なことすんなよー。」
「なんでテレビの人が来るんですかー?」
「あーっとな…朝のワイドショーで“今話題のイケメン高校球児に密着!~神奈川・第四高校編~”…ってやつで、何故かそこのバカと1年の赤松直倫に1日密着だそうだ。」
そう言われるとクラス全員一斉に智裕を見た。智裕は昼休みに森監督に呼び出されてこのことを知ってからテンションが下がるどころか死んだ目をして生気を失っていた。
「イケメン……?」
「シケメンだろあれ。」
「赤松くんだけでよくね?」
「テレビの人もやめた方がいいのに。」
「ユニフォーム脱いだらこんな地味ヅラなのにさ。」
「ほっしゃーん!女子アナは来るんですかー?」
裕紀は「はぁ…。」と大きく呆れながら答える。
「何でも高校野球大好きグラドルの板東智夏っていうのが来るらしいぞ。」
その瞬間男子たちは一斉に立ち上がって湧いた。
「マジかよーーーーーー!」
「チナッティー来んのかよ!」
「Hカップの巨乳グラドルだぞ!始球式おっぱい揺れまくるってやつ!」
「夏に千葉球場でのビキニ始球式マジでやばかったから!超エロいのなんの!」
「おっぱい拝めるぞーーーー!」
バンザーイ バンザーイ バンザーイ
巨乳好きの裕也は率先して万歳三唱をした。
「松田、大竹、お前らホモだって全国にバレたくなかったら明日はカレシと極力接近すんなよ。わかってんな?」
「全力で逃げてやるからまかせろほっしゃん。」
「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーー拓海さんとセックスしてぇーーーーーーーーーーーーー。」
裕也は嬉々としてサムアップしてるのに対し、智裕は屍の叫びだった。
***
翌朝、朝練の時間からテレビクルーは第四高校にやってきてた。野球部たちはいつも通りに朝練をしているが、やはり落ち着かなかった。
「5、4、3、……」
「現在朝の7時ですが、選手たちは既にアップを済ませてブルペンチームと野手で分かれてそれぞれ練習を始めています。監督と新キャプテンの清田選手の檄が飛び交ってますねぇ。」
最初にカメラとグラドルの“チナッティー”が向いたのは守備練習をしている直倫だったので、注目されていないブルペンチームは全員チナッティーのたわわな胸に鼻の下を伸ばしていた。
「やべぇっす……チナッティーまじ天使っす。」
「あのオッパイで始球式とか最高じゃねーか。」
「さっきグラウンド入る時も一礼して入ったりさ……絶対良い子だよな。」
「松田先輩ずるいっすよ!チナッティーに密着されるんですよね⁉︎」
「やばい、俺おっぱい好きだったわ。」
そして野手チームがノック練習を終えたのでチナッティーは直倫に接近した。
「お疲れ様ですぅ、守備だけでももう華がありますねぇ。」
「いえ……まだまだで、もっと送球だったり捕球もしっかりしないといけないなと日々痛感してます。」
直倫は本当に裕也以外に興味がないようで、顔色ひとつ変えずにいつも通りのテンションで答えた。そしてとうとうカメラとチナッティーがブルペンにやって来た。
「投手、捕手の皆さん、よろしくお願いしまぁす。」
よろしくお願いします!
チナッティーの愛らしい笑顔と近くで謁見するおっぱいにデレデレな顔を隠すように90度お辞儀でブルペンチームは挨拶をした。
「板東さん、カメラ回しますよ、いいですか?」
「はぁい。」
くるんっとチナッティーはカメラに体を向けた。その仕草も可愛すぎて男たちは顔を手で押さえて耐えた。
「部員のみなさんはいつも通りに投球練習をお願いしますねー。」
スタッフにそう言われて智裕と弥栄がプレートに立って、智裕には野村、弥栄には1年捕手の三輪がそれぞれ捕手役についた。
「5、4、3……」
「さてこちらはブルペンで投手たちが練習をしてます。私から見て手前で投げていますのが夏の甲子園で活躍しました松田智裕投手、そして奥にいますのが次期エースの1年生、弥栄仁司投手です……ミットの音が気持ちいいですね。」
チナッティーに紹介され軽く褒められると、2人とも心の中で舞い上がってしまう。
それぞれ20球ずつ投げたら、今度は香山と1年の中継ぎ投手、阪倉と交代する。智裕はスタッフにチナッティーの隣に立つよう誘導される。
「先ほどの投球練習、何を意識して投げられたんですか?」
グラドルでキャピキャピしているのだが、訊ねられる言葉はその辺の女子アナよりも至って真面目なチナッティーに智裕も胸がときめく。
「えっと…スプリットとストレートです。個人的に日本代表としてこれから戦うことになり、由比コーチや監督からも落差のある変化球は世界で戦う上で重要だとご指導頂いているので…フォームの見直しも含めてそこを意識して投げてました。」
「成る程……たしかに今見てましたら馬橋戦の時に比べてリリースポイントがかなり前進していた気がします。スリークォーターからの腕の振りも更にしなやかになっているようにも見えました。」
チナッティーに自分がこんなに観察されているとわかると、彼女にとってビジネスだとしても智裕は嬉しくなった。こんな可愛い女性に褒められることは人生で後にも先にもこれだけじゃないかと思えてきた。
「はい、オッケーです!」
「大切な練習中にご協力いただきありがとうございますぅ。また放課後もお邪魔しますがよろしくお願いしまぁす。」
「いえ!こちらこそありがとうございます!」
チナッティーは礼儀正しく頭を下げて愛らしい笑顔を見せた。
***
「チナッティーまじでかーわーいーいー!」
着替えて2年5組の教室に入るなり、智裕はデレデレしながら叫んだ。
「オッパイぷるんぷるんに揺れてんのにさーあー、超礼儀正しくていい子でさーあー、も、超可愛いー!」
昨日の放課後の屍は何処へやら、智裕は鼻の下も顔も緩み切っていた。
「おーおー、清々しいほどの掌返しね。」
「昨日までは1日ツワブキ先生とチュー出来ねぇとかほざいてたくせにね。」
「それを考えないようにしてたんだぞ!俺の浮かれ気分を返せ!」
吹奏楽部コンビの南と古川に口撃されて早速撃沈しそうになったので頑張って抵抗の言葉を叫びながら智裕は自分の席に座った。
「松田!松田!チナッティー近くで見たか⁉︎」
「でへへーん…インタビューされちった♡」
「まーじかよ!うーっわツーショットかよチナッティーと!」
「おっぱいデカかったぜぇ……たっぷたぷだった。」
「くっそぉぉぉぉぉ俺も会いてぇよチナッティー!」
ロリおっぱい大好き裕也は地面に膝をついて本気で悔しがった。
「大竹、お前の彼氏も密着対象だかんな。赤松のやつマジで男として終わってるよ、チナッティーにインタビューされても能面だしよ。」
「……信じらんねーな。」
裕也もドン引きする事実だった。
そして朝のHRは滞りなく終わったが1限目に早速違和感だった。1限目は公民で担任の裕紀がそのまま教壇につくのだが。
「おい、今日の授業はグループディスカッションだから、席動かして5人ずつくらいで班作れ。」
その時クラス全員が思った。
(公民でグループディスカッションなんて1度もやったことねぇじゃねぇか!)
渋々近くの席同士で上手いこと班を作ると、始業のチャイムが鳴った。それと同時にそっと教室の前方のドアからテレビクルーがやってくる。日直の号令で全員が挨拶をすると、全員が気がついた。
(ほっしゃんがスーツ着てるぅぅぅぅぅぅぅ!)
式典や授業参観以外ではネクタイなぞ着用しない裕紀がかっちりとしたスーツを着ていた。思えば朝のHRでも珍しくYシャツだった裕紀に誰も疑問を抱かなかったが、今になって裕紀も学校とテレビディレクターの言いなりなのだと理解した。
見違えるようにカッコ良くはなっているが突然のことに女子たちは唖然とするだけで、密かにときめいているのは一起だけだった。
そして授業が進むとチナッティーがそっと教室に入ってきた。グループディスカッションの最中、智裕以外の生徒にインタビューをする。
「松田投手は普段どういう人ですか?」
「えっと……あ、あの、へ、ヘタレです!」
「えー!本当ですか?」
「本当です!お、お化けも大嫌いですし、ビビリです!」
目の前で最高に可愛い女性が胸を震わせて笑顔で話しかけてきて裕也は挙動不審になった。
「女子目線から見て松田投手はどんな人ですか?」
「えー…彼氏にはちょっと……って感じです。顔も地味だし、野球以外は頼りない部分が多いです。」
「顔が地味なんですか?今回イケメンって特集なんですけど……。」
「赤松くんの方が断然イケメンなので霞んじゃってますね。」
物怖じしない面食いの南が毒舌をかましてチナッティーと女子たちが盛り上がっていた。
「それでは76ページの、人権問題について話し合ったと思うが、何について話し合ったのか、松田。」
チナッティーに見惚れて全く話し合ってないのに当然のように当てられた智裕は教科書を見ながらしどろもどろにどうにか答える。
「え、あっと、LGBTの人たちのことです。」
「LGBTとは具体的に日本語で何て言うんだ?」
「え……え……えぇえ……。」
教科書の目に付いた項目を適当に発言しただけなので智裕は困った。そしてテレビカメラが智裕を向いている緊張感で焦る。
「●ツコのことです!」
チナッティーとテレビクルーに智裕のおつむが露呈した。
***
昼休み、2年5組は大爆笑に包まれていた。
「ギャハハハハハハ!に、日本の、エース、です!とか言ってた男が馬鹿とか!アハハハハハハハハ!」
「日本のエースになりますっ!」
「アハハハハハハハハ!片倉似てるぅぅ!」
馬鹿が露呈したついでに、先日スポーツニュースで流れた決起集会での囲み取材の発言まで揶揄われて智裕は顔を真っ赤にして塞ぎ込んでいた。
「日本のエースが……馬鹿って……。」
「マジで批判くるでしょ?ただの馬鹿だし。」
「あーあーあー…日本の恥って言われそー。」
「LGBTを日本語で●ツコって……あ、テレビきたよ。」
今度はオフの顔を映しに昼休み突撃でまたまたチナッティーとテレビカメラマンが2年5組にやってきた。そしてその後ろからいつものように直倫がやって来た。
「松田先輩、お弁当持って来ましたよ。」
智裕のデブエットという身体作り期間、タンパク質だらけの弁当を直倫が持ってくることが恒例になっていた。見栄えはとてもいいのだがタンパク質を徹底して味もクソもない地獄弁当である。
「あ、裕也さ」
直倫はいつものように裕也に引っ付こうとしたが、それが今危険だと気がついた野村と一起は大声を出して直倫を制した。
「赤松くん!大竹は今日ちょっと星野先生に呼び出し食らっててさ!残念だったね!」
「ほら!赤松くんは松田くんのお世話係りでしょ⁉︎さぁさぁさぁ!」
その隙に裕也はコソコソと教室を脱出していた。全国区に自分が男とそういう関係だということがバレることは死ぬほど嫌だった。自分の為でもあり、直倫の為でもあった。
強引に智裕のとなりに座らされた直倫は明らかに不機嫌で、その凄むオーラに智裕は震え上がった。
「おい赤松!その不機嫌モードしまってくれ!弁当!」
「はぁ…裕也さんがいない昼休みなんてあっても意味ないですよ。」
「いやいやいやそこまでかよ。……俺だって今日は拓海さんへの接近禁止命令出てんだからな。」
テレビクルーに聞こえないように智裕は直倫に耳打ちをした。しかしその姿はどう見ても親密すぎるそれだった。
「お2人は普段から仲良しなんですねぇ。」
無邪気にチナッティーが訊ねてきたけど、2人は声を揃えて答えた。
「仲良くないです。」
「仲良くないっす。」
***
裕也は保健室に避難していた。そして何故か担任の裕紀も一緒にいた。
「今頃お前の彼氏ブチ切れてんじゃねーの?」
「知るか。つーか何でほっしゃんがここにいんの?」
「職員室も森先生やら教頭やらにディレクターがインタビューしてて落ち着かねーんだよ。朝のワイドショーのほんの10分くらいだろ?なんでこんな1日中追っかけ回されんのかねぇ甲子園のスター様たちは。」
裕也と裕紀は購買で買ったパンを食べながら少々イライラしつつ会話をしていた。しかしこの保健室の主である拓海はあからさまに落ち込んだまま弁当をちまちまと食べていた。
「智裕くん……やっぱり女の子の方が好きなのかな…。」
拓海の耳に入ってきたのは、智裕とチナッティーの接近だった。やはり健全な男子高校生の智裕はチナッティーの巨乳と健気さと可愛さに顔も緩んでしまっていたので、それが他の生徒からは「松田智裕はチナッティーに惚れた。」と見えてしまったようだった。
拍車をかけていたのは以前チナッティーがスポーツ番組で「私の注目選手」に智裕をあげていたことだった。
それを知ると余計に拓海は不安になっていた。
「さっきすれ違った時もすごく丁寧に挨拶できて、本当に良い子なんだなって思えたし、それに智裕くんって…おっぱい大きい女の子大好きだし…。」
「ツワブキちゃん、おっぱい大きいの好きなの俺だから。」
「やっぱり俺ってワガママだし年上だし全然可愛くないし……智裕くんが女の子にいっちゃったら……仕方ないけど…やだよぉ…。」
悲観的な妄想が拓海を襲った。裕紀は呆れたようにため息をこぼして拓海の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「大丈夫ですよ。あんなの今日だけ舞い上がってるだけですから。今日だけ我慢ですよ、石蕗先生。」
「ふぇ……星野、せんせぇ……。」
「大竹、あいつが昨日のHRで叫んでた言葉を石蕗先生に教えてやれ。」
「え?『あー、拓海さんとセックスしてぇ。』って叫んでましたけど。」
「石蕗先生、今日が終わったら覚悟しておいたほうがいいんじゃないですか?」
裕紀と裕也は怪しく笑った。
***
後日、智裕と直倫の密着取材が放送された。
『今日のサンデースポーツカルチャー特集はこちら!“噂のイケメン甲子園球児のその後は?”……はい、先週は聖斎学園の赤松直能選手に密着しましたが、今日はその赤松選手の弟も在籍する“神奈川県立第四総合高校”の野球部に我らがチナッティーが密着しましたのでご覧下さい。』
_チナッティーきたー!
_かーわーいーいー!
_ああああ…間近であのオッパイを拝めたことに感謝!
『野球大好きぃ!チナッティー!はい、板東智夏です!今回はこちら、そうです、今年の夏の神奈川県を制し甲子園に出場しました第四高校の野球部におじゃましまーす♪個人的に、大変注目している選手がいますので、早速密着レッツゴー♪』
_チナッティーかわいい
_チナッティーかわいい
_チナッティーかわいい
_チナッティーマジ天使
_チナッティーかわいいよー
『この夏、甲子園を熱く盛り上げた第四高校。昨年は県大会準優勝、そして今年はその雪辱を果たし甲子園へ。初戦から優勝校の大阪・馬橋学院と激突。惜しくも僅差で敗れましたが、馬橋の絶対的エース・松田八良投手の途中降板、清田恭介選手の決死のヘッドスライディングなど心打たれる場面が数多く生まれました。』
_清田が泥んこwww
_この時はカッコよかったよねー。
_あ、松田倒れたとこ映ったwww
『3年生が引退し、今は10月の秋季大会、春のセンバツを目指して日々厳しい練習を行なっています。その中心にいる選手2人に今日は密着しました。まず1人目は…。』
『はわぁ…守備練習してますね。凄い気迫です……監督とバトルしているかのような…そんな雰囲気です。』
_チナッティーが可愛い
_チナッティー結婚してぇ!
_大竹ぇ、彼氏だぞー
_うるせーよ!
『1年生内野手、赤松直倫選手。先週放送した聖斎学園のエース・赤松直能投手とは2歳違いの弟ですが、身体つきも顔も双子のようにソックリだと話題に。県大会では打率と盗塁No. 1、走攻守全てが揃った甘いマスクに高校野球ファンは魅せられました。』
_赤松くんは華があるわ
_これがスターだわ
_あ、次松田だ。
_地味ぃ…
_華なさすぎだしwww
_やっぱ赤松くんのあとに出したらダメだった
『松田投手のフォームが…改善されてますね。甲子園の時よりもしなやかで球速も上がってますね。』
『松田智裕投手は10月に行われます“U-18世界選手権大会”の日本代表に選出。2年生ながら馬橋学院の松田八良投手とダブルエースとして活躍を期待されています。実はこのフォーム改善…ある人が関わっているようです。』
_あれ?そういや松田ってこれ見てんの?
_チャットに反応ねぇよな
_松田くんは土日は夕方までいないよ
_マジで⁉︎
_あれ?野球部今日休みなん?
_さすがに週1は休まなきゃ倒れるよ
_松田は日本代表の練習?
_らしいよ。由比コーチの野球教室の手伝い兼ねて個人的に練習してるとか言ってた。
_松田って死ぬほど由比壮亮好きだったよな
_憧れの人からのレッスンかー
_松田の奴、ツワブキちゃんというものがありながら
_女子、何故そういう考えになる!
『さて、そんな2人もグラウンドの外ではどんな感じなのでしょうか♪まずは松田投手……この日は公民の授業で人権についてのグループディスカッションをしてました。』
『LGBTとは日本語で具体的に何て言うんだ?』
『●ツコです!』
『なんだか珍回答が飛び出しましたが…。』
_やべぇwww
_これ何回聞いてもウケるwwwwww
_上手いこと編集されてるwww
『赤松選手は英語の授業で……黒板に英文を、筆記体⁉︎』
『ええ、赤松くんは入学以来テストは学年トップですね。』(英語担当教諭)
『運動も出来るし頭もいいし優しいし顔もいいし、完璧な王子様ですね。』(クラスの女子)
『ええ、とても優秀な生徒ですね。どうして…どうしてうちの学校なのかと不思議ですね。』(1年4組担任教諭)
_担任半笑いかよwww
_確かに不思議よね赤松くんはwww
『そして昼休みは…あれ?赤松選手が松田投手のクラスに……な、な、なんと!松田投手にお弁当⁉︎』
_効果音が怪しい…
_全体的にピンクになってるwww
_なにこれ
_BLよ!赤松×松田よ!hshs(*゚∀゚*)
_うえぇぇ( ゚д゚)
『あの2人仲良しですよ。毎日一緒にご飯食べてますし。』(江川一起)
『赤松くんは松田くんに憧れて入学したって言ってますしね。』(高梨優里)
『野球の時は松田くんが赤松くんを引っ張ってるんですが、昼休みとかは真逆ですね。松田くん勉強出来ないので赤松くんに教えてもらったりしてます。』(里崎蓉子)
『んん?何だかアヤシイ♡関係なのかもしれないですねぇ。』
_ホモフラグたったぞ
_ツワブキちゃん泣くわよ…
_高梨…やめてやれよ
_2人とも男と付き合ってるからホモは合ってんじゃね?
_やめてやんなさい!
『そして2人に今後の目標を伺いました。』
『夏は甲子園でとても悔しい思いをしたので、松田先輩をもっと上のステージへ導きたいと思います。まず秋季大会で勝って、春センは必ず出ます。』
『個人的にはまず…もっとコントロールを磨いて、怪我をせず…日本の高校野球の世界一奪還に貢献出来るようなピッチングを極めて、戻ってきたらすぐに秋季大会なので、そこでも完璧に投げて春はまたみんなで甲子園で戦えるように、頑張ります。』
『秋季大会、世界大会での活躍を期待してます!頑張ってくださいね♡』
_チナッティーかわいいー
_チナッティーかわいいー
_チナッティーかわいいー
_チナッティーかわいいー
_男子うるさい!
「ったく…グループチャット荒れてるわぁ……ツワブキちゃん、平気?」
「う、うん…というか、ごめんね……せっかくのお休みに……本当に腰痛くて……。」
高梨は例のワイドショーを石蕗家で見ていた。
今朝拓海がとても疲労困憊な顔で茉莉を抱っこしてコンビニに向かっているところに遭遇した高梨は、拓海の代わりに石蕗家の溜まった家事や茉莉の世話を買って出た。
「3日連続でそんなにヤられたら誰でも身がもたないわよ……どんだけ欲求不満なのよあの性欲猿は…。」
1日の接触我慢が智裕の欲求不満を爆発させたようで、拓海の1日の寂しさや嫉妬は充分すぎるほど埋められた。というより容量オーバー。
「お、俺も断れなかったのが悪いんだけど…ね……。」
「あのね、それはキンタマ蹴ってもいいからね。」
高梨の容赦ない言葉に苦笑いを浮かべると、拓海はふと憂鬱な気持ちになり、少し憂いた目を伏せた。
「ツワブキちゃん?」
「ぱーぱ?」
急にそんな表情になった拓海を高梨と茉莉は心配そうに覗き込んだ。
「これくらいの痛みがないと…不安になっちゃうのが…凄く嫌だ。」
「…どうして?」
「やっぱり…こうやってテレビで見るとさ…改めて思い知らされるんだ、智裕くんは違う世界の人なんだなぁって。最近、夢にまで出てきちゃうんだ…智裕くんが遠くに行って二度と帰ってこなくなるって……有り得る話だから余計に……。」
(智裕くんを諦めたら……俺は、もう……。)
不安な拳をぎゅっと握ったことを高梨は見ていた。
「もし智裕が二度と戻らない所まで行っても、ツワブキちゃんは1人じゃないよ。茉莉ちゃんも、私らもいるからさ。」
高梨の言葉を理解したかのように、茉莉は拓海の膝によじ登って向かい合うと、頬をペシペシ叩いてきた。
「ぱーぱ!」
「ん……そうだね、まーちゃん……まーちゃんがいるもんね。」
拓海は膝の上にのった温もりをぎゅっと抱きしめた。
『月末は大学日本代表チームとの試合が行われますが、松田投手は登板するのか、楽しみですね!以上、サンデースポーツカルチャーの特集でした!』
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