男子高校生のマツダくんと主夫のツワブキさん

加地トモカズ

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戦う夏休み

アカマツくんの夏

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 神奈川県の予選は、第四高校がエース・松田まつだ智裕トモヒロ無しでも2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝を快勝する番狂わせが起こっていた。
 決勝のカードは、第四高校と聖斎せいさい学園高校の対決となった。監督や関係者から明言された先発投手は予想通りだった。


「明日の決勝……聖斎は赤松あかまつ直能ナオタカ四高ウチは松田、ねぇ。」
「やっぱり地元だから盛り上がってますよ。区役所のロビーでパブリックビューイングあるんで、母と弟もメガホン買ってましたよ。」
「へー……学校じゃシケメンでヘタレのあいつが一気に地元のヒーローか。人生どうなるかわからんな。」
「いや、先生も担任として応援したらどうですか?本当に明日球場行かないんですか?」
「だってドームじゃねーんだもん。」
「ドームで高校野球なんて聞いたことないですよ。」

 学校が夏休みに入っていたので、一起カズキ裕紀ヒロキに呼ばれて裕紀の自宅にいた。そして何故か裕紀の部屋の掃除や片付けをしている。家主である裕紀は地元の新聞を読みながらローソファーでダラダラとしていた。

「壮行会とかずっと門の前でダラダラダラダラ挨拶ばっかでよー。一起ぃ、俺疲れたー。」
「はいはい、そこでダラダラしてて結構ですから。それにもう夕方だし俺帰りますよ。弟の迎えに行かないとですし。」
「えー!もう2週間もヤってないんだけどー!俺のチンコ爆発しそうなんだけどー!」
「勝手に爆発しといてください。俺には家庭があるので。」
「え、なにそれ。ちょっと背徳感ある言葉。燃える。」

 一起はわざと大きな音を立てて紐でまとめた雑誌を置くと、ソファの横に置いてた自分のバッグを手にする。

「んじゃ、俺帰りますから。雑誌は古紙の日に出してくださ……っ⁉︎」

 帰る態勢になっていた一起は腕を強く引かれて、裕紀の腕の中へ。

「一起とやっと会えたのなぁ。」
「明日学校で会うじゃないですか。」
「一起の分からず屋。そんな生徒にはお仕置きが必要だな。」
「何言ってんですか……んっ⁉︎」

 一起はソファに押し倒されながら、裕紀から深いキスをされる。一起が弱い、トロトロになる甘いキス。抵抗しても裕紀の舌に翻弄される。

「んあ…せんせ……ほんと、今日は…母さん遅いから……無理。」
「わかったわかった。」

 裕紀が退いて一起は立ち上がる。すると今度は後ろから優しくハグされる。裕紀の甘く低い声で囁かれる。

「明日、準備室行こうぜ。」
「……バカですか?」
「んー…一起限定でバカになる。」
「……ばーか。」


***


 地元の人ヒーローになっている時の人こと智裕は、家で夕飯の食卓についていた。

「やったー!トンカツだぜ、にーちゃん!」
「あー……オフクロ……俺、お粥にしてくれない?」
「何言ってんの!明日は勝つ!そしてスタミナをつけなさい!」
「だって胃が痛いんだよぉぉ…。」

 母の験担ぎはありがたいが、今の智裕にとっては拷問だった。初戦とは違い、明日は名門中の名門との対決だからか、智裕にのし掛かる重圧は凄まじかった。
 隣に座る智之ともゆきは呑気にトンカツにかぶりつく。

「うめー!やっぱトンカツうめー!にーちゃんも食えよー!」
「やばい…胃が……。」
「なんだなんだ、地元のヒーロー様がそんなんでどうするんだよ。」
「その地元のヒーロー様っつーのが余計なんだよ!去年はこんなことなかったのに…。」
「そりゃ1年だし期待もされてなかったからだろうな。」
「何で親父はこういう時だけ俺詳しいって感じ出すかな。」
「見てみろ、新聞の地域ページ。」

 父が2人に新聞のある1ページを見せて、そして書かれている文をこれ見よがしに音読する。

「昨年甲子園ベスト8まで残った名門の聖斎学園は“二刀流”とも評される赤松直能選手(3年)を先発投手に起用することが分かった。赤松選手は昨年の夏大会でリリーフ起用され、女性ファンの間で“イケメンすぎる高校球児”と人気を博した。今年はチームの中心的存在で準決勝まで全試合スタメン出場(先発投手としては2回戦のみ)。聖斎学園の試合には毎回多くの女性ファンが詰めかけている。」

 智裕の胃は益々キリキリと痛む。その苦しむ息子の様子が愉快で仕方がない父であった。

「にーちゃん、明日負けても誰もにーちゃんを責めないから。いろんな意味で。」
「何でこうイケメンとかイケメンとかイケメンとか……イケメン滅べよ……。」
「僻むな息子よ。諦めろ。」
「そうよ、何事も諦めが肝心よ。顔やオーラはどう頑張っても勝てないんだから。」
「親としてその慰め方は正解なの?ねぇ、ねぇ!」

 そして家族によって追い討ちをかけられ傷心となった智裕は、無理やりトンカツを胃に流し込み、自室に入るとベッドの上で塞ぎ込んだ。


 しばらくするとスマホから着信音がしたので、力なく手に取り画面を見ると「拓海さん」と表示されていた。智裕はすぐにベッドから飛び起きて素早く通話ボタンをタップする。

「も、もしもし…!」
『智裕くん、今電話して平気だった?』
「うん!全然平気!むしろ嬉しい!」
『そう、良かった……。』

(あー、安心した時の拓海さんの吐息ってエロいし癒されるぅ…。)

 智裕はすっかり腑抜けて鼻の下も伸びきっている。

『あ、あの……明日、頑張ってね。』
「あー…うん。なんか向こうの赤松の兄ちゃん凄そうだし緊張半端ないけど、やれるだけのことやるよ。」
『そ、それでね…明日、夕方に校門前で報告会…だよね?』
「うん。確かそうだった気がする。監督には結果によっては俺個人の会見もあるって言われてる。」
『……あ、明日ね……まーちゃん、智裕くんのお母さん達に…仕事でって…嘘ついて……お泊まりで預かって貰うことになってるんだ…。』
「へ?」
『智裕くんと…2人きりで……一緒にいたい……から……。』
 
 その言葉だけで智裕は大興奮した。

「明日ちょー頑張るからね!マジで!拓海さんのために頑張るからね!」
『ふふふ…そこはチームのため、でしょ?』
「うーん……まぁ、それもあるけど…盛り上がってたんだからさー。」

 ブーと不貞腐れると電話口から拓海の綺麗な笑い声が聞こえて、智裕は表情が緩んだ。

「絶対勝ってご褒美倍にしてもらうから、ね。」
『ふふ……俺も応援頑張るね。本当は会いたいけど…明日早いでしょ?もう休んで。』
「うん、電話ありがとうね。拓海さん……愛してるよ。」
『……っ!お、俺も……大好きだよ……智裕くん。』

 名残惜しく、通話を終了した。智裕はスポーツバッグの中身を確認して、目覚ましを5時にセットする。そして顔を上げると机の上にある写真立てが目に入る。最近また飾り直した、3年前のU-15日本代表の記念写真。監督を中心にして、智裕は2列目の左側で、その隣には智裕より少し小さい選手が全力でピースサインをしている。


八良ハチロー先輩……俺、絶対明日勝ってみせますから。」


***


 同じ頃、直倫ナオミチは一通り準備を済ませて歯を磨いていた。シャコシャコ、と磨きながら瞑想する。今日までの練習を、感覚を研ぎ澄ませる。


 初戦が終わってから、直倫は自分を厳しい環境に置いてもらえた。監督の許可も下りて、先輩の智裕が打撃投手を務めてくれた。
 決勝の相手は聖斎学園のエース、直倫の兄である赤松直能を想定した。なので智裕が直倫に向かって投げる球は速球が中心だった。だが智裕のストレートは並大抵のものではなかった。初めて打席に立って体感した直倫は戦慄し、震えてしまった。

「今の……打てるんですか?」

 思わずそう訊ねると、キャッチャーをしていた清田に冷たくあしらわれた。

「今の打てねーとお前にホームランなんか無理だから。そんなんで膝が笑ってんじゃ、決勝は無理だろ。」

 それが現実だった。直倫はその言葉で絶望せず、もう必死になるしかなかった。

「俺のマックスこんくらいなんだけどー、何キロだったー?」
「今ので148だよー。もうちょいイケるでしょ?」
「無理ー!腕死ぬー!」

(今ので…150km/hを超えてないのか⁉︎)

「でもな、お前の兄貴もこんなもんだ。何でかわかるか?」
「え…。」
「松田は技巧派だ。カーブ以外の変化球は精密で直球も速く見える。松田は球の回転数が圧倒的に多いからだ。お前の兄貴は速球を投げられるが、回転数は平均的。松田は平均よりプラス10回転はある。だから体感では実際の球速プラス5キロになる。」
「そんなにですか⁉︎」
「それに回転数が多い分、詰まってしまう。だから兄貴からホームランを打ちたいなら松田の全力ストレートを柵越えさせろ。」

 清田はキャッチャーミットで直倫の腰を叩いて鼓舞した。

 それから直倫は何度も、何度もバットを振った。県予選でも振り遅れないように、しっかりストライクを狙って意識した。智裕の球に比べたら止まって見えるようだった。だがホームランは打てなかった。


(とうとう決勝まで1本も打てなかった。いくら打率が良くても、点を取れても、ホームランじゃなきゃ意味無いんだ!)

「やるぞ……明日は…やるぞ…っ!」

 そう呟き自分を奮い立たせながら寝床についた。スマホが受信したメッセージは見ないまま、眠りについた。


_明日決勝頑張れよ!
_お前はお前、兄貴は兄貴だ。俺はもち四高応援するからな。
_あ、ホームランは打たなくていいぞww
_それでも全力で暴れてこい!



_トモの後ろは頼んだぞ。



***


 翌日、午前11時30分には四高の体育館は満員だった。ステージにはテレビの映像が流れていた。県大会決勝の前にやっている料理番組だった。

「あーやべー腹減ってくるわー。」
「ほー…めんつゆにごま油か……いいな。」
椋丞リョースケ、それ後ろのオバハンたちと同じリアクションだぞ。」

 先着順だが、校長と教頭は最前列に座ってテレビ局のインタビューに応えたりしていた。

「区役所もヤバいってさ。ほら。」

 裕也は周りのクラスメートに姉から送られてきた画像を見せていた。
 1枚目は姉と母が応援用ウチワを持った写真、2枚目は人でごった返している区役所の広いロビーの写真。

「なんか…松田が遠い人になった気がするね。」
「元気でやってるのかな。」
「あいつ、いいヤツだったよな。」
「ちょっと、松田くんが死んだ人みたいなテンションになってるよ。」

 試合開始10分前でニュースになる。最初のニュースが県大会決勝の試合直前の中継だった。


『間も無く試合開始されます。先程、スターティングメンバーが発表され球場は歓声に沸いています。』

 映されたのはバックスクリーンの電光掲示板。第四高校と聖斎学園の先発出場選手の名前が並んでいる。

四高ウチが先攻か。そんで1番が赤松…うわ、初っ端から兄弟対決かよ!」
「え?あれ同じ苗字って兄弟なの?」

 まだ詳細を知らない生徒たちはスマホで検索をしながら予習をする。おそらく赤松直能の顔を見た女子だろう、黄色い声を上げている。
 直倫のクラス、1年4組の生徒たちの殆どは直倫の家庭事情を知ることがなく驚いていた。

「赤松くんっていつもボーッとしてたし怖い雰囲気あったけどねー。」
「わかるー。でもこうして見るとイケメンだよねー。」
「つーか赤松の兄貴やべーな!モデルみてぇ!」

 その輪の中には水上みずかみもいた。水上は知っていたがわざと知らないふりをして同調している。

 「なー、水上、松田先輩勝てんのかな?」
「でもまっつん日本代表だからね。打てるかどうかじゃね?」
「それ言えてるわー!」

 水上もスマホをいじりながらその時を待っていた。


***


「両校、礼!」

 ホームベースに両校の監督と先発メンバーが並び、審判の合図で頭を下げた。そしてけたたましくサイレンが鳴る。

 聖斎学園が守備について、バッテリーは最終調整の投球をする。1塁側のネクストバッターサークルには第四高校の1番打者、直倫が素振りをする。
 そんな直倫の横で直倫に話しかけるのはスコアラーでベンチ入りした野村だった。


「赤松くん、昨日も話した通りだ。聖斎のバッテリーは初球から打者を怯ませる為にストライクゾーンに150km/h超えのストレートを放ってくる。君ならしっかり選球出来る。真芯に当てるならそこがチャンスだしそこしか無い。絶対振り遅れるな。」
「はい!」
「松田くんのストレート打てたんだ、怖くない!」
「はい!」
「しっかり振ってこい!」
「はい!」

 そして野村は直倫の背中を強く叩いて送り出す。

「赤松ー!頼むぞー!」

 2番打者の智裕もヘルメットを被って準備を始めながら直倫に応援を送る。
 

***


『まず第四高校、1番は遊撃手ショートの赤松直倫。マウンドに立つ聖斎のエース、赤松直能の弟。第四高校では唯一の1年生です。』
『双子かってくらいソックリですね。体格もほぼ一緒ですね。直倫選手の方は打率と盗塁成功率は今大会1位ですからプレースタイルは異なっているようです。』
『四高のもり監督は、赤松直倫の選球眼を評価していました。これによりボール球に手を出さず出塁して盗塁で早々に得点圏へ進むので作戦を組み立てやすいそうです。』
『いわゆるスモールベースボールの典型ですね。』
『さぁ、この兄弟対決、第1打席はどうなるのでしょうか。』


***


 打席に立った直倫の目線、約18m先には3ヶ月振りに対面する兄の姿があった。実家での優しく聡明な兄とは別人のようだった。

(兄さん……俺は兄さんを超えさせてもらいます!)

 セットポジション、振りかぶって、球が放たれた。直倫は極限の集中力で球を見る。軌道は野村と清田が事前に読んでいた通りだった。

(真ん中の豪速球……振り遅れるな!遠くに飛ばせ!)


 カキーンッ


***


 四高の体育館はわき上がった。直倫が振った瞬間に金属バットの快音が鳴る。

『初球を打った!引っ張られた球は伸びて、レフト追いかける、追いかけるが、入ったーーー!四高、先頭打者、赤松直倫が先制点となるホームラン打ちました!今ダイヤモンドを一周します!打たれた聖斎の赤松直能はレフトスタンドを見つめています。』

 入った瞬間、その場にいる全員が立ち上がって喜んだ。興奮していた。割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

「赤松すげーーー!」
「なんだあいつ!ホームラン打てねーって克樹カツキが言ってたじゃんか!」
「すごい!すごいよ!赤松くんすごい!」

『四高ナインも大喜びですね。あ、ネクストにいる松田選手は怒っているみたいです。』
『おそらくプレッシャーになったのでしょう。あまり打撃が得意な選手ではないのでね。』

 普段から直倫を知る2年5組も歓声を上げた。そんな中立ち上がりはしたが、1人開いた口が塞がらないチビがいた。

「ああああああ……う、っちゃ…ったあああああああ⁉︎」
「あ?大竹、何言ってんだ?」
「あれホームラン⁉︎赤松が⁉︎打っちゃった⁉︎」
「どー見ても赤松しか打ってねーだろ。見ろ、あの映像を。」
「すごいね赤松くん。普段すごいクールなのに…よっぽど嬉しかったんだろうね。」

 ホームベースを踏んでベンチに帰ってきた直倫は、感情を爆発させるように激しく部員とハイタッチをし「ヨッシャー!」と叫んでいた。

「かかかかかかか一起!一起一起一起!」
「何だよ大竹、くっつくなウザい!」
「どど、どうしよ……俺、赤松にホームラン打ったら付き合ってやるって約束しちまったよ!」
「はぁ?知るか。」
「うわあぁぁぁぁぁぁ、ど、ど、どうすればいいんだよーーー!」

 裕也は絶望して騒いでいると、後ろからメガホンでど突かれた。加害者は高梨だった。

「往生際悪いわよ。」
「うるせーよ!俺はふわふわ系巨乳の彼女が欲しいの!」
「赤松くんの想い、ちゃんと真剣に向き合って約束したの?そうじゃないなら今から真剣になりな!このクソチビが!」
「な……っ!」

 そんな言い合いをしていると、今度は体育館中にため息が溢れた。

『2番、松田は変化球を打ちましたがショートゴロで1アウトです。』
『彼は投げる方で活躍しますからね。』

「あー…。」
「アイツほんとバッティングはゴミだな。」
「打てただけマシじゃない?」

 体育館の後ろの方で立ち見をしている拓海は恐らく今この空間で唯一瞳を輝かせている存在だった。

(智裕くん…カッコよすぎる…っ!)


***


「赤松、よくやった。」

 普段あまり人を褒めない仏頂面の監督が直倫の背中を叩いてそう言った。

「ありがとうございます!」
「今ので掴めたか?」
「はい。次の打席からも対応してみせます。」

 直倫がヘルメットとプロテクターを外していると、トボトボと2番打者が帰ってきた。

「松田、投げる準備するぞ。」
「あい…。」

 捕手用のプロテクターを着けた今中いまなかがすぐさま声をかけると、智裕はヘルメットを脱いで、キャップを被り、グローブをはめた。そして2人はベンチ前でキャッチボールを始めた。


(打てた……まだ感触が残ってる……ホームランを、あの豪速球をスタンドに運んだ……兄さんの顔、あんま見てないや……。)

 直倫は見つめている両手をギュッと握りしめた。

(裕也先輩との約束……ちゃんと、果たせた!早く、早く…裕也先輩に会いたい…!)


 四高の攻撃は4番のほりが甘く入ったスライダーを捕らえてツーベースヒットになり、2アウト走者2塁で清田が打席に立った。
 聖斎のバッテリーは配球を変えてきた。左打者の清田に対して外角の変化球とチェンジアップから入っていく。先ほどの直倫のホームランが効いていたからか、リードが粗い、と清田は冷静に分析する。

(赤松の兄貴…やっぱあの松田バカに比べたら大したことねぇな。甘い球は易々とホームランにしちまえる。)

 
 カキーンッ 


「っしゃあー!」

 打球は鋭く、バックスクリーンに直撃し、堀と清田は悠々とホームベースまで走っていく。更に2点追加して智裕は援護を貰った。


「松田、こりゃ簡単に打たれたらあとで殴られるぞ。」
「今中せんぱーい…そんなプレッシャーかけないでー!」

 情けない声を出して肩を温めているが、たった数分後に智裕は初戦とは比べ物にならないくらいの存在感を発揮することになる。


***


 清田がホームランを打った時、裕也は周りが喜んでいるのを横目にスマホと睨めっこしていた。

 フリックしようとする親指が震える。何度も文字を打ち間違える。何度も何度も修正して、震える手でメッセージの「送信」をタップした。



_約束守る。

_俺も赤松が好きです。




(あーーー送ってしまったあああああああ!)

 清田の次がアウトになり、1回表は第四高校が3点先制という結果で終了した。
 そしてまた体育館は歓声が上がる。


『さあ、1年越しの決勝戦のマウンドに上がります、松田智裕です!球場も大歓声に包まれています!』
『もう高校野球ファンは待ってましたという気持ちでしょうね。』
『昨年の準決勝後に怪我をして競技から離脱、懸命にリハビリを続けてグラウンドに帰ってきました松田智裕です。』

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