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マツダくんの新しい恋
ツワブキさんとの蜜月(※)
しおりを挟む寝室にはスヤスヤと寝ている茉莉ちゃんがいる。
「あんまり声出すと、茉莉ちゃんが起きちゃうから、ね?」
「うん……。」
リビングのフローリングの上には、茉莉ちゃんの遊びスペース用にパズルマットを敷いていた。その上に、拓海をそっと押し倒す。
「と、智裕、くん……やっぱり電気、消して?」
「やだ、拓海さんの身体、よく見せてよ。」
「そんな……あっ!」
少しばかり恥じらいで抵抗する拓海の耳を食むと、拓海は身をよじる。そして舌先で細い輪郭をなぞる。自分と違ってヒゲが生えてないようなスベスベの肌。その舌先は唇を割り、遠慮なく拓海の口内へ侵入する。
「ふぅ……んん……っ。」
口内を蹂躙される拓海の吐息は段々と色が出てくる。端からは溢れ出した唾液がツーっと伝う。智裕が離れると、透明の糸が2人を繋いでいた。
「ベロ、出して?」
「はぁ……あ……。」
拓海は言われたようにおずおずとチロリと出すと、その舌を智裕が吸い付いてくる。それからまた激しいキス。拓海は自然と両腕を智裕の首に回して密着させていた。
キスを楽しみながら智裕は右手で拓海の身体を触り始めた。シャツの裾から侵入すると、肉の少ない脇腹を撫で、徐々に上へ向かい、たどり着いたのは、興奮してツンと主張する乳首。親指で優しく撫でると、拓海の体はビクッと反応する。
「ふぁ…んんん……あ…。」
「乳首、気持ちいい?」
唇を解放すると、シャツを捲り上げて拓海の上半身を露わにする。白くてなめらかな肌、予想通り細い胴体、そして潤んだ目に紅潮した頬で指を唇で食む拓海の仕草に、智裕は鳥肌を立たせた。
チュウ、とわざと音を立てて拓海の左乳首を吸い上げる。もう片方も同時にクリクリと摘む。その両方攻めに拓海は反応する。
「やぁ……あ、あぁ…ん。」
声が上がる拓海。智裕は悪戯な笑いを浮かべながら、人差し指を拓海の唇に当てる。
「ほら、声、抑えないと……茉莉ちゃん、起きるよ?」
「はぁ……あぁ……や、やだ……。」
「じゃあ、俺の指おしゃぶりする?」
拓海に当てがった人差し指は、チロチロと拓海の可愛い舌に舐められる。はむはむ、と口に含まれる。智裕は両方の乳首を再び攻めた。
「んん……ん、んぅ…。」
こもった声すら智裕にとっては最高の興奮材料だった。赤く腫れ上がりそうなまでにプックリとなった乳首を解放する。
「ぷはぁ……はぁ……とも、ひろ……くん…。」
「ねぇ、拓海さん……俺の、こんななっちゃった…。」
「うん……いいよ……キて?」
***
「ってな展開には?」
「なるわけねーだろ!」
「甘いな高梨さん、トモはまだ童貞なんだよ?」
「そーだそーだ!童貞野郎!」
「そうよ。彼女に二股され男くんがそんなにリード出来るわけがないでしょ。」
「ちぇー…。」
朝のホームルーム前、智裕のクラスの様子はおかしかった。真ん中の列の1番後ろの智裕の席にほぼクラス全員が集まっていた。中心にはもちろん智裕がいる。
智裕が登校して席に着いた途端この状況になる。まるで不倫謝罪会見をされている芸能人とレポーターのよう。
たしかに事の発端は自責でもあった。
***
昨夜、晴れて(?)恋人になった拓海と思いを伝えあい、智裕はムスコさんが若干反応し始めてもう一度、今度はディープなキスをかまそうとした瞬間だった。寝室方面からドタドタと音がして、赤ちゃんが大泣きする声が響いた。
暗闇から現れたのは、顔を真っ赤にして怒って泣いてる茉莉ちゃんだった。気がついたらパパが隣にいなくて寂しくて怒る、赤ちゃん独特の感情を露わにしていた。
「あー!ぎゃー!」
「まーちゃん、どうしましたー?はいはーい、パパが抱っこ抱っこしようねー。」
そして拓海はそのまま茉莉ちゃんと一緒に就寝してしまった。
「……拓海さん……。」
智裕は客用の布団に寝っ転がって、少し早めにアラームを設定して、すっかり鎮まったムスコに悲しみを覚えながらそのまま寝た。
「ごめんねー、昨日は何もお構い出来なくて。」
「いえいえ、ほんと助かりました。」
午前7時少し過ぎ、智裕は制服をテキトーに着て自分の家に戻る為に石蕗家をあとにしようとしていた。
「……えっと…智裕、くん……その……。」
別れが惜しいのか拓海は少しだけ俯いている。その姿も可愛らしい。
「ま、また……来ますね。」
まだ少し早い朝、今日はゴミの日でもないから廊下には誰もいない、気がして智裕は昨夜のように拓海に触れるだけのキスをした。
拓海は驚き、赤くなって、でもフワリと笑って「じゃあね。」と言って玄関のドアを閉めた。智裕は少しの余韻に浸って、自分の家に向こうとしたら、人影があった。
「おはよー。」
気の無い挨拶が智裕の脳内にズガン、と響いた。目が隠れそうな前髪にダルダルと着崩した智裕と同じ学校の制服を着た彼がその声を主だった。
「み、宮西……お、おはよ……。」
同じクラスで幼馴染でこの集合住宅(別の棟)に住んでいる宮西椋丞。常にローテンションで口数も少ない男子だった。
「………これ、届けに来た。」
宮西がポッケから取り出したのは、目の焦点があってないウサギのキーホルダーが付いた鍵。それは昨日失くしたと思われた智裕の家鍵だった。
智裕はそれを無言で渡され、これを無言で受け取る。
「えっと……。」
「じゃ、またあとで。」
「お、おう……。」
智裕は普通に終わったこのやり取りに恐怖を覚えた。スタスタとエレベーターに向かう宮西を目で追い続けていると、宮西は視線に気付いて振り返る。そして怪しく、口元でニヤリと笑う。
「ーーーーー……っ!」
恐怖で声が出ず、智裕は目の前が真っ暗になった。
滅多に笑わない宮西が笑った時は、宮西にとって面白いことが起こって発展する合図だった。
(見られてたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)
***
そして登校すると予想通りの展開だった。
意外だったのは、クラスの誰一人として軽蔑の言葉を並べないことだった。
「しっかしまさか団地妻と付き合えるとはなー。羨ましいぜこのやろー!」
「いや俺が言うのも何だけど男の人だぞこの人。」
人が離れていってもおかしくない状態なはずなのに、変わらずに揶揄われて笑って祝福されている。
「宮西くんから写真見せて貰ったけど、すっごい美人さんだしね。」
「そうそう、なんかお似合い?」
「むしろ眼福です。」
女子を中心に賞賛の声が出てくる。
「というか写真⁉︎おい!宮西!どういうことだ!」
「ん。」
智裕は近年のスマホの高性能、高画質を恨みに恨んだ。
バッチリ、今朝のお別れキッスがドラマのように撮られていた。自分のスマホを確認すると、クラスのグループ通信で既に流されていた。
「ま、松田くん……。」
「な、何?増田さん?」
クラスでは割と大人しくていつもクラスの馬鹿騒ぎを見守っている図書委員の女子、増田さんが智裕の前に立って声をかけてきた。
「おめでとう。これ、貸してあげるね。」
「あ、ありがとう……。」
渡されたものは本屋さんのビニール袋だった。中には2冊の本が入っているようだった。
智裕はそれを取り出して中身を確認する。
「……社長にご奉仕……禁断の……。」
パラ、パラ、パラ
「ああぁぁぁぁぁだあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!」
「それでいっぱい勉強してね。」
「あ、増田さん、それ今日私に貸してくれるやつじゃないの?」
「うん、ごめんね、高梨さん。」
「許す!」
高梨優里と増田琉璃、クラスで最強の腐女子コンビだった。
「おーい、今日全校朝礼らしいから行くぞー。」
今の智裕にとっては救いの掛け声。問い詰めの輪はバラバラになる。
「松田、とりあえずおめでとさん。」
「お、おう……助かったぜ、江川っち。」
クラス委員の江川くんは相変わらず爽やかスポーツマンな笑顔で智裕の背中を叩いた。
そして智裕も立ち上がって体育館に向かうことにした。
***
「えー、今日は新しい養護教諭の先生を紹介します。」
オデコの後退が激しい教頭が粛々と進行していく朝礼に多くの生徒が欠伸をしていた。もちろん智裕も例外ではない。なんだか眠気がやってくる。
ブラックミントガムよりも眠気が吹き飛ぶことなど無いと思っていた智裕は、その固定概念を失うことになった。それはクラスの全員が同じだった。
「初めまして。今日からお世話になります、養護の石蕗拓海です。未熟者ですが、よろしくお願いします。」
あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「2年5組、うるさいぞー。」
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