【R18】【BL】しょうがなく後輩騎士に手コキしてあげることになった話

サディスティックヘヴン

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前編

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「あ」
「……」

 カエントゥス王宮の中にある鍛錬場の横、男子専用シャワールームで、アトラ・カリーシャムは珍しい顔に出くわした。

 王宮の敷地内とはいえ外れにあるこんなシャワールームを使うのは、鍛錬場を使う人間だけだと思っていた。今日、最後まで鍛錬場を使っていたのはアトラひとりだったので、まさか誰かがいるなんて予想もしていなかったのだが、それは向こうも同じだったのだろう、無防備に素っ裸で立っていた。

 男だけの空間なのに神経質に身体を隠すのもおかしな話なので、アトラは普段も特に注意は払わない。自分だって脱衣所を抜けてシャワールームに入った今、素っ裸である。

 だが、ひとりきりだとリラックスしていたのに誰かと鉢合わせする気まずさは、それとはまた別だ。アトラは「しまった」と思いつつも視線はついつい下半身に行ってしまう。

(なんか勃ってるし。……わりとデカイな、コイツ)

 それも一瞬のこと。アトラは何も見なかった、気づかなかったことにして笑顔を作って話しかけた。

「あー、えっと、サザンだっけ。ごめん、誰かいるなんて思わなくてさ。すぐ使って出るから……おわっ!?」

 いきなり腕を引っ張られ、アトラは思わず大声を上げていた。騎士団員として日々鍛えているアトラだが、十九になったばかりの彼はまだまだ身体が出来上がっていない。足場が悪いこともあり、軽々とサザンのもとへ引き寄せられてしまった。

(はっ!? そんなバカなっ……)

 男の裸の胸に顔から突っ込んだのもショックだったが、油断していて踏ん張れなかったことがなおさらプライドにヒビを入れた。まさか同じ騎士団員とはいえ年下相手に力負けするとは……。

 サザンは確かアトラよりひとつ下の十八歳。身長だってまだアトラの方が五センチは高い。

 アトラが173cm58Kgと細身なのに、サザンはガッシリと骨太で、おそらく体重ではアトラが負けている。女顔とからかわれがちな自分とは違い、少年ながらワイルドな顔立ちのサザンのことを、アトラは少しだけ羨ましいと思っていた。

 この国ではまったく見ない、漆黒の髪の毛に、血色のルビーのような瞳。いつ見ても動かない鉄面皮。サザンは近寄りがたい少年だった。

 そのサザンは、パーテーションで区切られたシャワールームの一区画にアトラを引きずり込むと、耳許に小さく囁いた。

「ひとりか。それとも他に誰かいるのか」
「い、いない。俺だけだ。……っていうか冷たッ、いつからいるんだ? 何してたんだよ」

 アトラはサザンの胸を押し返し、腕をほどきながら尋ねた。今の今までシャワールームを使っていたにしては、このブースもサザン自身も冷え切っていた。

「それは……」
「とにかく、湯を出すぞ。温まれ」

 今が夏の夜だということを考えても、このままにしておいては風邪を引いてしまうだろう。気づいてしまったからには放っておけない。アトラはシャワーの栓をひねって水を出し始めた。

 すぐに身体にかけたりはせず、足元に流して温度が上がるのを待つ。その間にアトラはもう一度尋ねた。

「いつもここに来てるのか? わざわざこんな、不便なとこ」
「…………」

 拳を握りしめ俯くサザンの顔には、困惑の表情が浮かんでいた。その間もまだ、彼の陰茎は勃起し続けたままだ。

(まさか、誰かにイタズラでもされたんじゃ……)

 嫌な想像がアトラの頭の中を駆け巡る。もし、その誰かが騎士団員だったとしたら……。

「なぁ、本当に大丈夫か? 何か困ってないか? 俺で良ければ力になるぜ」

 アトラがじっとサザンの顔を覗き込むと、血色の瞳が揺れ、アトラの新緑のエメラルドの瞳を見返してきた。サザンがおもむろに口を開く。

「……それは、本当か」
「ああ。本当だ。相談された内容も、誰にも言わない。だから、何でも話してくれ」

 アトラが力強く頷くと、サザンは何度か口を開いては閉じ、その末にようやく話を切り出した。

「……身体が、熱くなっておかしいんだ。下半身が大きくなって、元に戻らない……」
「へ?」
「いつもならランニングしたり、冷水を浴びれば収まるんだが、今日は何をやってもダメなんだ……」
「そ、れは……」

 真剣な表情で己の下半身を見下ろしているサザンを前に、アトラは言葉を詰まらせた。

(それ、ただの勃起だから! 健康健全ってだけだから! ってゆーか、今までどんな教育受けてきたんだよ!)

 思いっきり心の中で突っ込んでから、逆にそれが正しい性教育を受けていないせいではないかという考えに思い至る。

 アトラは、「とにかくまずは温まろう」とサザンにシャワーのお湯をかけていった。そして、言葉を選びながら切り出した。

「サザンのソレはさ、勃起って言って、健康な男子なら誰でもなる生理現象だぜ。これまでも、軽いものならあったんだろ?」
「…………」

 無言で頷くサザン。

「今までのやり方じゃ収まらなかったんだよな。冷水もアリっちゃアリだけど、ひとりきりになれるなら、手で扱いて抜いちゃうのが早いぞ」
「手で? ……抜く?」
「そうだよ。精巣が精子を作ってて、それが外に出たがってるんだから、出してやれば収まる。……こういうこと、誰にも相談してこなかったのか?」
「……アルは、こういう風にはならないだろうから」
「いやいや! そんなバカな……」

 アトラは、サザンと同時に入隊したという彼の幼馴染みの少年の顔を思い浮かべた。ほんわかした笑顔が印象的な、確かに性欲とは無縁そうな穏やかな少年だ。だが、まさかそんな、彼だって普通の人間だろうに。

「でも、そっか、それで言い出せなかったんだな。……つらかったろうな」
「……別に。なぁ、どうすればいいのか、詳しいなら教えてくれないか」
「やめろよ、別に詳しいってわけじゃない」

 アトラは思わず赤面していた。こういうのは常識であって、アトラがその手の知識にものすごく詳しいわけではない。そういう言い方はまるで、アトラがそういうことに興味津々みたいではないか!

「だが、お前はやり方を知っているんだろう?」
「知ってるよ。でも、オレ以外だって誰でも知ってる」
「……俺は知らない」
「ああ、もうっ! 握って動かせばいいだけだから!」
「…………」

 それでもまだ戸惑い動けずにいるサザン。アトラはもどかしさに身じろぎした。必要な時期にこういった大切な知識も、適切な処理も教わってこなかったサザンのことを不憫に思う。

 今でも勃起が収まっていないのだ。話を聞くに、長時間この状態のはずだ。

「~~~~! わかった、ちょっとじっとしてろ」
「……?」
「シャワー、止めて。足、開け。あ……その、そこの椅子使え、そこに座って」
「……わかった」

 アトラは自分に言い聞かせた。

(これはただの処理。人助けなんだ。何も考えるな、オレ……!)

 備え付けの石鹸を手に取り泡立てながら、アトラはサザンの前に跪いた。
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