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Don't touch me !
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朝が来た。
気だるさを追い払うように首を振って起き上がる。昨晩はあまりよく眠れなかった。別に、夜這いされるんじゃないかとビクビクしていたわけじゃないよ。施錠した上で黒術まで使って、物理的にも魔術的にも守られていたんだから。
眠れなかったのは、これからのことを考えていたせいだ。ダントン様は僕のことをお金が大好きなやつだと思っている。それは実際に正しいし、否定するつもりはない。問題なのは、僕がお金のために体を売っているのだと勘違いされていることだ。
そりゃあね、男ばかりの職場だもの、そういう欲求を、性の捌け口を、同性だと知りながらも求めてしまうことはある。そして、それを受け入れる側に回る男だっている。
でも、僕は違う! 僕はただ、そういうことにしておいた方が面倒ごとを避けられるかと思って言っただけだったんだ。何度も何度も断るより、「アウグスト様よりも多く支払ってくれる?」と聞けば、大人しく辞退する奴の方が多いってだけの話だったのに……。
そりゃ、そのうちそうやってからかうのが楽しくって、調子に乗っちゃったことは認めるよ。
だけど。
首にかかったペンダントを眺めているとため息が出る。何とかしなくちゃいけない。何とか、しなくちゃ……。このままじゃ僕の貞操が危ない!!
僕に望まれている役割は、ダントン様に気に入られて情報提供や協力体制を築き上げること。そのためにも、この金のペンダントを返すわけにはいかないし、かといって抱かれるつもりもない。あと六日間、はぐらかすでも騙くらかすでもして、どうにかして乗りきろう。
と、決意を新たにした僕は、朝食のために意気揚々と一階に降りていった。のだけれど。なぜか今、不機嫌なダントン様によって壁際に追い詰められているというわけ。
「なんで、昨日来なかった?」
「えっと……」
「ずっと待ってたんだぞ、ん?」
「あはは……」
心なしか顔色が悪く目の下に隈が出来てしまっている。「無理すると年齢って如実に表れるよね、顔に」なんて、言ったら絶対に怒られるような台詞しか浮かんでこない。笑って誤魔化してみても、ダントン様の目は険しくなるばかりだ。マズイ。
「こ、心の準備がまだできてなくて……ごめんなさい!」
僕は、仕事でバカな貴族を騙すときの、とっておきの恥じらい顔で謝った。
「ふぅん?」
丸っきり信じていない表情と声音だ。居心地の悪さについつい視線を逸らしてしまう。ダントン様の人差し指が、僕の心臓をトンと突いた。
「じゃあ、覚悟ができたら来いよ。できるだけ早く、な」
「………………」
その指はそのままツーッと僕の腹筋をなぞってベルトで止まった。そのくすぐったさと下半身を指し示されているような手の位置に羞恥心が込み上げてくる。
「あんまり待たせると、オレの方から取り立てに行くぜ、ハリー」
耳許で言葉を吹き込まれて、僕の体は震えた。きっと恐怖からだ、そうに違いない。だというのに、顔の火照りがしばらく取れなかった。
朝食を終えたらさっそく仕事、といきたいところだけれど、そういうわけにはいかなかった。何と言っても、この屋敷には使用人がいないんだもの! まさか全部をダントン様に任せられないでしょう? 僕だって働きますよ!
お皿洗いに掃除に洗濯、そしてお茶。ゆったりと昼食を摂って食後にお茶を飲んだら書類仕事を少しして。そろそろ洗濯物が乾いているから取り込んで畳んであるべき場所へ戻す。それが済んだら夕食の仕込み。届いた食材をチェックしてサインして、戸棚に入れて。そしてお茶。
「なぁ、オレたち新婚夫婦みたいだよな?」
「ぜんっぜん! ありえませんけど!?」
カップを顔の位置まで引き上げて同意を求めてくるダントン様。そのニヤついた頬、はっ倒してやりたい!!!
ひとりよりも二人の方が作業が捗ると、確かに一緒に行動したよ? でも、ことあるごとにシャツの中に突っ込まれる手や、お尻を撫でたり揉んできたりする手を叩いていたから、効率は逆に落ちている気がするよ!
「もう、いい加減にしてくださいよね! 僕の邪魔ばかりして……それに、体を触るのもダメです! 別料金取りますよ!!」
「へぇ。つまり、払えばいいわけだな?」
「えっ! ちょ、ちょっと待って、今のは言葉の綾でぇっ……!」
逃げる前に唇が覆い被さってきた。今日はまだソーマの香りはしない。でも、ぬろぬろと舐め上げられると、すぐに意識がもっていかれそうになる。
「んっ……ふぁ、待って……」
「ハリー。相変わらずキスが巧いな……可愛いがってやる……」
「あっ……」
野菜を入れた保存箱の上に座らされると、僕のシャツとベストはあっという間にはだけられてしまった。露出した胸に揺れるのはこどもの指くらいある細長い金の棒。彼と僕の契約の証。
彼の大きな手が僕の肋骨が浮き出た肌を優しく撫でると、思わず上擦った声が出てしまう。その熱さがゆるゆると上下するのが心地好くて少しくすぐったい。ダントン様なら真っ先に敏感な場所に触れてくるものと思っていたのに、その愛撫は予想に反してとても紳士的だった。
「ひゃあっ! ちょ、んんう……!」
耳朶を甘くかじられて体が震えた。優しく抱き寄せられたかと思えば、長い指が僕の口の中に突っ込まれる。
「ふぁ……んっ……ああっ……!」
右手で乳首を捏ね回されて、左手の指は僕の口内に埋められている。傷つけないようにゆっくりと、舌を弄んで奥歯をなぞって。大きく開かされた口。あふれる唾液が顎の下まで滴って、すごく……えっちな気分になってくる。
その間にもダントン様の舌が僕の耳の中まで侵入してきて、水音を立てながら出し入れを繰り返す。荒くなっていく吐息を受け止めながら、僕もまた下半身が熱を帯びていくのを自覚していた。
「……そろそろ、いいだろ。ほら、下脱げよ、慣らしてやるから」
「んあっ……ふぇえ?」
さっきまで夢中で舐めていた指を引き抜かれて、僕は間抜けな声を上げていた。少し苦しいくらいの圧迫感だったのに、無くなるとひどく口寂しくて……もっと長く咥えていたかったとさえ思ってしまう。それと同時に、熱くて固いモノをお尻に押し付けられてようやく自分の置かれている状況に気がついた。
「ちょ、ちょっと待って、これ以上はダメ……」
「なんだ、ベッドでヤる方が好きか? 後でちゃんとしてやるから、今はそこの台に手ぇついてこっちに尻向けろ。大丈夫、 すぐ済むって」
「や、やだぁ!」
「あぁン?」
「待って……ダントン様……」
一瞬、低い声で威嚇されたとき、本当にこのまま無理やり犯られちゃうんじゃないかと思った。でも、僕の言葉を聞き入れて、ダントン様は止まってくれた。ほんのちょっとだけ、このまま流されてもいいかもって思ったけど……でも、やっぱり初めてのことだから怖かった。抱かれてしまえば、もうこのひとに、しつこくつきまとわれることはないだろう。けど、きっと元の僕には戻れない、そんな気がして……。
僕は息を整えて、表情に余裕を作った。
「……そんなにがっつかないでよ。もっとゆっくり、じっくり楽しもうよ、ね? だから、今はダメ。お預け、だよ」
「なるほど。さすが上級者だな。じゃあそのテクニック、見せてもらおうじゃねぇか」
「キスだけ、ね……」
「おう、こっちにな」
「ひぇっ!?」
ダントン様は自身のいきり立ったモノを取り出して僕の鼻先に突きつけてきた。まさか……まさか僕に口でしろって言うの……!?
「あの、あ……むむぅ!」
「おっ、温かくて気持ち好いな。舌使いも巧いし。そのまま手も使って頼むぜ」
拒否する前に突っ込まれ、頭も掴まえられちゃった。舌で押し返そうとするのにそれを抵抗とすら思ってもらえない。仕方なく抽送に合わせて根本でゆるく握った指を前後させた。
「くっ……いいぞ、そのまま少しキツめに……吸ってくれ……」
「………………」
「ハリー……ハリー、もう……っ!」
「っ!? んっむぐぅっ! ~~~っ!!」
まさかまさかと思ってたら、本当に口の中に出しやがった! しかも吐き出せないようにわざわざ奥で……!
苦しさに涙が浮かぶ。味なんて感じなかったけど、精液を飲んでしまったというショックに咳き込んだ。
「好かったぜ、ハリー。下の口の方も早く解禁してくれよな。そうしたら、あの、指の太さぐらいある金の棒を玩具がわりに挿れてやるぜ? ははは!」
最っっ低!!!
気だるさを追い払うように首を振って起き上がる。昨晩はあまりよく眠れなかった。別に、夜這いされるんじゃないかとビクビクしていたわけじゃないよ。施錠した上で黒術まで使って、物理的にも魔術的にも守られていたんだから。
眠れなかったのは、これからのことを考えていたせいだ。ダントン様は僕のことをお金が大好きなやつだと思っている。それは実際に正しいし、否定するつもりはない。問題なのは、僕がお金のために体を売っているのだと勘違いされていることだ。
そりゃあね、男ばかりの職場だもの、そういう欲求を、性の捌け口を、同性だと知りながらも求めてしまうことはある。そして、それを受け入れる側に回る男だっている。
でも、僕は違う! 僕はただ、そういうことにしておいた方が面倒ごとを避けられるかと思って言っただけだったんだ。何度も何度も断るより、「アウグスト様よりも多く支払ってくれる?」と聞けば、大人しく辞退する奴の方が多いってだけの話だったのに……。
そりゃ、そのうちそうやってからかうのが楽しくって、調子に乗っちゃったことは認めるよ。
だけど。
首にかかったペンダントを眺めているとため息が出る。何とかしなくちゃいけない。何とか、しなくちゃ……。このままじゃ僕の貞操が危ない!!
僕に望まれている役割は、ダントン様に気に入られて情報提供や協力体制を築き上げること。そのためにも、この金のペンダントを返すわけにはいかないし、かといって抱かれるつもりもない。あと六日間、はぐらかすでも騙くらかすでもして、どうにかして乗りきろう。
と、決意を新たにした僕は、朝食のために意気揚々と一階に降りていった。のだけれど。なぜか今、不機嫌なダントン様によって壁際に追い詰められているというわけ。
「なんで、昨日来なかった?」
「えっと……」
「ずっと待ってたんだぞ、ん?」
「あはは……」
心なしか顔色が悪く目の下に隈が出来てしまっている。「無理すると年齢って如実に表れるよね、顔に」なんて、言ったら絶対に怒られるような台詞しか浮かんでこない。笑って誤魔化してみても、ダントン様の目は険しくなるばかりだ。マズイ。
「こ、心の準備がまだできてなくて……ごめんなさい!」
僕は、仕事でバカな貴族を騙すときの、とっておきの恥じらい顔で謝った。
「ふぅん?」
丸っきり信じていない表情と声音だ。居心地の悪さについつい視線を逸らしてしまう。ダントン様の人差し指が、僕の心臓をトンと突いた。
「じゃあ、覚悟ができたら来いよ。できるだけ早く、な」
「………………」
その指はそのままツーッと僕の腹筋をなぞってベルトで止まった。そのくすぐったさと下半身を指し示されているような手の位置に羞恥心が込み上げてくる。
「あんまり待たせると、オレの方から取り立てに行くぜ、ハリー」
耳許で言葉を吹き込まれて、僕の体は震えた。きっと恐怖からだ、そうに違いない。だというのに、顔の火照りがしばらく取れなかった。
朝食を終えたらさっそく仕事、といきたいところだけれど、そういうわけにはいかなかった。何と言っても、この屋敷には使用人がいないんだもの! まさか全部をダントン様に任せられないでしょう? 僕だって働きますよ!
お皿洗いに掃除に洗濯、そしてお茶。ゆったりと昼食を摂って食後にお茶を飲んだら書類仕事を少しして。そろそろ洗濯物が乾いているから取り込んで畳んであるべき場所へ戻す。それが済んだら夕食の仕込み。届いた食材をチェックしてサインして、戸棚に入れて。そしてお茶。
「なぁ、オレたち新婚夫婦みたいだよな?」
「ぜんっぜん! ありえませんけど!?」
カップを顔の位置まで引き上げて同意を求めてくるダントン様。そのニヤついた頬、はっ倒してやりたい!!!
ひとりよりも二人の方が作業が捗ると、確かに一緒に行動したよ? でも、ことあるごとにシャツの中に突っ込まれる手や、お尻を撫でたり揉んできたりする手を叩いていたから、効率は逆に落ちている気がするよ!
「もう、いい加減にしてくださいよね! 僕の邪魔ばかりして……それに、体を触るのもダメです! 別料金取りますよ!!」
「へぇ。つまり、払えばいいわけだな?」
「えっ! ちょ、ちょっと待って、今のは言葉の綾でぇっ……!」
逃げる前に唇が覆い被さってきた。今日はまだソーマの香りはしない。でも、ぬろぬろと舐め上げられると、すぐに意識がもっていかれそうになる。
「んっ……ふぁ、待って……」
「ハリー。相変わらずキスが巧いな……可愛いがってやる……」
「あっ……」
野菜を入れた保存箱の上に座らされると、僕のシャツとベストはあっという間にはだけられてしまった。露出した胸に揺れるのはこどもの指くらいある細長い金の棒。彼と僕の契約の証。
彼の大きな手が僕の肋骨が浮き出た肌を優しく撫でると、思わず上擦った声が出てしまう。その熱さがゆるゆると上下するのが心地好くて少しくすぐったい。ダントン様なら真っ先に敏感な場所に触れてくるものと思っていたのに、その愛撫は予想に反してとても紳士的だった。
「ひゃあっ! ちょ、んんう……!」
耳朶を甘くかじられて体が震えた。優しく抱き寄せられたかと思えば、長い指が僕の口の中に突っ込まれる。
「ふぁ……んっ……ああっ……!」
右手で乳首を捏ね回されて、左手の指は僕の口内に埋められている。傷つけないようにゆっくりと、舌を弄んで奥歯をなぞって。大きく開かされた口。あふれる唾液が顎の下まで滴って、すごく……えっちな気分になってくる。
その間にもダントン様の舌が僕の耳の中まで侵入してきて、水音を立てながら出し入れを繰り返す。荒くなっていく吐息を受け止めながら、僕もまた下半身が熱を帯びていくのを自覚していた。
「……そろそろ、いいだろ。ほら、下脱げよ、慣らしてやるから」
「んあっ……ふぇえ?」
さっきまで夢中で舐めていた指を引き抜かれて、僕は間抜けな声を上げていた。少し苦しいくらいの圧迫感だったのに、無くなるとひどく口寂しくて……もっと長く咥えていたかったとさえ思ってしまう。それと同時に、熱くて固いモノをお尻に押し付けられてようやく自分の置かれている状況に気がついた。
「ちょ、ちょっと待って、これ以上はダメ……」
「なんだ、ベッドでヤる方が好きか? 後でちゃんとしてやるから、今はそこの台に手ぇついてこっちに尻向けろ。大丈夫、 すぐ済むって」
「や、やだぁ!」
「あぁン?」
「待って……ダントン様……」
一瞬、低い声で威嚇されたとき、本当にこのまま無理やり犯られちゃうんじゃないかと思った。でも、僕の言葉を聞き入れて、ダントン様は止まってくれた。ほんのちょっとだけ、このまま流されてもいいかもって思ったけど……でも、やっぱり初めてのことだから怖かった。抱かれてしまえば、もうこのひとに、しつこくつきまとわれることはないだろう。けど、きっと元の僕には戻れない、そんな気がして……。
僕は息を整えて、表情に余裕を作った。
「……そんなにがっつかないでよ。もっとゆっくり、じっくり楽しもうよ、ね? だから、今はダメ。お預け、だよ」
「なるほど。さすが上級者だな。じゃあそのテクニック、見せてもらおうじゃねぇか」
「キスだけ、ね……」
「おう、こっちにな」
「ひぇっ!?」
ダントン様は自身のいきり立ったモノを取り出して僕の鼻先に突きつけてきた。まさか……まさか僕に口でしろって言うの……!?
「あの、あ……むむぅ!」
「おっ、温かくて気持ち好いな。舌使いも巧いし。そのまま手も使って頼むぜ」
拒否する前に突っ込まれ、頭も掴まえられちゃった。舌で押し返そうとするのにそれを抵抗とすら思ってもらえない。仕方なく抽送に合わせて根本でゆるく握った指を前後させた。
「くっ……いいぞ、そのまま少しキツめに……吸ってくれ……」
「………………」
「ハリー……ハリー、もう……っ!」
「っ!? んっむぐぅっ! ~~~っ!!」
まさかまさかと思ってたら、本当に口の中に出しやがった! しかも吐き出せないようにわざわざ奥で……!
苦しさに涙が浮かぶ。味なんて感じなかったけど、精液を飲んでしまったというショックに咳き込んだ。
「好かったぜ、ハリー。下の口の方も早く解禁してくれよな。そうしたら、あの、指の太さぐらいある金の棒を玩具がわりに挿れてやるぜ? ははは!」
最っっ低!!!
応援ありがとうございます!
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