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第11章「四聖獣ポセラドル」

未知との遭遇

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 †


 センテバは後を追ってこなかった。安堵と同時に、どこか少し寂しさを感じた。
 どうしよう。結局ポセラドルの居場所は分からなかった。自分で探すしかない。頼りの綱の従者もいない。
 まさかティーサラがマケマノだったなんて。まんまと騙された自分が情けない。
 また独りぼっちになった。教会に戻らず、みんなと探した方が良かったのではないか。
 第一、このまま先に進んでも外に出られるかどうか。迷路に迷い込んだのではないか。
 元来た道に戻ろうか。でも、またセンテバに会ってしまう。それなら、このまま先に進んだ方が良い。

(何だろう)

 騒々しい音が聞こえる。以前に聞いた――クロボルのアジトで聞いた剣戟けんげきである。耳をつんざかんばかりに金属が激しくぶつかり合う。近づけば近づく程、音がくっきりと明らかになる。戻ろうか。でも、戻ったらセンテバがいる。

(イチ、ニイ、ヨン??)

 階段の上で待っているはずの従者がなぜか武器を構えて、激しく取っ組み合っている。イチの握った剣に、ニイの矛が突き、ヨンが杖先から火柱を上げて蹴散らす。ポセラドルと戦った時のように無言で、ただひたすら。従者同士がなぜ。

(このまま見ないふりをすれば、巻き込まれずに済むかも)

 幸い矛先は自分には向いていない。きっと何かの意見の食い違いがあって、喧嘩しているかもしれない。頭を冷やして、いつか収まってくれるはず。抜き足差し足で通り過ぎよう。

「面白いじゃないか、戦わせているんだよ」

 またもや聞きたくない声がした。今度はセンテバではない。
 どこが面白いって言うの。

「どうして、あんたが。従者は私の言葉しか聞かないのに」

 三人から少し離れた所で、イルがあぐらをかいて戦いを見物している。一昨日は追いつけなかったのに、まるで待ち構えていたと言わんばかりに。

「最後の一人が力尽きるまで戦う。いや、力は互角だから、相討ちになって終わるか。優劣が出ないように造られている」
「つくられているって……ありえない。どうしてそんなこと知っているの?」
「マケマノが言っていたのさ。お前もついさっきまで話していただろ」

 ティーサラに化けていたことまで知っている。影から覗き見て、ほくそ笑んでいたに違いない。

「おやおや、私と話している暇なんてあるのかい」

 ヨンが杖を取り落としたところに、背後からニイの突きが迫る。その後を追うようにして、イチが忍び寄る。

「みんな、やめて!」

 いくら私と顔が似ているからって、見間違えるわけがない。
 従者は武器を構えたまま、嘘のように静止した。物音一つ立てず、静寂が支配する。

「戦え」

 再び打ち合いが始まる。にこりとも、顔を歪めもせず、あいつは無表情のまま見つめている。

「戦わないで!」
「やれ」
「やっちゃだめ!」

 ヨンの魔法かどうか定かではないが、いきなり従者の体から閃光が飛び散った。
 困惑してその場から逃げ出すのではなく、三人とも直立したまま動かなくなった。石像のように瞬き一つせず、微動だにしない。イルが小突くと、棒倒しの如く垂直に突っ伏した。

「何てことしたの! イチ、ニイ、ヨン……死なないで」

 未知は駆け寄り、一人ずつ体をさすって声をかけた。

「私が命令しているから、やめろと止める。随分と虫が良いじゃないか。私が声をかけなければ、素知らぬふりをして通り過ぎていたくせに。こんな人間だかロボットだか分からない連中に情が移ったのかい? たった数日の付き合いも仲間と呼ぶのかい?」
「数日でも仲間だよ!」
「お前が言えた義理かい? 今までずっと一緒に旅してきた仲間もしれっと捨てるくせに」
「捨ててなんかいない」
「仲直りするチャンスは何度もあったじゃないか。拒否しないで一緒に来ることだってできたし、街中でごめんと謝ることだってできた。おまけに、さっきもマケマノが化けていたと親切に教えてくれたじゃないか。後を追ってこないのは、おまえのために時間稼ぎしてくれているのに。それなのに加勢すらしなかった」

 奴らと違い、従者はお前にとって都合の良い仲間。命令すれば、必ず答えてくれる。口答えしないし、励ましてくれるし、慰めてもくれる。三人一括りで呼べば良いし、何よりもお前が加われば四人になる。奇数なら一人余るが、偶数なら二人ずつに分けられ、残りの一人――自分が会話に加われない心配がない。
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