めろめろ☆れしぴ 1st

11. めろめろの視線

朝、教室で、
廊下側の席から、
窓際の席のオレのトコまで強い視線が刺さってきた。
まっすぐに。
目があって、
どきっ、と心臓がなった。
でも、オレは、
歯を強く噛んで、身体に力をいれて、
視線をふりほどく。

「宇佐見ー、マジ、顔ねむそー」

無理やりずらした目線の先の友だちに、かるい口調で話しかけた。

「つーか、眠いし」

眠そうな声の宇佐見。
ゆるーくパーマをかけてる宇佐見の紅茶色の髪が、窓からの風にゆれている。

「何やってたんだよ、ゆうべ？」

これまた友だちの松下がつっこむ。

「あー、ガッコじゃ言えないコト？」

「なんだソレ？　なんで疑問系？」

いつもの朝、いつもみたいな教室での友だちとの会話。
朝のバカな会話と明るい笑いは、一日の始まりのウォーミングアップには、丁度よくて、
なのに、今日は、
オレの心臓は、変にたかぶってて、
身体は、緊張にかたまってゆく。


いーんちょーがオレのこと見てるから。


いつもの朝とは違う、
熱い瞳で、
オレを狩ろうとしている、から。








放課後になっていっしょに帰ってたら、

「今日は、うまく逃げたよね」

って言われた。
ぎくっ。

「な、なんのこと？」

「ふーん。別にいいけど」

今日一日、山下や宇佐見にべったりとくっついてて絶対ひとりにならないようにして、
絶対、いーんちょーのそばに行かないようにしてた。
だって、そうしないと、
どっかに連れていかれてしまう。
そして、きっとそこで、してくるから、・・・・・・。
今日は、ずっといーんちょーに視線で追われてた。
なんにもされてないのに、身体がへんな感じだった。
見られてるだけなのに、身体がうずいて、いーんちょーのところへふらふらっと行きそうになった。抱きついて、さわってって、言いそうになった。
だから、なるべく、いーんちょーの席がある窓際の方も見ないようにした。
ガッコーで、したくないし　――――。
・・・した、こともあるけど。したあと頭はぼーっとなるし、身体はぐずぐずにとろけてるみたいになってるし、で全然授業どころじゃないから。
それに、別んときに、した場所の前を通ると、その時のことを思い出して、すごい恥ずかしくなる。
いーんちょーは、そーいうのはないのかな、って思って、ちらっと隣を見上げると、

「今日はしつこいかもね」

ニコって、いーんちょーが、・・・ニコって笑った　――――　。
これから、いーんちょーの家に行くんだけど・・・。

「へ、へんなことはナシだから」

「変なことって？」

なんで、あんなヤらしげなこと言ったすぐそのあとに、こんなに、ふつーにクールな顔ができるんだ？

「このまえ、みたいな　――――、」

そこまで言って、この前のこと、思い出して、顔があつくなる。

「キミがイヤだと言うんなら、しないよ。いつも、そうだろう？」

シテ、みたいなこと言わせるくせに！！

「ホントだからね。絶対だからね。オレ、イヤって言うから、しないでよね！」

「まぁ、頑張ってみて」

そう言って、いーんちょーがオレの頭に軽く手をおいた。
おいた手が、髪の毛の中に入ってきて、頭皮を５本の指が撫でていった。
ただそれだけなのに、
ゾクソクってして、
なんだか、今日も、最後までイヤって言えないような予感がしたけど、

「絶対に、言うから！」

って言いながら、いーんちょーの隣を歩いていった。






（　おわり　）