めろめろ☆れしぴ 1st

ヒイラギ

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1.めろめろの法則

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「いーんちょーーーー」

ダっ、と駆け寄ろうとしたら、
ぱっこん、と消しゴムが飛んできた。
うっわ、すっごい、コントロール!

「痛いんだけどぉ」

甘えてみました。
額をすりすりしながら。
オレのいちおーのカレシを見上げてみたけれど、

「早くしてくれる?」

かえってきたのはそんな、言葉。
・・ねぇ、オレのこと、―――― ちょっとは、好き?








高校に入学して初めて見たときから、すごい、好きで、
2年になって同じクラスになれた勢いで、
放課後の他に誰もいない教室で、

「つきあって」

と言ったら、

「キミとつきあうメリットは?」

冷たい声で、即、返されて。

「えーと、えーと、えーと。つ、つくします!」

「ふーん。・・・・・・、いいけど」

OKなんだか、NOなんだか微妙な返事だったけど、恋する一念で「OK」したことにして、既成事実を先につくった。
足がつりそうなくらい、伸び上がって、
ちう。
マウスツーマウスは、うちのネコにゃんで練習ずみ。

「よろしくな、オレのカレシ!」

ばんばんって、いーんちょーの肩を叩いて、めでたく交際開始!




だったはずなのに・・・。

「なんでオレ、ホッチ留めやってんの」

いーんちょーは、5月にある合宿のしおりを持ってきて、置いていって、どこかへ行った。

「まさか、帰ってたり」

はぁ、

「・・・・・・するよな」

いーけど、
いーけど、
しょうがない。
同じクラスのクラス委員長。とても高校2年生には見えない落ち着き振りで、クラスをまとめている。
ちょっと、表情が冷たいけれど、とってもかっこよくて、それで、たまに笑ったりすると、ちょっと幼い感じになる。
めちゃめちゃ好きで、でも、友だちには止められて、
でも、やっぱ我慢できなくて、
好き、って言ったら、

「ふーん」

で、おわり。
一晩ブルーのどん底に落ちたけど、おひさまが登って、また復活!!
今度は直球、つきあって、と言ったのに。ビミョーな返事だったし。
それに、放課後には連日雑用ばかり言いつけられて、・・・。
それでも、いいけど、一緒にいられるんなら、いいけど、さ。
いーんちょーは、すぐにどこかへ行ってしまう。
放課後の教室で一人淋しく、ホッチ留めたり、切り張りしたり、アンケート集計したり。
で、いっつも、いーんちょーはオレが仕事が終わった頃に、戻ってきて、
そんで、一緒に帰れるーとか思ったら、

「じゃあね」

で、終わり。
お、オレって弄ばれてる!???
の、かもね ――――。
トントンと、ホッチで綴じたしおりの背を合わせて、クラスの人数ごとにまとめて、輪ゴムでくくって、ダンボール箱に戻した。
小ダンボール箱二つ分。
いーんちょーは何も言わなかったけど、きっと、職員室の担任のとこにもっていくんだろう、と予測して、

「ヨイショ」

と持ち上げる。
紙類がつまってて結構重いけど、持てなくもない。
小柄で「ちびちび」言われてるオレだけど、わりと力はあるのだ。
ちょいふらつくが、いけそう。
廊下をあるいて階段おりて、渡り廊下を通って、隣の校舎に行って、また階段下りて、廊下をまっすぐあるいたところにある職員室まで、
行けなくもなさそう。
二往復、がんばろう。

「どこに行くんだい?」

おまえは、怪人か?
ってな具合に、いーんちょーが音もなく現れた。

「えっと、終わったから、職員室に、」

「ホッチキスで留めたからって終わりじゃないんだけど」

「でも、それしか言わなかったじゃん」

あんまし、ばーかって感じで言うからつい口答え。
・・・・・・どーしよ、可愛くないやつって、思われたら。

「冊数チェックして、」

「したよ」

「クラスの人数分ふりわけて、」

「それもした」

「クラスごとにまとめる」

「やったってバ」

「―――― 誰にしてもらった?」

はぁ、なにそれ?

「いるだろう。いつも、キミにひっついてチヤホヤしてるオトモダチが」

えっ?!

「・・・・・・・・・、あー、ナニそれ」

うわっ、やば、
泣きそう。

「いーんちょうってば、オレのことそんなふうに思ってたんだ!」

ダンって、手に持ってたダンボール箱を、乱暴に机の上に置いた。
ちょっぴり空回りがちなオレは、
友だちからは、よく、からかわれたりしてるけど、チヤホヤなんか、されてない。
いーよ、もう、いーよ。
いろいろ、雑用おしつけられて、ぶーぶー言ってたけど、ほんとはちょっぴり嬉しかったんだ。
ちゃんと、言われたこときちんとやってるから、いーんちょはオレに言ってきてんだって思ってた。
けど。
・・・・・・オレってば、頼まれた仕事を他の奴にまわすような人間だって、思われてたんだ。
悔しい。バカにされてたのに、オレいい気になってタ ――――。
結局、オレ、いーんちょーに、からわられてただけなんだ。
ぱっと背を向けて、盛り上がってきそうな涙をかくす。
手早く、自分の荷物を持って、いーんちょーが入ってきた後ろのドアは、避けて前のドアに向かった。

「も、帰るから」

ちっさい声で、言う。
いーんちょーに二回も振られちゃったよ。
今日も、ネコにゃんに慰めてもらおう・・・。
けど、
すん、と鼻をすすりながら、
ガラガラって開けたドアの前にはいーんちょーが立ってて、

「職員室に持っていくの手伝ってくれるよね?」

って、足元のダンボールをヒョイって渡された。
い、いつのまに? ってか、お、重い!
ヨロってしながらも、受け取ると、

「今日は一緒に帰ってあげようか?」

って、言われた。
なにそれーなにそれー。
ムカッてしたはずなのに、
オレは、

「うん」って頷いてた。


だって、しょうがない。


「オレ、いーんちょーに、めろめろ、なんだからな」

言ってやったのに、

「ふーん」

って鼻で笑われた。





( おわり )






はっ、名前もない・・・人たち。

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