1 / 19
1.めろめろの法則
しおりを挟む「いーんちょーーーー」
ダっ、と駆け寄ろうとしたら、
ぱっこん、と消しゴムが飛んできた。
うっわ、すっごい、コントロール!
「痛いんだけどぉ」
甘えてみました。
額をすりすりしながら。
オレのいちおーのカレシを見上げてみたけれど、
「早くしてくれる?」
かえってきたのはそんな、言葉。
・・ねぇ、オレのこと、―――― ちょっとは、好き?
高校に入学して初めて見たときから、すごい、好きで、
2年になって同じクラスになれた勢いで、
放課後の他に誰もいない教室で、
「つきあって」
と言ったら、
「キミとつきあうメリットは?」
冷たい声で、即、返されて。
「えーと、えーと、えーと。つ、つくします!」
「ふーん。・・・・・・、いいけど」
OKなんだか、NOなんだか微妙な返事だったけど、恋する一念で「OK」したことにして、既成事実を先につくった。
足がつりそうなくらい、伸び上がって、
ちう。
マウスツーマウスは、うちのネコにゃんで練習ずみ。
「よろしくな、オレのカレシ!」
ばんばんって、いーんちょーの肩を叩いて、めでたく交際開始!
だったはずなのに・・・。
「なんでオレ、ホッチ留めやってんの」
いーんちょーは、5月にある合宿のしおりを持ってきて、置いていって、どこかへ行った。
「まさか、帰ってたり」
はぁ、
「・・・・・・するよな」
いーけど、
いーけど、
しょうがない。
同じクラスのクラス委員長。とても高校2年生には見えない落ち着き振りで、クラスをまとめている。
ちょっと、表情が冷たいけれど、とってもかっこよくて、それで、たまに笑ったりすると、ちょっと幼い感じになる。
めちゃめちゃ好きで、でも、友だちには止められて、
でも、やっぱ我慢できなくて、
好き、って言ったら、
「ふーん」
で、おわり。
一晩ブルーのどん底に落ちたけど、おひさまが登って、また復活!!
今度は直球、つきあって、と言ったのに。ビミョーな返事だったし。
それに、放課後には連日雑用ばかり言いつけられて、・・・。
それでも、いいけど、一緒にいられるんなら、いいけど、さ。
いーんちょーは、すぐにどこかへ行ってしまう。
放課後の教室で一人淋しく、ホッチ留めたり、切り張りしたり、アンケート集計したり。
で、いっつも、いーんちょーはオレが仕事が終わった頃に、戻ってきて、
そんで、一緒に帰れるーとか思ったら、
「じゃあね」
で、終わり。
お、オレって弄ばれてる!???
の、かもね ――――。
トントンと、ホッチで綴じたしおりの背を合わせて、クラスの人数ごとにまとめて、輪ゴムでくくって、ダンボール箱に戻した。
小ダンボール箱二つ分。
いーんちょーは何も言わなかったけど、きっと、職員室の担任のとこにもっていくんだろう、と予測して、
「ヨイショ」
と持ち上げる。
紙類がつまってて結構重いけど、持てなくもない。
小柄で「ちびちび」言われてるオレだけど、わりと力はあるのだ。
ちょいふらつくが、いけそう。
廊下をあるいて階段おりて、渡り廊下を通って、隣の校舎に行って、また階段下りて、廊下をまっすぐあるいたところにある職員室まで、
行けなくもなさそう。
二往復、がんばろう。
「どこに行くんだい?」
おまえは、怪人か?
ってな具合に、いーんちょーが音もなく現れた。
「えっと、終わったから、職員室に、」
「ホッチキスで留めたからって終わりじゃないんだけど」
「でも、それしか言わなかったじゃん」
あんまし、ばーかって感じで言うからつい口答え。
・・・・・・どーしよ、可愛くないやつって、思われたら。
「冊数チェックして、」
「したよ」
「クラスの人数分ふりわけて、」
「それもした」
「クラスごとにまとめる」
「やったってバ」
「―――― 誰にしてもらった?」
はぁ、なにそれ?
「いるだろう。いつも、キミにひっついてチヤホヤしてるオトモダチが」
えっ?!
「・・・・・・・・・、あー、ナニそれ」
うわっ、やば、
泣きそう。
「いーんちょうってば、オレのことそんなふうに思ってたんだ!」
ダンって、手に持ってたダンボール箱を、乱暴に机の上に置いた。
ちょっぴり空回りがちなオレは、
友だちからは、よく、からかわれたりしてるけど、チヤホヤなんか、されてない。
いーよ、もう、いーよ。
いろいろ、雑用おしつけられて、ぶーぶー言ってたけど、ほんとはちょっぴり嬉しかったんだ。
ちゃんと、言われたこときちんとやってるから、いーんちょはオレに言ってきてんだって思ってた。
けど。
・・・・・・オレってば、頼まれた仕事を他の奴にまわすような人間だって、思われてたんだ。
悔しい。バカにされてたのに、オレいい気になってタ ――――。
結局、オレ、いーんちょーに、からわられてただけなんだ。
ぱっと背を向けて、盛り上がってきそうな涙をかくす。
手早く、自分の荷物を持って、いーんちょーが入ってきた後ろのドアは、避けて前のドアに向かった。
「も、帰るから」
ちっさい声で、言う。
いーんちょーに二回も振られちゃったよ。
今日も、ネコにゃんに慰めてもらおう・・・。
けど、
すん、と鼻をすすりながら、
ガラガラって開けたドアの前にはいーんちょーが立ってて、
「職員室に持っていくの手伝ってくれるよね?」
って、足元のダンボールをヒョイって渡された。
い、いつのまに? ってか、お、重い!
ヨロってしながらも、受け取ると、
「今日は一緒に帰ってあげようか?」
って、言われた。
なにそれーなにそれー。
ムカッてしたはずなのに、
オレは、
「うん」って頷いてた。
だって、しょうがない。
「オレ、いーんちょーに、めろめろ、なんだからな」
言ってやったのに、
「ふーん」
って鼻で笑われた。
( おわり )
はっ、名前もない・・・人たち。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
【R18】性の目覚め、お相手は幼なじみ♂【完結】
桜花
BL
始まりは中2の夏休み。
あれは幼なじみの春樹と初めてAVを見た日。
僕の中で、何かが壊れた。
何かが、変わってしまった。
何年も続けてきた、当たり前の日常。
全て特別なものに思えてくる。
気付かれるのが怖い。
もし伝えたら、どんな顔をするのかな…。
幼なじみ2人の数年にわたる物語。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる