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20.ぱじゃま
しおりを挟む「え、やだよ、人のパジャマなんて」
と言ったら、
先輩がガクっと床にヒザをついた。
「ひ、ひどい、陸・・・。オレたち恋人同士なのに」
なんか言ってる先輩は無視して、さっさと自分で持ってきたスウェットの上下をスポーツバッグの中から取り出した。
「じゃ、先にお風呂に入るね」
2学期が始まって2週目の週末。
先輩のお父さんとお母さんが一泊旅行に出掛けたから、ってことで、ボクは先輩んちに泊まりに来ていた。
だから、まあ、先輩のことだからこれぐらいのことはするかなあとは思っていたけれど、まさか、本当にするとは思ってなくて、
ちょっと、唖然。
脱衣所に置いていたはずのボクのスウェットは無くなっていて、代わりにさっき先輩が差し出した先輩のパジャマが置いてあった ――――・・・。
「先輩、コレ、下が無いんだけど」
まあ、いいけどね、と思って身に着けた白地に青のストライプのネルのパジャマは上しかなくて、
しようがないから、下着の上にそれだけはおって風呂場を出た。
リビングでテレビの音がするから、そこへ行くと、先輩がソファに座ってテレビを観ていた。
のが、視界に入ったと思ったら、
ダダっとすごい速さで先輩がボクに駆け寄ってきた。
ものすごい、しまらない顔・・・・・・。
あんまり凝視されるのは恥ずかしい。
「上だけじゃあ、寒いよ」
「陸、かわいー」
この人は本当に、時々、言葉が通じなくなる。
「下は?」
って言ったら、ぴらり、とスソをめくられた。
「あ、なんだ、下着は、はいてるのか」
!!!
ガシっ。
先輩は石頭なので、コブシが痛い。
「ひっどい、陸、暴力反対」
たいして痛くも無いくせに、頭をごしごししながら、言う。
「先輩こそ、セクハラ反対」
と言い返した。
「ボクのパジャマどこにやったんだよ」
「うん、2階に置いてきた」
・・・・・・・、ここで2階の先輩の部屋に行くと、十中八九、即、押し倒されることが目に見えている。
先輩の目論見通りの行動をするのは、ちょっと悔しい。
ので、
「あ、っそう」
と言って、台所へ行った。
「ノド渇いたから、お水もらうね」
「冷蔵庫にふぁんたがあるぞ」
ぺったりとボクのうしろにくっついてきながら、先輩が言った。
よそ様の冷蔵庫を勝手に開けるのはなんか気が引けるので、
「それボクが飲んでもいいやつ?」
と聞いてみた。
「もちろん。オレが陸のために買ってきたやつだからな」
と先輩が言って、白い冷蔵庫の扉を開いた。上から2段目の棚にふぁんたのミニ缶が10本くらい。
全部、グレープ味。
先輩んちでの滞在時間はトータルで20時間くらいなので(先輩のお父さんとお母さんが旅行から帰ってくる前迄)、そうするとボクは2時間に1本の割合で消費しなければいけないのだろうか・・・?
「ほら」
先輩が1本取り出して手渡しくれた。
「ありがと」
うれしい、けど、フトモモをさわさわと撫でるのはやめてもらえないだろうか・・・。
「先輩も早くお風呂に入ってきなよ」
一歩下がれば、前進。
右へ避ければ、右へ。
先輩がボクの前面にぴったりと張りついている。
台所でウロウロしてると、背中に食器棚。もうこれ以上の後退は不可能。
先輩の手は、フトモモから腰へ移動していた。
「しよっか?」
無邪気に言うから、
「汗くさいの嫌い」
と無邪気に返した。
「5分で戻る」
と言い置いて先輩がダッシュで風呂場へ向かった。
だから、本当に世話のやける・・・・・・。
本当に5分で戻ってきた先輩は、下半身にパジャマを着ただけで、水滴をぽたぽたと垂らしながらリビングに入ってきて、叫んだ。
「ああっっ!! なに、着替えてんだよ」
ボクは先輩が風呂場に消えたあとにさっさと2階で自分のスウェットに着替えてきたのだ。
「9時からの映画観たかったんだあ」
聞こえないふりして、ソファにすわったまんま言った。
そしたら、カーペットの上に座り込んで、ボクに背を向けたままいくら話しかけても全然振り向かない。
「先輩、なんか着ないと冷えちゃうよ」
一応、スポーツやってんだから、肩とか冷やすとまずいんじゃないかな、と思って言ったけど、
先輩は無視。
しようがないので、ボクがさっきまで着てた先輩のパジャマをうしろから肩にはおらせると、
床に、ぺ、と投げ捨てた。
―――― 相当、拗ねてる。
もう、本当に、ガキなんだから。
やれやれ、と思って、床にまるまってるパジャマを手に取った。
ボクは本当に本当は先輩に甘いんだよなー。
ねぇ、そういうのわかってる?
「わかったよ。着ればいいんだろ、・・・これ」
「・・・陸」
くるんとボクをふりかえった先輩が、瞬時に形相を変えた。
「ちっがうって!!」
今、着てるスウェットの上からパジャマを羽織ってると、先輩が叫んだ。
・・・なんだよ、うっさいなあ。
「陸のかれんな裸体が、オレのパジャマの上だけを着て、無防備にむき出しになってるすらりとした脚がオレの情欲を煽るんだ」
先輩、一体どこで、そんなエロ小説を読んできたんだろう。
かれん、の意味がわからない。
「先輩は、別に煽んなくてもいつも、エロいだろ」
「ああ、陸限定でな」
うれしそうにボクの嫌味を受け止めた。
「ささ、陸」
促されて、しょうがないなあ、と思ってしまうあたり、
ボクもけっこうアレだよなあ・・・。
今、着てるスウェットのスソに手をかけて脱ごうとしてると、先輩がじっと見つめてくるから、
「見ないでよ」
と言った。
男同士で、今更、上半身をさらすことなんか恥ずかしくもなんともないけど、
先輩に、だと、意味が違う。
肌が先輩の視線にさらされるだけで、なんだかじわっと身体が火照ってくる・・・。
でも、そんなこと教えるとまたヘンなことされそうだから、ナイショだ。
「いいだろ」
「駄目」
強く言うと、しぶしぶといった感じで先輩が背を向けた。
着ていたスウェットの上を脱いで、素肌に先輩のパジャマをはおったら、
「下も脱いでくれ」
って言われたけど、
いくら先輩の両親が旅行中で居ないとはいえ、ひとさまの家のリビングでそういうことは、ちょっと・・・、
なもんで、
「先輩が、部屋で脱がして」
って、ちょっと甘えて言ってみたら、
ものすごい勢いで、部屋に連れて行かれた・・・。
なんか、スウスウするので、んんっと思って、目を開けると、上半身を起こしている先輩がボクを見ていた。
とびっきりの笑顔で。
「おはよう、陸」
「お、はよ」
昨日、したまま眠ったから、裸のままだ。目の前の先輩も上半身は裸だ。
なんか、冷えるなあ、と思ったら、掛け布団はめくられてて、ボクの身体の上に、薄い白い布っきれがかぶせてある。
なんだ、これ、と思ってよくよく見たら、
「これ、着てみてな、陸」
ぴらぴらふりる満載の白いエプロンだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「センパイ」
お腹の底の底の底のほうから、低い声がでた。
「陸に似合いそうだろう?」
にこにこ顔で先輩が言った。
・・。
先輩はいまだにボクの性格を理解してないんだなあ。
だからぁ~、ものには限度があるって言ってるだろっっっ!!
「いっでぇーっっ、!!――― いだ、だ、だ、だ、だ、だ、り、陸っっ! ・・・ギブ、ギブっっ!!!」
( おわり )
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