放課後シリーズ 妄想暴走な先輩×鉄拳の後輩

ヒイラギ

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夏はとにかく汗をかくから部活用のTシャツと短パンがたくさん必要だ。
ボクが入っている卓球部は、練習中の服装は派手でなければ体操服じゃなくてもいいので、ボクはたいてい、母さんがまとめて買ってきてくれるTシャツと紺の短パンだ。
夏休みも残すところあと1週間。そろそろ、残っている宿題の量が気になり始めた今日この頃。いつものように昼からの部活のために学校に来て、部室で着替えていたら、短パンがちょっときつかった。
サイズは同じでもメーカーによって若干大きさがちがうみたいで、母さんが買ってきたばかりのそれは、いつものより少し小さめだった。




 
冷水機から1ℓサイズのペットボトルに水を汲んでる時に、背後に人の気配がしたな、と思ったら、―――― ぺ、とさわられた。そして、上下にすりすり・・・。
「先輩っ!!」
振り返るついでにエルボー。
けれどボクのくりだしたヒジは沢垣先輩の手のひらに受け止められていた。
「よく俺だってわかったな」
いや、ここは、嬉し顔するとこじゃないから!
「他に居ないだろ・・」
ボクのお尻をさわる人なんて ――――。
掴まれている腕を引き戻そうとするとかえって引っ張られて、先輩の腕の中。
手に持っていたペットボトルは奪われて、いつのまにか地面に置かれていた。その早業は他の事に使ったらいいのでは、・・・と思ってしまう。
「ナニすんだよっ」
「シリが誘ったんだ」
シリ ―――― って名詞? 人物名? そのシリさんが先輩を何かに誘ってそして、今のこういう状況・・・?!
「な、わけないし」
「うん? 陸、ひとりごとかー?」
いつもどうりのんびりとした先輩の口調。さっきまでバスケ部員に、体育館であんなに吼えていたのに。
「はなしてよ、先輩」
真正面の先輩に言った。
先輩のわけのわからない世迷いごとにつきあってなんかいられない。
「ボク、休憩前までに冷水機から水を汲んでかなきゃいけないんだから」
1年生で順番の役割だ。
「遅くなったらへんに思われるよ」
って言ってんのに、
「まだ大丈夫だ」
と、なでなで・・・。
「陸があんまり可愛いシリを見せつけるからだぞ」
「そんなことしてないよ!」
目いっぱい先輩の身体を押し返してんのに、
両手でがしっと臀部をつかまれて動けない。
「んー、そんなことしてただろ。ここのラインに、目が釘付けになって、まいったぞー」
まんなか、指で、つーっとなでられて、身体がびくっとなった。
「さわんな、って」
まいってんのは、ボクだから。
「も、やだ、部活、ちゃんと出来なくなるっ」
ぐっと身体を引きつけられてるから、手も足も出せない。頑丈な背中を叩いてもビクともしない。
ここは、「しばらくしないからね!」の脅し文句を出すべきか、と考えていた時、
「校内での不純同性交遊は禁止だぞ」
いきなりの第三者の声におどろいて、先輩のでかい身体のうしろに目を向けたら、いつのまにかバスケ部副キャプテンの東野先輩が立っていた。
先輩の腕がゆるんだ。ボクは、先輩の腕の中から、すばやく抜け出した。
へ、へんなところを東野先輩に見られて恥ずかしくて、顔が熱くなった。
なのに、先輩は悪びれることもなく、
「じゃますんなよ、トーノ」
と、不機嫌そうに東野先輩に言った。
真夏まっさかりなのに、いつも涼しげな風貌の東野先輩の苗字はヒガシノだけど、部内ではトーノと呼ばれている。
「監督へのおつかいに何時間かかってんだ、ガキ」
先輩は、沢垣なのでガキ。
でも、東野先輩のその呼び方はどっちかというと、子どもを呼ぶみたいな“ガキ”に聞こえる。
「うっせーな、ちょっと遅れたぐらいなんだ」
沢垣先輩と東野先輩の会話と視線のからみぐあいは、まるでゴジラとティラノザウルスの闘いのようだ・・・。踏み潰されないうちに、この危険地帯から遠くにはなれたいーー。
ペットボトルの水は満杯ではないけれど4分の3以上は入っているから大丈夫だろうと、ボクは足元のそれを持ち上げて、
「ぼ、ボク、シツレイします」
と、足早にその場所を立ち去った。
うしろから、リク、と呼ばれたけど、ボクは心の中で「先輩のバカ」っと叫びながら、そのまま体育館に走って行った。








指がぴーっと伸びてきた。
先輩の視線。ボクの胸元。暑かったからシャツ一枚だったので、突然の夕立に濡れて、胸元が透けてる。
そこに・・・。
「さわったら、1週間ナシだから」
「ふぬっ!! ・・・」
ギクっと先輩の手が止まった。
きっ、とにらんでいると、
それでも指がふらふらあっと近づいてきた・・・。
その指差し状態の人差し指が、胸のほかのとこよりも濃いめな色のところにふれる寸前の10cm前で、ボクは先輩にきっぱりと言った。
「1ヶ月ナシだから」
「うぉお・お・お・おー」
先輩が自分の人差し指を反対の指でつかんで、おさえこんだ。
部活が終わって、いつもの路地を先輩といっしょに帰ってるときに急に雨がふりだしてきた。
中々、雨やどり出来る場所がなくて、ようやく見つけたシャッターの下りた車庫。少しだけ出ている屋根の出っ張りで、雨をしのいでいるところだった。
いくら人通りがないからって、なんで、雨やどりしている人んちの車庫の前でそういうことが出来るんだろう。
先輩って発情スイッチが入りすぎると思う。
昼間の部活のときだってそうだった。さっき昼間のこと文句言ったら、あやまってきたけど、反省の色が全くナシだし。
もう、まったく、と思って、肌にはりついたシャツを前にひっぱってはがしてると、直角に近い85度の角度から鋭利な視線が・・・。
暑くてボタンを1個外していたから、大きくひらいた襟元から中をのぞいてくる先輩の視線・・・。
うわー、すごい、えへらってした顔。さっきまでの部活のバスケ部のキャプテンとは全くの別人顔だ。・・・あんなに、かっこよかった人はどこへ行ってしまったんだろう。
「陸って色が白いなあ」
「うん、先輩みたいに、上半身裸でトラックをランニングしたりしないし」
「雨に濡れたぴんくの乳首、吸ってみたいなあ」
「先輩」
「うん、なんだ?」
「口、閉じてて」
「・・・・・・」








「雨に濡れたシャツに乳首が透けて見えてるのをシャツの上から、コリっと歯で噛むと、陸は甘い息をもらして、俺の頭をつかんで自分の胸に押さえつけるようにして「先輩、反対側もして」と涙目で俺に求めてくるかもしれない。いやいやダメだ。恥ずかしがりやの陸が例えそう望んで口に出来ないからといって天下の公道でそんな行為にはしるわけにはいかないが、しかし、陸がどうしてもと言うように、俺の手を取って自分の胸元に持って行ってしまった場合は俺のプラチナよりも硬い理性も木っ端微塵だ。・・・ああ、俺はどうすればいいんだあああああ」
それ、脳内でつぶやいてるつもりだろうけど、しっかり聞こえてるから!
激しかった雨が小雨になってきたのも気づかずに、そんなことで頭を抱えて悩んでいる先輩に、
心の広いボクは、「ひとりで存分に悩んでね」という思いやりの気持ち100%で、先輩をその場に置いてった。






( おわり )
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