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14.タイムリミット

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先週、買ったばかりの新しいソファにすわって正面のテレビを観ていると、ベッドルームから修平が出てきた。
それで、んーっと眉根を寄せて、考え事の最中みたいな顔して、ボクのとなりにぼすんっとすわった。
で、いきなり抱きついてきた。
「なに、すんだよ!」
ボクは、身をよじらせた。
別に照れてるわけでも恥らってるわけでも焦らしているわけでもない。
「・・あぁ、」
いかにもヤル気なさそうな顔で、修平がボクの背後から手をまわしてきて胸を服の上からいじってくるからだ。
「んーーっ」
どう見ても、疲労度120%な表情。
「硬くならねぇなぁ」
―――・・・おっさん。
この部屋をいちばん最初に訪れたとき、玄関ではじめて修平に抱きしめられて、めまいがした。驚きとうれしさで、気持ちがいっぱいになって・・・。
でも、いまは違う種類のめまいがした。
「―――― そんなさわり方じゃ、その気になんないよ」
「しかし、だ。凛一」
急に、真面目な口調で修平が言った。
「今日、しておかねぇーと、俺たちこの先しばらくできないぞ」
・・・は?
「来月はテストに修学旅行に講習があるだろ」
たしかに、12月は、期末テストと修学旅行と冬季講習がある。そして、修平はそれらに加えて、テストが赤点だった生徒のための補習授業があるらしい。そんなわけで、12月は行事が盛りだくさんだ。
それに、修平は明日は研修があるって言っていた。
今日だって、その国語教科の新人職員研修の発表ためのレジメを作ってるはずなんじゃ ―――― 。
今日は、日曜日。
明日から、期末テスト一週間前になるので、その間は修平の部屋に来てはいけなくなっている ―――― つきあい始めたころからのヤクソクだ。ちょっとぐらいいーだろって何回も言ったけど、毎回、却下されている。
そして、テストが終わればボクはヒマになるけど、修平はテストの採点があるし、しかも、2年生は、テスト終了後、数日で修学旅行だ。
修平も2学年の所属なので同行することになっている。生徒にとっては旅行の準備は楽しいもんだけど、先生たちは色々と忙しいみたいだ。
修学旅行が終われば、すぐに2学期の終業式で、そこで学校が終われば、万々歳だ。けれど、すぐに1週間の冬季講習が始まる。修平は、講習の他にもテストが赤点のやつの補習もするらしい。
なんか、本当に、師走、な感じで、スケジュールが目白押し。
「今、12月のスケジュール表を作っていたんだが、どう調整しても、20日まではスル日が取れないんだ」
あんなに、レジメレジメとさわいでたのに、一体なんのスケジュールを組んでたんだよ?
昨日、大学の先輩の結婚式で、2次会3次会で遅くなって、午前様だったらしく、ボクが来た昼までガーガー眠っていて。うっわ、レジメ全然できてねーよ、と慌てふためいてたのはどこのどいつだ!
―――― 修平、現実逃避してるな。
「で、とりあえず、今日しておこうか、と」
とりあえず、って・・・・・・。
機械的に指でくにくにされても、メイワクなだけなんだけど。
「わかった」
ボクは立ち上がって、修平の手を引いてベッドルームに連れていった。
そして、
ごすん、と修平を部屋に蹴り入れた。
驚き顔の修平に向かって、
ボクはビシっと言い放った。
「仕事しろ!」






( おわり )





 

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