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11.恋人の掟
しおりを挟む鏡をのぞきこんでいると、開けっ放しのドアから修平がバスルームに入ってきた。
「なにやってんだ、お前。目にゴミでも入ったのか?」
「うーん・・・」
修平は、ボクが立っている洗面台のとなりにある作り付けの戸棚を開いて、バスタオルと取り出し始めた。
「目がさあ」
って、言いながら、ボクは修平の顔を見上げた。
男っぽいシャープな顔立ち。ワイルドだ。特に、目が。授業中の理詰めで文法の活用形を解説してるときの理知的なその目が、野獣系な獰猛さを潜めているのを知ってるのは、多分、修平のマージャン仲間と、・・・それから、きっと、修平と同じベッドで寝たことがある人間だけだろう、ナ。
「ああ、?」
フックに掛けていたバスタオルを新しいのと取り替えながら修平が答える。どうやら、今から、ベランダに置いている洗濯機で溜まっていた洗濯物を洗い始めるらしい。
「印象的だね、って言われたんだけど。―――― 修平のほうが印象的だよね」
ボクのは別にふつう。うっすら二重なだけで、特にすごくぱっちりしてるわけでもない。
うーん、ちょびっとツリ目かなあ。
な、ボクなのに、今日、服屋で男性の店員さんにそう言われた。
ぜったい、接客のためのリップサービスだと思う。
たかだか、二千円ぐらいのシャツを買う高校生にまで、そんなことを言わないといけないなんて、たいへんだよなあ、サービス業って。
でも、まあ、ほめられて嬉しいしで、洗面台で手を洗いにきたついでにちょっと自分でも確認をしていたところだ。
「――― 誰に、言われたんだ?」
「んー、さっき見せたシャツを買った店で」
今日、土曜だから、学校は4時間授業で終わり ―――― うちのガッコウは私立だから、公立みたいに週休二日じゃないんだ・・・―――― だったけど、修平は午後2時くらいまで今日は職員会議ってことで、ボクは学校が終わると制服のまんま、時間をつぶしがてら、街の中心部の駅周辺で、ぶらぶらと洋服屋を見て回った。
駅から東のほうへ歩いて15分くらいな所に、専門学校がいくつかある。そのせいか、その近くの通りには、学生向けにちょい安めで、けどわりかしセンスのいいものを売ってる小さめな店がいくつも並んでいる。
「他の客にか?」
「まさか、お店のヒトだよ」
ちょうど長袖のシャツが欲しかったから、店先のワゴンにのったお買い得品を見てるときに、店員さんから声を掛けられたんだ。年下のボクにも丁寧に接してくれて、感じのいいヒトだった。
「野郎? 若い?」
「うん。男の人で、なんか、二十歳ちょいすぎって感じだった」
ちょっと細身で、肩につくつらいまでのばされている髪は、すっきりと軽い感じにカットされていて清潔感があった。フレームがダークグリーンの個性的なメガネも、やさしげな顔立ちによく似合っていた。
「誰にでも愛想よくすんなよ」
へ?
意味がわかんなくて、マジマジと修平を見つめた。
「そうやって、俺以外の誰かをじっと見つめるのも禁止」
な、なんで・・・、ボク、そんなに目つき悪い?
「お前、そんな目で、なんか、気になるもんがあるとじっと見つめるだろ」
そうだっけ?
「自分じゃよく、わかんないけど、・・・そお?」
「そうだ。かわった髪型のヤツとか、キレイめな色の服とか着てるヤツとかよく見てる。しかも、ジっと見つめて、目が合いそうになったら意味ありげに目をそらしたりしている」
意味ありげ・・・? なんだ、それ? インネンつけてるってこと?
そんなの誰だって、あれ?って気を引かれるヒトが居たら見るし、目が合いそうになったら気まずいから、目ぇそらすよな。あ、でも、ヤツって言うから男のヒトにってことか。ケンカ売るなってことかな。
「だって、気になるから見るとかって、フツウだろ」
だってさ、ボクは青い色が好きで、そんな感じのきれいな色合いの服を着ているヒトが居ると、あっ、いいなあって、つい目がいってしまう ―――― 。
しっかし、修平、ボクのことよく見てんなあ。さすが、教師。注意力は、ばっちりだ。
「そういう時は、あからさまに見ないで、こっそり見るんだ」
ふーん、そういうもん。 オトナの礼儀ってやつ?
「それから、危ないからその店には、もう行くなよ」
「え、だって、やさしそうな感じのいい店員さんだったよ」
べったりひっついて、高そうな服を売りつけそうな感じじゃなかった。まあ、高校生で買える服なんて、たいした金額じゃないって、わかってるだろうけどさ。
「高い服を買ったわけじゃないのに、ノベルティのハンカチもくれたしさ」
そう言うと、修平が眉をひそめたけど、
笑顔で、「またおいで」って言われたから、すごい嬉しかったし、シャツを選ぶときだって、ボトムとの合わせワザをアドヴァイスしてくれたし。
「・・ガンガンせまってくるヤツより、そういうヤツのほうヤバいんだ。とにかくダメだからな」
強い口調で子どもに言い聞かせるみたいにして言ってくるから、
ふんっと口をとがらせた。
「いちいちなんだよ、修平。ボクの保護者じゃないんだからさ」
当たり前だ、と修平が言った。
「俺は、お前の恋人だから言ってんだ」
「――――・・・、へー、そ、そぉなんだ」
「なに、照れてんだ、凛一」
「べ、べっつに、照れてなんかないし」
「じゃあ、こっち向けよ」
「・・やだよっ。修平のおっさんくさい顔なんか、見たくないもんね」
修平から顔を背けたままそう早口で言うと、
クスっと笑う気配がして、
それから、
腕がするりとボクの腰を抱きしめてきた。修平の力強い腕に、ぐっと抱き寄せられた。
顔を寄せてきたから、
キス、してくるかな、と思ったら、修平のくちびるはボクのくちびるを素通りして、耳のほうに向かった。
そして、
「しようか?」
ちょっとひそめた声が、ぬるい息といっしょに耳の奥に届けられる。
うわっ・・・。
修平のすごく低い声に、身体のうち側ぜんぶが、ぞくぞくっとして、
足元から一気に身体中の血液が沸騰していくみたいな感じがした。
なんか、悔しい。
だって、いつも、こんなふうに、感覚をふるえさせられる。修平に。
「―――― 修平がどーしてもしたいってんなら、つきあってやってもいいけどっ」
気持ちをごまかすようにそう言ったら、ぱっと腕をとかれた。
え・・・。
「ま、あとでもいっか」
さらりとそう言って修平が、身体をはなした。
あ、うそ・・・。
「凛一がその気じゃねーんだしな」
と言って、足元のランドリーバスケットに、また洗濯物を集め始めた。
え、え、え・・・。
えーと。
「・・・そ、その気じゃなくもないけど」
ちょこっと修平のシャツを引っ張りながら言った。
目が、うるんとしてきてる。
「へぇ。―――― でも、すっげぇ、したいってわけでもないんだろう」
にっこりと、やさしく修平が言った。
こんなところで、いつもしない気遣いをすんなよな。
ちょっとは微妙はボクの気持ちを察しろよ、と、
「したいけどっ!」
って反発するように言ったら、
「あー、今のは、35点。赤点ギリギリだな」
と、修平がコツンとボクのヒタイをつついた。
は? たしかに、赤点は34点以下だけど、こんなときになんだよ。
「俺の首に手をまわして」
修平がボクの両腕をつかんで、誘導する。口調はかるいけど、目がなんか、どきっとする感じでボクのことを見つめてきていて、思わず言われたとおりに手を伸ばした。
こ、こうかな。
「そう、それで、頬にかるくキスして」
え・・・・、う、うん。
「そして、耳元に小さな声で、さっきの台詞をもう一度」
そんなふうに言われて、
そんなふうにしたら、
ぎゅうっと抱きしめられた。
「さすが、凛一、のみこみが早いな」
そう言って、
修平が今度こそくちびるにキスを、くれた。
あたたかくてやわらかなくちびるが重なってきて、
うすく開いていたくちびるをもっと割り開いて修平の舌がぬるっと、入ってきた。
深く、ゆったりと舌がからんでくる。
くりびる同士がふれあう小さな感覚と、舌と舌のやわらかなふれあいに、身体のオクがピクピクっと反応する。
両脚を修平ので割られて、脚の間を刺激される。
厚い布越しの刺激なのに、きゅんとなる。身体のまん中が。
わ、でも、・・・ちょ、ちょっと、こんなトコでやばくなりたくない。
「・・ここ、じゃ」
キスのあいまに言った。
指も、シャツの上から胸を刺激してくるし。
どうしてそんなにいつもすぐに、服の上から胸の先を探し当ててることができるんだろうか?
謎だ。
「たまには、違う場所だと刺激的だろ」
ボクのくちびるのうえに、くちびるをくっつけたまま、修平が誘うように言った。
そのかすかな動きで唾液で濡れたくちびるが、こすれて、くすぐったくて、
それに ―――― 感じる。
でも、こんな狭いトコじゃ ――――、立ったまま、ってこと・・・・・・?
「や、やだよ、こんなトコじゃ。・・・それに、どこでだって修平とだったらいつも刺激的だよ」
そう返したら、修平がくちびるをはなした。
あ、もぉ。
「まいったな」
え、なにが?
なみだ目になってるまま、きょとんと修平を見上げると、
修平は、ボクがいつもうっかりと、ドキリとさせられる甘やかな表情をしていた ―――― 深い眼差しで、ボクの全部をくるむみたいな顔で。
うっわ、と、どきどきしていると、
「そうやってお前はいつも俺をたらし込むよな」
と、わけのわからない言葉を吐いて、
ボクをベッドのある部屋に連れ込んだ。
なんだよ、こんなふうにしていつもたらし込んでくるのは修平のほうじゃないか!!
甘く甘く甘く、身体をひらかれていく。
息とかすれた声がもれて、
言葉は意味を成さないのに、
修平の動きを、もっと、とねだってるみたいに聴こえる。
そんな、自分の吐息がヤ、で、
息を、こらえようとするけど、そうすればするほど、身体のオクが貪欲に、修平の求めて、求めてゆく。
「―――― 凛一、」
名前、呼ばれて、
体勢をかえるんだ、ってわかって、
コクン、とうなずいた。
修平の荒い呼吸が汗ばんだ皮膚をなぶっていく。普段、見ることのない本能をむき出しにしたような鋭い目。猛々しい表情は怖いくらいなのに、なぜか、無防備に本心をあらわにしているように見えて、
ボクはすごくすごく、修平を抱きしめたくなる。
つながったまま両脚をそろえて横に倒されて、身体をうつぶせにされて、
ねじれる感触にえぐられて、声をあげた。
シーツに顔をふせる。
いたずらに指が、さぐって、
もっと、ダメにする。
やだ、って言っても、
後ろから入ってきて激しくしてくる前の、焦らすような指とくちびるが、背中のあちこちを這うから、
「しゅ、へー、・・・・ぁ、ん・・シュウっ―――― 」
名前を、ずっと、呼んでしまう。他にすがるものがないから。他にすがりたいものがないから。
修平の舌がボクの首筋を舐め上げながら、手が前のほうに回りこんできて、ボクの勃ちあがっているものを刺激してくる。こすりあげてくる手のひらにはいつのまにかローションが垂らされていて、そのぬめる感触が、
ヨくて、
「あ、―――― そんな・・にし、ちゃ」
でちゃうョ、って声が我慢できなくて、
でも、もっと、オクに、身体のオクにも刺激が欲しくて、
「・・・・ィて」
修平にねだった。
のに、
「うん?」
って意地悪くじらしながら、
先端の敏感な部分を全体をつつんだ手の親指の腹がくすぐる。とろりとしたものがでてくる場所をやわらかくこする、から、
もどかしくて、泣きそうになる。
も、シテ。
ボクをもっとおかしく、して。
今度は、もっとはっきりと、ウゴイテって言った。
言ったらすぐに、
肩に修平の歯が当たった。噛まれて、それで、感じて、腰をくねらせた。
引っ張られるまま腰を高く上げた。パイル地のシーツを掴んだのと同時に修平ので深くえぐられた。
それを、何度も繰り返されて、
イヤって泣いて、ィイって呻いた。
―――― モット、
―――― シナイデ、
―――― ダメになる、
熱に浮かされたような言葉が伝えたい気持ちとは別にこぼれていく。
けれど、
この胸の奥からのあふれる気持ちを、ちゃんと言いたくて、
揺さぶられて、嵐みたいに激しくされて、
それでも、首をねじって、背後の修平に顔を向けた。
「・・スキ」
「ここ?」
「ちが・・。んぅ、・・ぁ ―――― チガゥ」
そうだけど、―――― そうじゃない。
普段は照れくさくて、滅多に言うことがないけれど、気持ちはいつだって変わらない。
「スキ、しゅうへーが、・・っき ―――― ぁあっ」
すごく強くに、さんざんされてたところをもっとされて、
下半身で荒れ狂っていた熱が、
我慢できなくて、―――― イった。
まっすぐに飛び出た声は鋭く雷鳴のようで激しかった。
高く上がる声は放物線のようで、身体も一緒に、ふわふわの泡にまみれてくみたいに、消えてなくなってみたいに、して、
そして、強く、ボクの中の修平をつつみこんだ。
ん、っていう、修平の声に、さらにまた身体が熱くなる。
修平もイイんだ、と気配で感じて、―――― 胸が熱くなった。
粘膜がこすれて生まれる刺激に、余韻を深くするその感触に、ただ、あっあっあっと息をもらしていると、
腰の動きを止めて、声をこらえたように呻いたあと、修平がどさっと身体を重ねてきた。
シーツの上に崩れ落ちていた身体にその重みを受け止めていると、荒々しい呼吸と、
ボクの言った気持ちをそのまま受け取って、また返してくれた言葉が耳に届いた。
身体が、とろん、としている。
イってから随分たつのに、
まるで、液体になったみたいだ。
上半身を起こしてベッドヘッドにもたれてタバコを吸っている修平の横顔を、ベッドに横になったまま見上げる。
身体は輪郭がぼやけてるみたいに、満ち足りていて、
頭はぽやん、としている。
肩までかぶっている素肌にふれるブランケットの感触も気持ちがいい。
修平が吐き出す白い煙が空中に溶けて消えていく。
どかこ一部分、修平にふれていたくて、ブランケットの下に入っている修平の脚の上に手を置いている。
硬い筋肉の感触と高い体温。汗で湿っている皮膚。
そんな感触を味わっていると、
修平がサイドテーブルの灰皿に吸い終えたタバコをおしつけて火を消して、
ブランケットをめくると、するり、とまた、ボクのとなりに横になった。
「シャワー行くか?」
「うん・・・もう、ちょっと」
タバコのにおいのする修平に答える。
タバコの味がする苦いキスもキライじゃない。―――― タバコのかおりも修平といるようになって、キライじゃなくなった。
修平の部屋から自分ちに帰って、着替えているときに、服からタバコのかおりがして、すごく、修平のことを思い出す。なんだ、まだ、ずっと一緒に居たかったな、とか思う。
「修平は、行ってくる?」
「いや、俺も『もう、ちょっと』」
汗が流れたあとの身体の皮膚同士がぺたっとくっつく感触が心地いい。
横向きに向かい合ってる修平の足首あたりの両脚の間に、自分の両脚を挟み込ませた。
足首の骨っぽい感触にはさまれてるのがなんか安心する。
修平が下になっていたほうの腕を差し出してきたから、頭をあげて、その腕に頭をのせた。
あったかい。
もうゆるやかになっている心臓の音が、ひびいてくる。
眠りにさそわれる寸前のような空気が、修平をもっといとおしく思わさせる。
修平にいちばん最初にあったのは、新学期が始まる寸前の春休みの学校で、ボクは美術部の部活で、学校に来ていた。
たまたま通りかかった事務室の前で、そこから出てきたばかりの修平のうしろ姿を見た。
なんだろう? と思った。
この人はどんな人なんだろう、って思った。そのうしろ姿を見た瞬間に。
そしたら、修平がボクを振り返って、あ、っと思うまもなく、ボクにまっすぐ近づいてきた。
全然、目がそらせなかった。
誰? ―――― ボクにとっての誰、って思った。
そして、ボクの目の前まで歩いてきた修平が、ちょっとニコってして、それから、「食堂、ドコ?」って聞いたんだ。
それだけなのに、たった、それだけなのに、
ボクは、この人がボクのことを好きになってくれないかな、って、すごくすごく思った。
その修平がボクの目の前に居る。
うれしくて、
あんまり修平の顔を見つめていたらから、
「なんだ?」
って聞かれた。
でも、なんか、そういう今の気持ちを正直には言えなくて・・・、
照れ隠しに、
「洗濯、出来なかったね」
って言った。
もう、夕方だ。正確な時間はわからないけれど、薄いカーテンを引いてる窓の向こうはたしかに日暮れてきている。
修平のウエストのところに置いていた手で、ぴよ、っとつまんでみた。うーん、相変わらずいい筋肉ついてんなあ。
「ああ。まあ、けど、もともとベランダで夜干しするつもりだったから」
もうちょっとしたら、するさ、とボクのいたずらにくすぐったそうにして修平が言った。
「なんか、一緒に洗うもんあるか?」
修平の部屋に何枚か自分の服を置いている。
頭の中で、ざっと思い浮かべた。
「んー、特にないかな。・・・下着ぐらいだけで」
まだ、そんなに汚れてるっぽいのはない。
「そうか。じゃあ、洗濯して、それからクリーニング屋にも行って、―――― 夕飯はなんか食いに行くか」
「―――― 今日は、ボク、部屋で修平と居たいな」
外に出かけるのも好きだけど、今日はなんだか、修平と部屋でのんびりしていたい。
ダメかなあ、って顔で修平を見上げると、
でもナ、って感じに修平の表情が動いた。
あ、作るの面倒なのかも・・・。
「ボク、なんか、作ろうっか?」
「いや、いい」
!
なんで、即答なわけ? たしかにさ、この前つくった煮込みハンバーグは大失敗だったよ。ちゃんと、家庭科の調理実習通りにやったのにさ。
むぅ、っとふくれると、
「ふくれんなよ。食材がなんにもないんだ」
と、苦笑しながら修平が言った。
おかしそうに目を細めている。
「あ、じゃ、やっぱり、外に食べに行ったほうがいいんだ?」
「まあ、そうだな。冷蔵庫には、野菜が少しと卵と昨日の飯と残り物がなんかあるぐらいだしな」
「じゃ、チャーハンは?」
そりゃ、できるけど、と修平が言って、
「そんなんでいいのか?」
と、聞いてきたから、
「そんなんがいいんだよ」
と、答えた。
この前の、ごま油でパラっとこうばしく炒めたご飯と野菜と鶏肉に、しょう油をたらしただけのがすごくおいしかった。
「ボク、洗濯して、クリーニング屋に行ってくるし」
洗濯っても、洗う物を洗濯機に入れるだけだし、いつも修平がつかっているクリーニング屋もこっから、歩いて5分ぐらいの所だ。
あ、もちょっと先のコンビ二でなんか、おかずでも買ってこようかな。
ね、って言うと、修平がわかった、とうなずいた。
「凛一、」
「ん?」
「―――― ずっと一緒にいような」
言われた意味がすぐにはわからなくて、修平の顔を見ると、言葉よりも表情がその気持ちを確実に表していた、から、
それでボクも修平の瞳を見つめ返して、
そうして、
「・・うん」
って、返事した。
「アっ・・・」
「っうああっ!!!」
リビングで、
うっかりとラグのはしにつまずいた拍子に、
ソファの背に掛けられていた修平のTシャツに、手に持っていたカップから飲み残しのコーヒーがだらっとかかってしまった・・・。
え、えーと。たしか、ブランド物の限定品のTシャツで、修平のお気に入りで、絶対に自分では洗わなくて、クリーニング屋に出していて ―――― Tシャツをクリーニングに出すって・・・どうなのさ、って思ってて、
と、
修平にとってのそのTシャツの重要度のいろんなデータがあせる頭の中をかけめぐってると、
Tシャツを引っつかんだ修平がボクをギっとにらんで、
「なにやってんだ凛一! お前、しばらくウチに来んナ!!」
と叫んだ。
うっわー、ごめーーん・・・。
( おわり )
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