9 / 23
9.ドコが、好き?
しおりを挟む
「ボクのどこが好き?」
誰だって、一度はコ、コイビトに聞いてみたい台詞だよな。
だから、
ボクの隣でふぁああとアクビをしてる修平に聞いてみた。
土曜日の午後3時。
おやつも食べて、ちょっと気だるい時間帯。
うとうと仮眠か、
ごろごろ昼寝をしたい時間だ。
こんなちょっと気のゆるんだ時なら修平の本音を引き出せるかも、と思って尋ねてみた。
「はぁ?」
アクビの続きのような返事に、ちらりとムッとしながらも、
「最初に、さ。ボクのドコが気に入った?」
と聴いてみたら、
「名前」
即答された。
「はあ?」
今度はボクが間の抜けた声を上げた。
「お前の、藤原凛一、っていう名前いいよなー。漢字がすっげ、キマってる」
とても国語教師とは思えない乱暴な言葉遣いで、修平が褒めてくれたけど、
話しの方向が、全然、違うし!!
修平は小さいころから書道をしていて、今も月2~3回は書道教室に通っている。純粋に書の道を極めようとしているのらしい。
そして、ものすごい、漢字オタクだ。
けど、
ボクが聴きたかったのはそんなことじゃない。
ムカっとして、言った。
「じゃあ、もし、ボクの名前が田中はじめ、とかだったら、修平は、全然ボクのことなんか見向きもしなかったってこと?」
「なに言ってるんだ、凛一」
にこっと修平が笑った。
「お前がどんな名前だろうと、俺はお前を選んだよ」
(・・・・・・・・)
今、大人の“落とし”のテクニックを見たような気がした。
こんなんで、胸がきゅん、とかするなんて、相当おめでたいヤツだ。
なのに、
「今日は、上に乗ってくれるよな?」
いつもは、ヤダって抵抗する修平のお願いに、
「ぅん」
と、頬をあからめて答えていた。
ボクって・・・・・・。
( おわり )
【 おまけ話 】
「凛一だったら、何持っていく?」
いつもの週末、土曜日の夜、修平のマンションのリビングで、ガラステーブルを机代わりにして宿題をしていたら、テレビを観ていた修平に聞かれた。
ボクは、テレビがついててもあまり気にならずに勉強ができる。というか、どっちかというとシンと静かよりは、なにか音があるほうが集中できる。
修平に聞かれて、
視線を正面のテレビ画面に向けると、
バラエティ番組でゲストタレントが「無人島に一つだけ持っていくなら」というテーマでトークをくりひろげているらしかった。
ひな壇に並んだ7、8人くらいのタレントがそれぞれ手にボードを持っていて、自分が持っていきたいものを書いていた。
釣竿 ―――― まあ、ありかも。
ケータイ ―――― 電波届かないだろうし。
100万円 ―――― 無人島だろう?
テレビ ―――― 無理だって。
ライター ―――― うん、妥当かな。
布団一式 ―――― 他に大事なものがありそう。
ま、テレビだし。受け狙いの答えもあるんだろうなあ、とココロの中でツッコミながら、
何の気なしに、言った。
「ボクなら修平を持っていくな」
―――― 修平だったらサバイバルに強そうだから食料調達とか寝るとこをつくるだとかに役立ちそう、
と続けようとした口は、見上げた修平の表情になにも言えなくなった。
修平はソファにボクは床にすわっていたから、目線がかなり上になる。
「そうか」
と言った修平は、
なんとも言えないやさしい顔をしてボクを見ていた。
(やべっ)
ボクはあわてて下を向いて、また数学と格闘しているふりをした。
ボクの本音を知ったら、怒りそうだ。
けど、
修平がボクの隣に静かに腰をおろして、肩を抱いてきた。
(あ、なんか、したそうな空気)
「凛一」
声がもう色を含んでいる。
「あ、あの、ボク、宿題しないと」
「オレが明日みてやるよ」
どんなに言ったって、手伝ってくれたことなんかなかったのに。
答えを教えてほしいんじゃなくて、解き方だけでいいのに、「自分でしろ」の一点張りだったのに。
どういうこと? と疑問に思いながら、
ふと、
閃くものがあって、
ためしに言ってみた。
「―――― でも、・・・英語もあるし」
「それも、明日、一緒にしよう」
英語は、余裕があったらしようと思って一応持ってきていただけで、提出日は、週明けの月曜日じゃなくて、水曜日だ。わけのわからない長ったらしい構文に手こずりそうな課題なのだった。
「でも、明日、ドライブに行くんだよね。 ―――― ボク、起きられなくなるかも・・・」
首筋んとこに鼻を押しつけてきた修平に言った。ちょっと、避けるそぶりをしながら。
そう、明日の日曜日は、朝から出かけようってことになっていた。まあ、宿題はこっちに帰ってきてからでもいいけど、スルと、ちょっと身体がきつい。だって、休み前の修平はやたら激しいし。
だから、今晩はナシな感じだったんだけど。
「1回だけ、しよう」
「でも・・・」
「ゆっくりするから」
あ、ならいいかも。
「じゃあ、山じゃなくて海に連れて行ってくれる?」
ドライブついでに、山の隠れた名店らしい蕎麦屋か浜辺での網焼き屋かのどっちに行くかさっき散々言い争った・・・。
「いいよ」
さっきまであんなに渋っていたのに。じゃんけん3回戦で勝った修平が、「ぜってー山!」と主張していたのがウソみたいにあっさりOK。
へえ~、そうなのか、とおかしいのとあったかいので、うれしくなった。
にこってしたあと、
かるく目を閉じて、くちびるをふっくらと少しだけ突きだして、キスを待った。
( おわり )
誰だって、一度はコ、コイビトに聞いてみたい台詞だよな。
だから、
ボクの隣でふぁああとアクビをしてる修平に聞いてみた。
土曜日の午後3時。
おやつも食べて、ちょっと気だるい時間帯。
うとうと仮眠か、
ごろごろ昼寝をしたい時間だ。
こんなちょっと気のゆるんだ時なら修平の本音を引き出せるかも、と思って尋ねてみた。
「はぁ?」
アクビの続きのような返事に、ちらりとムッとしながらも、
「最初に、さ。ボクのドコが気に入った?」
と聴いてみたら、
「名前」
即答された。
「はあ?」
今度はボクが間の抜けた声を上げた。
「お前の、藤原凛一、っていう名前いいよなー。漢字がすっげ、キマってる」
とても国語教師とは思えない乱暴な言葉遣いで、修平が褒めてくれたけど、
話しの方向が、全然、違うし!!
修平は小さいころから書道をしていて、今も月2~3回は書道教室に通っている。純粋に書の道を極めようとしているのらしい。
そして、ものすごい、漢字オタクだ。
けど、
ボクが聴きたかったのはそんなことじゃない。
ムカっとして、言った。
「じゃあ、もし、ボクの名前が田中はじめ、とかだったら、修平は、全然ボクのことなんか見向きもしなかったってこと?」
「なに言ってるんだ、凛一」
にこっと修平が笑った。
「お前がどんな名前だろうと、俺はお前を選んだよ」
(・・・・・・・・)
今、大人の“落とし”のテクニックを見たような気がした。
こんなんで、胸がきゅん、とかするなんて、相当おめでたいヤツだ。
なのに、
「今日は、上に乗ってくれるよな?」
いつもは、ヤダって抵抗する修平のお願いに、
「ぅん」
と、頬をあからめて答えていた。
ボクって・・・・・・。
( おわり )
【 おまけ話 】
「凛一だったら、何持っていく?」
いつもの週末、土曜日の夜、修平のマンションのリビングで、ガラステーブルを机代わりにして宿題をしていたら、テレビを観ていた修平に聞かれた。
ボクは、テレビがついててもあまり気にならずに勉強ができる。というか、どっちかというとシンと静かよりは、なにか音があるほうが集中できる。
修平に聞かれて、
視線を正面のテレビ画面に向けると、
バラエティ番組でゲストタレントが「無人島に一つだけ持っていくなら」というテーマでトークをくりひろげているらしかった。
ひな壇に並んだ7、8人くらいのタレントがそれぞれ手にボードを持っていて、自分が持っていきたいものを書いていた。
釣竿 ―――― まあ、ありかも。
ケータイ ―――― 電波届かないだろうし。
100万円 ―――― 無人島だろう?
テレビ ―――― 無理だって。
ライター ―――― うん、妥当かな。
布団一式 ―――― 他に大事なものがありそう。
ま、テレビだし。受け狙いの答えもあるんだろうなあ、とココロの中でツッコミながら、
何の気なしに、言った。
「ボクなら修平を持っていくな」
―――― 修平だったらサバイバルに強そうだから食料調達とか寝るとこをつくるだとかに役立ちそう、
と続けようとした口は、見上げた修平の表情になにも言えなくなった。
修平はソファにボクは床にすわっていたから、目線がかなり上になる。
「そうか」
と言った修平は、
なんとも言えないやさしい顔をしてボクを見ていた。
(やべっ)
ボクはあわてて下を向いて、また数学と格闘しているふりをした。
ボクの本音を知ったら、怒りそうだ。
けど、
修平がボクの隣に静かに腰をおろして、肩を抱いてきた。
(あ、なんか、したそうな空気)
「凛一」
声がもう色を含んでいる。
「あ、あの、ボク、宿題しないと」
「オレが明日みてやるよ」
どんなに言ったって、手伝ってくれたことなんかなかったのに。
答えを教えてほしいんじゃなくて、解き方だけでいいのに、「自分でしろ」の一点張りだったのに。
どういうこと? と疑問に思いながら、
ふと、
閃くものがあって、
ためしに言ってみた。
「―――― でも、・・・英語もあるし」
「それも、明日、一緒にしよう」
英語は、余裕があったらしようと思って一応持ってきていただけで、提出日は、週明けの月曜日じゃなくて、水曜日だ。わけのわからない長ったらしい構文に手こずりそうな課題なのだった。
「でも、明日、ドライブに行くんだよね。 ―――― ボク、起きられなくなるかも・・・」
首筋んとこに鼻を押しつけてきた修平に言った。ちょっと、避けるそぶりをしながら。
そう、明日の日曜日は、朝から出かけようってことになっていた。まあ、宿題はこっちに帰ってきてからでもいいけど、スルと、ちょっと身体がきつい。だって、休み前の修平はやたら激しいし。
だから、今晩はナシな感じだったんだけど。
「1回だけ、しよう」
「でも・・・」
「ゆっくりするから」
あ、ならいいかも。
「じゃあ、山じゃなくて海に連れて行ってくれる?」
ドライブついでに、山の隠れた名店らしい蕎麦屋か浜辺での網焼き屋かのどっちに行くかさっき散々言い争った・・・。
「いいよ」
さっきまであんなに渋っていたのに。じゃんけん3回戦で勝った修平が、「ぜってー山!」と主張していたのがウソみたいにあっさりOK。
へえ~、そうなのか、とおかしいのとあったかいので、うれしくなった。
にこってしたあと、
かるく目を閉じて、くちびるをふっくらと少しだけ突きだして、キスを待った。
( おわり )
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる