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4.高速lovers

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「この髪の毛なんだよ!!」 
キッチンで、料理を始めていた先生のところに、指でつまんだ長ーい髪の毛を持って行った。 
今日は、部活のあとに、友だちと街をウロウロして、6時過ぎに友だちには自宅に帰る振りして駅で別れて、先生の住むマンションに来た。 
時間的には、仕事を終えた先生の帰宅時間とちょうどぴったりだった。 
先生は、ボクが通う高校の国語教師で、ボクが2年生になった今年の4月から、うちの学校にやってきたばかりだ。 
その4月から、ボクより7つも年上の先生とつきあいはじめて、もう半年になる。 
3日とあけずに、先生の部屋に通っているうちに、
マンションの合鍵ももらったし、クローゼットの備え付けの引き出しの一番下は、ボク専用に先生があけてくれた。
制服のまんまだとじゃまくさいから部屋着にかえようと思って、ベッドルームのクローゼットから自分の服を取り出そうとしたとき、足元に落ちていたその髪の毛を見つけた。 
自慢じゃないが、ボクの視力は両方ともに裸眼で1.5だ。 
授業中に、おっさんくさい黒ぶち眼鏡をしている近眼の先生とは大違いなのだ。 
30cmはありそうなくりんとカーブしてる長い髪の毛。茶色。 
ボクのでも、もちろん先生のでもない。 
まさか、と思って、セミダブルのベッドを点検すると、枕にも同じような長くて、明るいブラウンの髪の毛があった。 
オンナだ! 
ふざけんな、と思って、証拠品をもって、先生のところへ行ったら、近視なせいか、眉根を寄せてボクがつまんでいた髪の毛を見ながら、 
「あぁ、昨日友だちが泊まったんだ」 
なんだ、そんなもん、って顔して言った。 
「あんたの友だちは、こんなにロン毛で茶色の髪したオトコなのかよ」 
社会人で、そんな髪型をゆるされてる人は、そう多くない。 
「いや、オンナだけど」 
ふつーに言うから、 
「浮気じゃないかっ!」 
と叫んだ。 
「何言ってんだお前?」 
「誤魔化されないからな」 
「俺、オンナに勃たねーし」 
「・・・あ」 
「そんなのお前がいちばん知ってるだろう」 
ほれ、皿だせよ、と言われて、 
呆然としながらも、いつもみたいに、 
冷蔵庫の隣の食器ボードから深めの皿を2枚取り出した。 








先生が作ったチャーハンとサラダとスープの夕食を、ふたりで食べはじめた。 
玉ねぎや人参や玉子が入っているチャーハンの上に、牛肉とピーマンをいためてタレをからめたのがのっかっている。
ほかほかと湯気がでているチャーハンに箸をのばして、
一口。
んっ、今日は中華風だ。
そして、ぴり辛。
相変わらず、料理うまいよな、先生。ちょっと頬がゆるんでしまった・・。
「昨日、一緒に飲みに行って、激しく酔っぱらってたから、ベッドは貸したけど、俺はソファで寝たよ。 
―――― つーか、アイツが男でも、俺には絶対無理だな」 
スープカップを手に持ったまま、遠い目をして先生が言った。 
先生の女友だちって・・・・・・・・。 
ボクが先生とつきあいはじめて、半年になるけど、 
今まで、 
お互いにそれまでつきあってた人のこととか話したことなかった。 
でも、ボクはなんとなく、 
先生は女の人ともつきあったことがあるんじゃないかな、と思ってたんだ。 
いつもボクとふたりの時だけ見せるようなニヤけた顔をしなければ、それなりにカッコイイし、水泳をずっとしてたから筋肉もばっちりついててスタイルだっていい。 
ボクには乱暴な言葉遣いだけど、他では丁寧な口調だし、それに外面がいいから、女性受けよさそうだ。 
大学生のときなんか、すごくモテたんじゃないかな、と思う。 
「修平って全然、オンナとつきあったことないの?」 
曽根崎修平、それが先生の名前。 
先生は、2人っきりの時にボクが『先生』と呼ぶのが好きじゃない。 
『先生』と呼ばれると、なんだか生徒とつきあってる自分が悪いことをしているような気がするのだと言ってた。 
それは、『気がする』じゃなくて、ホントに『悪いこと』なんだと思うけど・・・・・・・。 
「あー?」 
「オトコ、だけ?」 
「そーだなー。中学んときに、試しに女の子とデートしたことはあったけど、イマイチだったな」 
あんな、丸くてやわっこい身体には欲情しねーよ、と言った。 
「凛一は?」 
藤原凛一、このかたっくるしい名前がボクだ。 
聞かれて、うーんと考えた。昔の記憶を探る。 
「初恋は、幼稚園のときのバスの運転手さんだった」 
それから、なんかイイナと想うのは男の人ばかりだ。 
「へー、昔っからすっげ年上が好みだったのな、凛一は」 
なんか気にさわる言いかただったので、 
「すごく年上だったのは、たまたま! それからは、学校のクラスメイトとか、ちょっと上の先輩とかを好きになったし」 
と、かえした。 
先生に、『俺が凛一の好みのストライク』、みたいな思いこみをされたくない。 
ただでさえ、「お前、俺にメタ惚れしてるだろー」みたいな態度で、自惚れてんだから。 
これ以上つけあがらせてやるもんか。 








「仮にだ、男をこの部屋に泊めたからって、そんなことはあるわけないだろう。俺を、誰にでも発情する節操なしのケダモノだとでも思ってんのか?」 
セッソーなしかどうかは、まだ証拠はつかんでないけど、 
ケダモノなのは確かじゃん。 
いっつも、ケダモノみたいにボクに喰らいつくそうとするくせに。 
だから、 
「へぇー、そう」 
と受け流した。 
そしたら、 
「ま、好みのヤツだったら別だけど」 
とニヤニヤしながら言うから、 
聞き捨てならない台詞に、カチンときた。 
けど、全然、気にしてないけど、みたいな顔で、 
「修平の好みって?」 
って澄まして聞いた。 
「スーツが似合って、ちょっと品のあるノーブルな顔立ちでさ、年も俺とかわらないぐらいで、いつも落ち着いていて、あまり感情が外にでないタイプ・・・だけど、ベッドの中ではすっげーエロいことをたくさんしちゃうヤツ」 
知ってはいたけどさ、先生が目を惹かれるタイプの人って。 
そういう感じの男の人がテレビに出てたりすると、 
「おっ」 
とか言って、テレビに見入るし、車を運転してるときでも、よそ見をしたりする。 
そのたんびに、ムカムカして先生の背中にケリ入れたり、「アンタ」とか「オッサン」と呼んだりしてた。 
今、待ってましたとばかりに、とうとうと好みのタイプをはっきりと説明してくれたけどさ、 
なあ、それって、ベッドの上で、ボクの服を脱がしながら言う台詞? 
ボクの中にその要素がひとかけらもないこと判ってて言ってんだよね。 
まちがいなく、ボクにケンカ売ってるよな? 
売られたケンカは、もちろん買うに決まってるだろ。
だから、にっこりと作り笑いをして言ってやった。 
「ボクのタイプはね。あんまり筋肉質じゃなくて、ふわっとした優しい顔立ちで、いっつもボクのことを甘やかしてくれる1コか2コ年上の人」 
とっさにウソを思いつかなくて、去年、つきあってた先輩の容姿をそのまま言った。そして、先生がボクを甘やかすなんてことは、滅多にない ――――、 甘い言葉だってほとんど言われたことないし。 
ガタイのいい、男くさい顔をしたアンタみたいなオッサンじゃないからね、ってつもりで言った。 
なのに、 
先生の反撃は、言葉だけじゃなくて。 
「あー、お前の身体って、そういうヤツらに、こんなにヤらしく開発されたんだ」 
くにっと胸をつままれた。 
まだ硬くなってなかった乳首は、痛みよりも、むずがゆいような感覚のほうが先にきて、身体が反射的にぴくっとした。 
つまんで刺激されるよりは、表面を濡れた指でゆるくなでられるほうが感じる。 
それを先生も知ってて、
・・・だから、 
先生がボクの顔に近づけきた指をいつもみたいに口に含んで、唾液をたっぷりからませるようになめあげた。 
「なあ、ここも俺で何人目?」 
胸元をいじってないほうの、 
まだかわいてる先生の指が下着の中にもぐりこんできて、閉じているボクのソコをくすぐるようにふれてきた。 
もどかしくされるのは、イヤだけど、・・・・・・ヤじゃない。 
「カンケーないだろ、いまさら」
先生から前につきあってた人のことを聞かれるのは初めてだった。  
探るような目の先生を煽るように言ったけど、 
ボクがつきあったのって先生が2人目。 
初めてつきあったのは2コ年上だった学校の先輩で、でも、最後まではしたことなかった。 
キス、とか、お互いのをさわったりとか、そういう感じ。 
「いやー、せっかくだから、何人ぐらい経験したら、こんなに感じやすい身体になるのか教えてもらおうと思ってさ。 
最初にお前を抱いたときは、挿れられるのは慣れてなさそうだったけど、あれってフリだった?」 
―――― チガウ。 
ボクは先生が初めてだった。 
ボクの身体をおかしくなるぐらい気持ちよくしてくれたのは、先生の手が初めてで、 
怖かったけど、あの日、先生にその先まで連れて行ってほしくて、全部、あずけた。 
だから、 
先生しか知らないのに、 
フリとか、できるはずもない。 
でも、 
そんなの言う必要ないし! 
ちょっとはシットでもすればいいんだ。いっつもボクばかりヤキモキさせられてるから。 
怒れば、軽くあしらわれるし。 
まるで、先生の手のひらの上で踊らされてるみたいだ。 
ボクは、先生の質問を意味ありげにムシして、先生のシャツのボタンを外していった。 
それから、先生のブルージーンズに手をかけた。 
スリムなのをいつもはいているから、ボタンがかたくて、はずすのに手間取る。 
ただでさえ、手先が器用なほうじゃないのに。 
うまく外せないジーンズのウエストに少しイラついた。 
イラつきながらも、なんだか淋しい気分にもなっていた。 
さっきから、先生に負けるもんかって、ずっと、言い返してるけど、 
今日は、まだ、キスもしてない。 
なんか、こんな抱きあいかたは、ヤだな・・・。 
ちょっとだけ、 
胸がシクリと痛んだ。 






いちばん感じるところをボクの中に入ってきた指でさぐられる。 
ローションでたっぷり濡れた指が、イヤらしく動きまわって、 
気持ちよすぎて、ヘンになりそうだった。 
「ここも誰かに教えてもらってたんだろ」 
ここを知ってから、自分でいじったりしてた? と性格ワルソーな顔で聞いてくるから、 
甘い声、だせない。 
気持ちがイイ涙といっしょにちがう涙もでてきた。 
ボクって、そんなにアソんでるっぽいんだ。 
本当は、すぐ身体をひらきそうに見えたから、声かけてきたの? 
さっきまで、強気につっぱねていたけど、今、こころのもろいところが、ぽろぽろって壊れていく。 
「も、・・・・ぃれて」 
涙でうるんだ目で、先生の顔をみながら、哀しい気持ちをごまかすように言ったら、 
はっとした顔をして、それから剣呑に目を細めた先生が、 
「その台詞も教えてもらった?」 
って言った。 
この身体は先生だけのものなのに、って、 
すごい、哀しくて、 
「ボク、修平がはじめてだから、知らない、そんなこと」 
とっさに、弱々しく言ってしまってた。 
あっ、と思ったけど、 
また、からかわれるっ、て思ったけど、 
そんなことなかった。 
先生は、ふわっと表情をゆるめて、 
汗にぬれて額にはりついていたボクの髪の毛をそっとかきあげてくれた。 
それから、 
ちゅっと、ボクにキス、してきて、 
「わかってるよ」 
と、言った。
そして、
欲しく、てうすく開いてたボクの口に、やさしく舌を入れてきた。 
なんだよ、わかってたのかよ、っていつもならムカっとしてるはずなのに、 
ホッと安心してて、
はってた意地がほこん、と溶けた。 




・・・・・・やっぱり、ボクは先生の手のひらの上で踊らされてる。 






( おわり ) 

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