世に万葉の花が咲くなり

赤城ロカ

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第3章

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 家に着くと郵便が届いていた。包みが郵便受けに半分くらい差し込まれていた。しかし俺には身に覚えがなかった。
「おお、届いたか」
 ジョニー・ウォーカーがそれを取り、中に入ると包みから出した。  蛍光灯の下で黒く光るそれは、拳銃だった。
「お前が頼んだのか?」
「いまの時代、ネットで買えないものはないんだよ」
「いつの間に……っていうか、ものには限度があるだろ」
 ジェイでハンバーガーを食べているとき、ジョニー・ウォーカーはしばらく俺の家に泊めてくれと言った。どうやらこいつは住む場所がないらしい。アパートごと燃やされたと言っていた。聞けばそれもカナディアンクラブの仕業らしい。理由を訊いても、さあなとしか言わず、話したがらなかった。
 ジョニー・ウォーカーはひとしきり拳銃を眺めると弾を装填して、窓に銃口を向けた。
「よし」
「『よし』じゃねえよ、やめろ、賃貸だぞ」
「分譲だったらもっと怒るだろうが」
 俺とジョニー・ウォーカーは交互にシャワーを浴びた。「先、シャワー浴びてこいよ」と奴はニヤニヤしながら言った。殺すぞと言うとジョニー・ウォーカーは大声で笑った。
 朝、俺はジョニー・ウォーカーに起こされた。時計を見るとまだ朝の四時だった。バイトでもないのになんでこんな時間に起きなきゃいけないんだとシカトした。するとあばらを踏まれて激痛が走った。俺は起き上がりると奴の胸ぐらを掴んでぶん殴ろうとした。するとジョニー・ウォーカーが笑い出した。
「――思い出さないか? このバトル! この肉体にくのぶつかり合い!」
 俺は思い切り奴の右頬を殴った。奴が床に倒れる。どこまでふざけてんだこいつは。奴は頬を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「軽いジョークじゃねえか……まったく……追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だな」
「俺は追い込まれてなんかねえぞ」
「だから、軽いジョークだよ」
 ジョニー・ウォーカーは煙草に火をつけた。そしてモッズコートを羽織り拳銃をポケットにしまうと、行くぞと俺を促した。
「朝っぱらからどこ行くんだよ」
「情報収集だよ」
 俺はため息をついて、仕方なしにダウンジャケットを着た。
「アテはあんのか?」
「まあ、任せとけ」
 ジョニー・ウォーカーは靴を履いていた。
「お前、いい靴履いてるな」
「そうか?」
 いい靴だ。もう一度そう言うと、ジョニー・ウォーカーは外へ出ていってしまった。
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