執愛

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友愛は憎悪へ

03

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幾度となく抱かれたベッドの上で抱き合い寝転がっていた。

『なぁ…いつ俺のこと好きになったんだ?』

余韻に浸る甘い空気に耐えられなくなって思わず俺は尋ねた。

「いつだったか……そうだな。イーサンが5歳のとき旅行先でリンジーと喧嘩をして泣きながら帰ってきたのは覚えているかい?」

『んー……何となく?』

ウィリアムに言われて記憶を遡ってみてもおぼろげにしか思い出せない。

「秘書に連れられて私たちの家にきてね。そのとき私も8歳で幼かったけど、そのときの記憶は今でも思い出すよ」

『ウィリアムはなんで旅行に行ってなかったんだ?』

「私は熱を出していたんだよ。秘書に連れられた君は、熱で寝込んだ私の部屋に飛び込んだんだ。そのまま私にくっついてびーびー泣いてね」

『えー…そうだっけ?』

全く覚えがない。

「あぁ。イーサンは泣き疲れてそのあと寝てしまってリンジー達が帰ってくるまで一緒にすごしたんだ。そのときに私はすごく救われたんだよ。それだけじゃないけどね、その日がきっかけではあるかな。そういうイーサンは私のどこが好きなんだ?」

『えーと…』

ウィリアムに聞かれて俺は考え込んだ。彼の好きなところ。とてもルックスが整っているところ、なんて言ったら怒られそうだ。

真剣に考える。すると脳裏に幼いころの記憶が蘇る。「イーサン」と俺を呼ぶ優しい声。呼ばれてきょろきょろと見渡すとウィリアムが手を俺にだして待っている。俺は嬉しくなってその手と手を繋ぐ。俺より少し大きい手。見上げると優しく微笑むウィリアムがいるのだ。

両親と手を繋ぐときは決まって知らない大人がいるところに連れていかれる。

リンジーと手を繋ぐと守ってあげなきゃいけない。

でもウィリアムが迎えに来ると、その手と手を繋ぐとすごく安心する。怖いことも退屈なこともない。

『俺も小さいときから……かな。俺をずっとそばで見守ってくれたとことか、優しいところが……』

幼いころ感じていたことを正直に話すと、目元を緩め額にキスされた。

「そうか…ありがとう」

腕枕をしたウィリアムの腕から、頬にふれた彼の肌からどくんどくんと鼓動を感じる。いつもよりも早い鼓動。

肌を撫でる冷たい夜風が火照った身体を冷やし心地がいい。鼓動の音に聞き入っていると瞼が重くなってくる。欠伸をこぼし眠気で閉じようとする瞼にあらがっていると、ウィリアムの手が俺の目元を覆うように触れてくる。そうされると瞼はもう開かない。

俺はウィリアムの腕に抱かれながら、眠気に身を委ね眠りについた。






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