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愛の昇華
02 ★
しおりを挟む身体をあらい、準備を済ませた俺はシャワーの熱いお湯を浴びながらぼうっとしていた。煙る湯気に身体を伝い落ちる雫。目の前の壁につけられた鏡はすっかり曇っている。
ふぅと息を吐き、重い身体を引きづる様にバスルームをでた。タオルで身体と髪を軽く拭きシリウスが待つ寝室へ足を進める。あっという間に扉の前につく。俺はすっかり緊張していた。
扉は微かに空いていた。
手でそっと押すと扉は音もなくゆっくり開き、バスローブを身に纏ったシリウスがベッドで本を読んでいるのが見えた。部屋の中はシリウスの傍にあるランプの明かりのみが付いていて薄暗い。
扉の前から動けなくなった俺をシリウスは見つけると、本をナイトテーブルに置いた。
「おいで、シリウス」
優しい声。
蘇る記憶。
幼いころ怖い夢を見て眠れなくなった俺がシリウスの部屋に来ればこうやって優しい声で「おいで」と呼んでくれた。それが当時俺はとてもうれしくて、べッドに駆け寄った俺の頭を撫でるシリウスの手も大好きだったのだ。
緊張はすっかりなくなっていた。
ベッドに駆け寄りヘッドボードに背もたれるように座っているシリウスの上に正座を崩した形で座る。俺は自分のバスローブの紐を解き、見守る様にじっと動かないシリウスの唇に唇を寄せ、ごくあっさりと唇が触れた。1回だけ軽いキスをした。ほんの短い間。唇に触れる柔らかい感触。
もう嫌悪感はない。
ちょっと見つめ合ってから、どちらともなく近づいて口付けをする。やさしくて穏やかなキスだった。あの屋敷の夜とは違う。
お互いの唇の柔らかさを味わうように角度を変え唇を食む。
俺は彼がどんな顔をしているのか気になって閉じていた目をあけた。シリウスの水色の瞳と目が合う。暗いからかいつもよりも濃い水色。その瞳が溶けそうな媚を含んでいた。今まで見たことがない目だ。
俺が唇を薄く開くと、すかさずシリウスは舌を滑り込ませてきた。ぬるりとした舌が唇を舐め、俺の舌を絡め取る。彼の手が俺の肩にのっかっただけのはだけたバスローブを落とし俺の腰と頭を撫でた。一瞬後ろに逃げそうになった俺をその手がとめまた唇が合わさる。
『……ん……はぁ……ッ』
「ン……………」
腰に回された手が背中を下から上へ肌を撫で自然と息が上がった。
鼻だけじゃ足りずに息をしようと口を開ければ、さらに奥深くまでシリウスの舌が絡まってきた。舌の先で舌の裏を撫でられ、思わず身体が反応する。びくびくと跳ねた身体に、シリウスは俺をゆっくり押し倒した。
柔らかいベッドに背中が付く、口付けは深く続いていた。俺が苦しくないようにか、たまに合わさっていた唇が離れ耳元に唇がうつる。
唾液まとった舌が耳の外殻を舐め、くちゅっという厭らしげな音を響かせわざと息を吹きかけてくる。
『あっ…っふぅ、ン……』
そしてたまらなくなって身を震わせると、深く優しい口づけに戻るのだ。
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