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初任務
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2時間にも及ぶ長い運転を終え屋敷に到着したころには、身体を動かすとめりめり音がするかと思うほど全身が固く凝りっていた。
任務の後にまた長い時間運転しないといけないのかと思うと気が重くなる。車の中から屋敷を眺めた。まだ人が住んでいてもおかしくないほど綺麗な屋敷だ。写真でみるよりも一回り大きくみえる。窓はカーテンで閉め切られていて中の様子はわからない。
資料を見ると3階の西奥の部屋、ゲストルームで人影を見たと書かれている。車から降りて3階の窓をみる。やはり赤いカーテンで中は伺えないが、一番西側の窓のカーテンがわずかに空いているのが見える。管理人が人影を見た部屋かどうかわからないが、俺はその部屋に向かうことにした。
豪華絢爛な屋敷の中はその外装よりも派手だ。しかしそのデザインが妙に古く見えた。正面玄関から入ると天井が高く黒い大理石が使われた床に白い石造りの壁が来客者を迎える。床はしばらく“人“が住んでないというのに鏡と見間違えそうなほどに磨かれている。とりあえずカーテンが少し開いていた部屋に行こうかと考えていると、どこからか硝子が割れるような音が聞こえた。
3階からだ。俺は階段を駆け上がり音がした方に走った。きっと今回の任務の元凶がいるに違いないと。
靴の底に何か石を踏みつけたような感触がする。足を退けるとそこには透明な破片があった。視線を走らせると廊下にある窓が割れカーテンが風にゆらゆらと揺れているのが見えた。1階で聞いた音はこの窓が割れた音のようだ。
割れた窓のちょうど向かい合う位置にかすかに開かれた扉があった。その扉の奥に窓を割った何者かがいる。そう確信した俺はゆっくりと硝子の破片を踏まないようにしながら、その扉に近寄った。壁に背を付け左のジャケットの裏につけていたホルスターから銃を抜き右手に構える。扉の向こうからは何も音はしない。左手で扉を開き部屋の中に銃を構えながら入るとそこには誰もいなかった。
赤いカーテンがわずかにあいた窓が見える。そうかここは外でみた部屋だ。警戒しながら窓に近づきあいたカーテンから外を見る。噴水池と俺の車がとまっているのがみえた。到着したときよりも日が沈み薄暗くなっている。空を見ると灰色の雲に覆われていた。
『来たときは晴れていたのに…』
携帯を取り出して今にも雨が降りそうな空を撮りシリウスに送る。すぐに既読がつき「気を付けろ」とメッセージがきた。返信の速度からして連絡を忘れたら本当にここまで迎えに来そうだ。
携帯を胸ポケットにいれ部屋を散策する。廊下から入って左側に浴室があり右側に黒いビロードに金糸で刺繍された天蓋付きのベットがあった。近寄ってみると、この屋敷に入ってすぐ抱いた違和感をここにも感じた。ベットも埃をかぶっていないのだ。管理人が手入れしているにしてもきれいすぎる。やはりここには何者かがいる。
警戒を強めた瞬間、黒い影がとびかかってきた。目の前に黒い羽が散る。堕天使か!影にむかって銃を構えるも、胸倉をつかまれベットに投げ飛ばされる。急いで起き上がるも、急に目の前が真っ暗になり一瞬身体が固まってしまう。目をこすろうと動かした手が柔らかいものをつかんだ。布だ。布をつかんではがした瞬間、ベットが軋み太腿に何かが圧し掛かってきた。
布がはがれ開いた視界。
目の前に金色がひろがっていた。
それは瞳だった。
鼻と鼻が触れる。キスができる距離に見知らぬ男の顔があった。
緊張が走る。
任務の後にまた長い時間運転しないといけないのかと思うと気が重くなる。車の中から屋敷を眺めた。まだ人が住んでいてもおかしくないほど綺麗な屋敷だ。写真でみるよりも一回り大きくみえる。窓はカーテンで閉め切られていて中の様子はわからない。
資料を見ると3階の西奥の部屋、ゲストルームで人影を見たと書かれている。車から降りて3階の窓をみる。やはり赤いカーテンで中は伺えないが、一番西側の窓のカーテンがわずかに空いているのが見える。管理人が人影を見た部屋かどうかわからないが、俺はその部屋に向かうことにした。
豪華絢爛な屋敷の中はその外装よりも派手だ。しかしそのデザインが妙に古く見えた。正面玄関から入ると天井が高く黒い大理石が使われた床に白い石造りの壁が来客者を迎える。床はしばらく“人“が住んでないというのに鏡と見間違えそうなほどに磨かれている。とりあえずカーテンが少し開いていた部屋に行こうかと考えていると、どこからか硝子が割れるような音が聞こえた。
3階からだ。俺は階段を駆け上がり音がした方に走った。きっと今回の任務の元凶がいるに違いないと。
靴の底に何か石を踏みつけたような感触がする。足を退けるとそこには透明な破片があった。視線を走らせると廊下にある窓が割れカーテンが風にゆらゆらと揺れているのが見えた。1階で聞いた音はこの窓が割れた音のようだ。
割れた窓のちょうど向かい合う位置にかすかに開かれた扉があった。その扉の奥に窓を割った何者かがいる。そう確信した俺はゆっくりと硝子の破片を踏まないようにしながら、その扉に近寄った。壁に背を付け左のジャケットの裏につけていたホルスターから銃を抜き右手に構える。扉の向こうからは何も音はしない。左手で扉を開き部屋の中に銃を構えながら入るとそこには誰もいなかった。
赤いカーテンがわずかにあいた窓が見える。そうかここは外でみた部屋だ。警戒しながら窓に近づきあいたカーテンから外を見る。噴水池と俺の車がとまっているのがみえた。到着したときよりも日が沈み薄暗くなっている。空を見ると灰色の雲に覆われていた。
『来たときは晴れていたのに…』
携帯を取り出して今にも雨が降りそうな空を撮りシリウスに送る。すぐに既読がつき「気を付けろ」とメッセージがきた。返信の速度からして連絡を忘れたら本当にここまで迎えに来そうだ。
携帯を胸ポケットにいれ部屋を散策する。廊下から入って左側に浴室があり右側に黒いビロードに金糸で刺繍された天蓋付きのベットがあった。近寄ってみると、この屋敷に入ってすぐ抱いた違和感をここにも感じた。ベットも埃をかぶっていないのだ。管理人が手入れしているにしてもきれいすぎる。やはりここには何者かがいる。
警戒を強めた瞬間、黒い影がとびかかってきた。目の前に黒い羽が散る。堕天使か!影にむかって銃を構えるも、胸倉をつかまれベットに投げ飛ばされる。急いで起き上がるも、急に目の前が真っ暗になり一瞬身体が固まってしまう。目をこすろうと動かした手が柔らかいものをつかんだ。布だ。布をつかんではがした瞬間、ベットが軋み太腿に何かが圧し掛かってきた。
布がはがれ開いた視界。
目の前に金色がひろがっていた。
それは瞳だった。
鼻と鼻が触れる。キスができる距離に見知らぬ男の顔があった。
緊張が走る。
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