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第六章 龍と解放と中年冒険者

養子と中年

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 中国ダンジョン
 十層、ボス部屋。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
ウィズダムオーク(ポリューション)
ランクC
レベル70
 ウィズダムオーク変異進化体。
 防御に特化しており、進化でより強硬になった。汚染により凶暴化している。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

「見た目が豚って言うか、猪だな」

 毛がバッサバッサしてる。

「てか、猪八戒じゃない?」

 おぉ、たしかに!


「いけ! こっちの猪八戒!」


 ノセが前に出て、

「ぶひぃー! おい! 僕は豚でもオークでもない! 人間?」
 
「聞くな! つーかくるぞ!」
 

 持っている槍を振り回して攻撃してくる。

“ガィン!”

『さっさと倒すんじゃないのか? 遊んでると取るぞ?』

 ナキがノセを見て言う。


「ナキさん、なぜ僕に言うんですか? あれですか? どっちが猪八戒かってことですか?」

『違うのか? 戦って決めるんじゃないのか? 豚同士』

 おぉ、ど直球だな。

「くっ! ……やりますよ、やればいいんでしょ! 僕だって強くなったんだぁぁ!」
 

“ガッガガッ! ドンッ!!”


「おらぁ! もいっちょっ! うおぉぉ!」

 ノセのラッシュだ。やればできるのに、ノセは優しいからな。


『ほぉ、ノセもやるもんだ』

「ナキさん、あいつは戦闘向きじゃないから、挑発したらダメですよ?」
 
『そうか? じゃあお前が守るのか? それならハウスに置いておけばいい』

 ……コイツは言葉が足りない。


「そんな事言ってないだろ! わざわざ焚きつけるなっていってんだ!」

 ほら、火が付いた。

『カズトの弟だが、弱っちいお前が俺に偉そうだな? あぁ?』

「あたり構わず喧嘩売るしか能がないんじゃねぇのか? おぉ?」



「『おらぁ!」』


「ちょっと、止めなくていいの?」

 リズムが近寄ってくるが、
「どっちもどっちだ。アイツらが決める事じゃない」

 二人とも過保護なんだよ。



『潰れろやぁ!』
 ナキが金棒を振り下ろすが、

「遅ぇんだよ! オラっ!」
 影で背後にまわった賢人が蹴り飛ばす。

「力だけだなっ!」
 賢人が苦無を飛ばし、追い討ちをかけるが、

『おらぁ! お前こそ速いだけだろ!』
 と腕を振って苦無を弾く。


 あっ、

「……終わったんだけど、何やってんの?」

 おぉ、怒りのデブゴン……


『あぁ? んだこら?』
「うっせぇぞ、ノセ」



「……う……うっせぇぞじゃなぁぁぁい!」

『「グハッ!!』」

 ノセのハンマーでの攻撃!


「聞こえてたけど、僕の事は僕が決める! お前らが僕の事を決めるなぁぁ!」

 ……泣きながら言うなよ。
 カッコつかないなぁ。


「……いてぇぞ、ノセ。……まぁ悪かったよ」

『ケッ、はなっからその調子でいろよ』
 ……治ったかな。

「おい、ノセに謝れよ」

『あぁ? なんでだよ? テメェが俺の分も謝っただろ』

「あぁ? 誰が馬鹿の分まで謝んだよ!」

『テメェ! 兄弟揃って口が悪いな! ボケが!』

“ゴゴンッ!”



『「いてぇ……』」


「バカとボケ、帰るぞ!」

 延長は無しだ。

「イヒヒヒ! バカとボケだって!」

『「うっせぇ! ブタ!』」


 ……仲の良いこって。


「……また喧嘩してるじゃない」

「喧嘩するほどって奴だろ……たぶん」



 バカとボケとブタか。

 俺は三蔵法師になった気分だよ。
 

「けっこう時間かかったな」

 遊ばなければ一時間は短縮できたはず。


「な! おかしいからね? ここは二層が最深到達層なのよ?」
 って言われてもな。

「まぁ、進んでるんだから気にするな。おっ、来たぞ」

 また暴走してやがる。



「お待たせぇー! 今度こそ、俺の運転でぇーー、ちょっ! 優しく! 優しくしてぇー!」

 ……賢人とナキが後ろに詰め込む。


「ねぇ! 俺は運転手なんだよ? ここは荷物をお・く・と・こ・ろ!」

 落内はうるさいなぁ。

「みんな乗ったな? よし、出発!」

 砂漠を運転するのも慣れてきたよ。



 車と落内を返して、ギルドを後にする。


『もう、四日目だが、やる事は多いぞ? 賢人はナキと昨日の情報を探ってくれるか?』

 昨日の警察が処理してれば、何か話が出回ってるはずだ。

『『りょ』』

『少しでも危険と判断したら、賢人が判断したら直ぐ戻ること!』

『おい、なんで賢人なんだ?』

 分かるだろ。

『ナキは動く方が得意だろ? 頭使うのは賢人に任せろよ』

『ん? そうだな! 任せたぞ賢人!』
 単純だ。

『はいはい』
 賢人も分かってるな。


『ノセはアジャティをよろしく頼む。扉は持ってるよな?』

『はい!』
 よし、あとは、

『リズムと俺は、これからアジャティの話だな。さっきの電話、どうだった?』

 リズムに聞くと、

『もう、ホテルのラウンジにいるみたい』
 
『なら行動開始だ』

『『『『うい』』』』



 ホテル内でノセと別れ、二人でラウンジへ。

 スーツの男が二人、一人は中国の人か?

『お待ちしておりました。丸森響様ですね』
『えぇ、よろしくお願いします』

 挨拶も終え、早速本題へ。

『それでは戸籍をなんとかしましょう。それさえクリアーすれば、中国養子法で養子には何の問題もありません』
 
 さすが丸森、ちゃんと仕事の出来る人を探してくれたようだ。

 戸籍はどうするのか知らないが、中国養子法では10歳以上15歳未満は親の同意書は親になる方が記入しても問題ないらしい。

 アジャティは小学校の低学年くらいに見えるが、ステータスで確認したら11歳。小学生なら5、6年生になる。

 やはり、栄養が足りてないのか、それとも元々……はないか。

 戸籍を調べて貰ったが、やはり名前だけではどうにもならないらしく、アジャティとは解放の意味があり、こちらではポピュラーな名前だそうだ。



『それでは、我々はこれで。なるべく早く、良い報告が出来るよう、尽力致します』
 と帰っていった。

『よし、後は待つだけだな。とりあえず、期間延長を親父さんに連絡しとけよ?』

 さすがに一週間で全てを終わらすことは出来ない。


『えぇ、カズト達にも迷惑かけて本当にごめんなさい』

 リズムは深く頭を下げるが、

『俺らはアジャティが幸せになるなら問題ない。それより、全部終わったら飯でも奢ってくれ。俺の仲間達も参加でな!』


『えぇ、喜んで!』

 一つ先が見えた。


 さすがに疲れ……



『カズト? カズト!』


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