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第一章 中年の不思議な冒険
説明と中年
しおりを挟む「ただいま……」
「お、おかえりってどうしたの?顔色悪いしなんかあったの?」
嫁の美羽が慌てて出迎えてくれた。
「俺もよくわからないけど、あとで話すよ、自転車の鍵持ってくね」
俺は扉に背中をつけてゆっくりと話す。
「え? うん、美容室は今日はやめとく?」
「キャンセルの電話するわ、ちょっと出てくる、すぐ戻るから」
「分かった、気をつけてね」
やけに重い身体を引きずり、マンションの階段を降りていく。
駐輪場まで行き、自転車からワイヤー錠を外す。
さっきの扉の前まで注意しながら戻ると閉まったままだった。
すぐワイヤーを通し鍵をかけてとりあえず一息、あらためて扉を見る。
「ほんとなんなんだこれ……」
古めかしい鉄の重厚な扉、こんな目立つものあったかな? このマンションは少し洒落ていてコンクリ打ちっ放し。
扉や柵は差し色で青色のはず、駐車場に続く扉も青だ。
ここだけ違和感がある。
(帰ったらそれとなく管理会社に聞いてみるか……)
家に戻り、まずは美容室のキャンセル、次に管理会社に電話をしてみる。
管理会社には、もちろん扉の事など口にはせず、荷物を一時的に仮置きしていいか聞いてみた。
壁に傷や汚れなどを付けなければ一日程度ならいいと返事をもらえ、扉などは無いのか聞いたら、駐車場に繋がる扉があるだけらしい……
という事はあんな扉は無いはず……
ソファーに横になる、疲れてもう何もしたくない。
「大丈夫?」
とコーヒーを入れて美羽が向かいに座る。
説明すると言ったんだった、そのまま言うしかないか…………
気怠い身体を起こし、不安だが今日の出来事を話していく。
「服破れてるじゃない! あーもう! 早く治療しないと、とりあえず洗ってきて! 用意しとくから!」
話しの途中でケガしてる事を思い出したら物凄い剣幕で怒られた、色々あって痛みも忘れていたようだ。
破れたシャツを脱いでTシャツになり、洗面所で右腕を洗うが痛みがほとんどない。
爪痕があった筈だが触っても傷らしいものがなく、不思議に思い見てみると少し腫れてるくらいだ……
鏡の中の自分は変わらずボサボサの長髪に無精髭、顔色も悪く自分でも見ていて気味が悪い。
「俺がおかしいってことか?」
リビングで怪我がなくなったと言うと、怪訝な顔で湿布を貼られた。
もう一度最初から説明させられ、自分でもなに言ってるんだか……と思うがありのまま話した。
黒い石を2つとカードをポケットから取り出し美羽に渡す。
「よくわかんないけどこれが落ちてたの? 数人の名前とかが書いてあるね……車にも乗って無いんだよね?」
美羽がカードを持ち読んでいる。
今気付いたが、カードの裏側にも文字が書かれているみたいだ。
「車に乗った覚えはない、ちょっとカード貸して」
俺はカードの裏面を確認する。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
職種:--
SP:10100
【スキル】
拳術 Lv 1
再生 Lv 1
【固有スキル】
成長促進
時停倉庫
職種変更
限界突破
情報解析
【称号】
ファースト
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「なんかのゲームなの?」
美羽は苦笑いしている、俺もつられて苦笑い。
「だよなぁ、自分でもわからない……」
(こんなの信じる方がおかしいよな)
「あれじゃない、久しぶりに外にでたし薬の副作用でも出たんじゃない? ちょっと横になったら?」
立ちくらみもあったし、やっぱ疲れてたのかな? そーだよな、こんなの俺だって正気を疑うわ。
俺がおかしいんだろ。
「……だな、少し横になるわ」
俺は着替えもせずに寝室に行きベッドに潜った。
今日は疲れた。
遮光カーテンの隙間から漏れる光りがウザいな……
(いや、どう考えても)
おかしいと思い、目を開けると。
白いな……
あれから寝れたのか? 寝てたのかな? 夢、か。
そうか、さっきのも夢『じゃないよー!』……
ん?夢『じゃないって!』じゃないらしい……
……畳、ちゃぶ台、昭和? 『っぽい? 爺様の趣味らしいよー!』
白い服を着てる3人?宗教『じゃないよー、てかそろそろ先に進みたいよー!』……はい。
俺は立ち尽くしたまま、この不思議な光景に呆けている。
『もう一度言うけど夢じゃないからね。面倒だから壱番君にココに来てもらっただけだから、まーここに座って』
男の子? が座布団を指差して笑う。
あー、今日はダメだ。
もーわからん、座ればいいんだろ!
フラフラしながらちゃぶ台の前に座る。
目の前の3人は右から小学生くらいのおかっぱ頭だけど僕って言ってるし男の子かな?
さっきから楽しそうに話してるけど、綺麗な顔だちで全く目が笑ってないのは怖い。
真ん中の爺いはハゲてて髭で神様って感じ。
左の人は俺くらいの年齢かなぁ、黒髪オールバックに眼鏡でキチッとしてるけど、目が死んでてクマが酷い、苦労してるのかなぁ。
『じゃー自己紹介するね! 僕はキョウリンリン、リンリンって呼んでいいよー! 隣の爺様がウンガイキョウ。んでその隣がチリ君!』
『俺はチリツカだ、早速説明をさせてもらう』
リンリンをひと睨みしてチリツカさんが俺の前にお茶を出してくれた。
「ありがとうございます」
出されたお茶に口をつける、普通に美味いな……
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