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第八十九話

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 野営をしているとこちらに向かってくる兵士の軍がいた。
「お前たちは何をしている!」
「これはもう無理だね!」
 といってプライドが双剣で斬りかかる。
「あー!なんとかなったかもしんねーだろ!ったく!!」
「ライド!やるからには一人も逃すなよ!」
「はいはい!」
 プライドの単独行動で軍隊とやり合うとは思わなかったが、暗闇に紛れてなんとか倒し切る。
「ライド!一人で先行するな!」
「分かってないね?俺はエンヴィさえ倒せればいい」
「それならそのあとは俺と戦うのか?」
「…それは遠慮したいね」
「なら約束だ、無駄に喧嘩を売るな!」
 こんなことが多くなったら命がいくつあっても足りない。
「分かったよ」

 倒した兵士達は土魔法で埋めてやる。
 50を超える兵士を埋めるのは大変だったが、流石にそのままにはして置けないからな。

 それからも宿に泊まるようなことはせず、帝都まで一直線に向かっていく。

 ようやく帝都に着いたのは10日目の朝だった。兵士の格好はやめて冒険者として中に入る。
 久しぶりに宿に泊まり汗を流すと、宿で飯を食いながら情報収集だ。
「なんでもギザール平原でやり合ったらしいが王国の奴等は逃げ帰ったらしいぞ?」
「あっはっは!帝国に楯突くからそんな事になるんだよ!」
 情報操作されてるみたいだな。
「くっ!こんな屈辱!」
「ライド?これは情報操作だぞ?気にするだけ無駄だ」
「わ、わかってる」

 それにしてもここを通ってくる間に見た村や街はどこも貧困とはかけ離れていたが、なぜ王国を取ろうとするんだ?
 普通にこの国を収めて置けばいいと思うのだが?

「それにしてもこっちの飯も悪くないな」
「まぁな」
「肉は食えなくはないな」
 プライドがそう思うほど飯のクオリティが高いのだろう。やはり国が裕福なのに戦争を起こす理由が見当たらない。

「エンヴィの狙いはなんだ?」
「賢者の愛した王国がなくなることだ」
「どんだけ昔だと思ってるんだ!!」
「『嫉妬のエンヴィ』だ、しつこいんだよあいつは」
 大昔の賢者と何かあったようだが、しつこいにも程があるな。

 飯を食った俺らは部屋に戻る。
 今のうちにスキルツリーを進めておく。
 ポイントは大量にあるので取れるスキルは取っていく。
 これ以上エンヴィに好き勝手させない為に。

 夜になってから俺たちは動き出す。

 俺たちは三人で城内に突撃した。
「おらっ!ったく多いったらないな!」
「そうか?たかが人間だ!!ウォォオォォ!」
 炎に包まれたプライドは人間を切り裂いていく。
「できるだけ殺すなよ!」
「無理言うな!こいつら操られてるんだぞ!」
「それでもだ!足を狙えば済むだろ!」
「ッッたく!めんどくせぇ!」
 城内はアリの巣を突いたように兵士が出てくる。

「先に行け!エンヴィを倒したら問題なくなるんだろ?!」
 ラビオンが残ると言い出す。
「この数はやばいだろ!」
「まぁ、暴れてやるさ!オラァ!」
 城壁を壊して道を寸断する。
「クソッ!!急ぐぞライド!」
「あぁ!いくぞ!」

 帝王の間までの道はそれなりに多かったが、プライドが蹴散らし、俺が足を斬って進んでいく。
 なんとかたどり着いた時は全身傷だらけだ。
 プライドは傷が治ってきているが、
「フルケア!」
「よし!エンヴィは任せろ!!」
 走っていくプライドは風のようだが、
「エンヴィィィィ!!」
「小癪な!取り押さえろ!」
 エンヴィは蛇のような肢体を持つ女性だった。
「グッ!俺に触るなぁ!!」
 炎がプライドを包み、兵士たちが燃え上がり逃げ惑う。

「俺と勝負だ!エンヴィ!」
「なぜお前如きと勝負しなければいけない?サルヴァ!出てこい!」
「は!」
 サルヴァと呼ばれた髪の長い槍使いが目の前に立つ。
「邪魔をするな!」
「お前が邪魔だ!」
 プライドの双剣とサルヴァの槍がぶつかる。サルヴァという軍人はことの他強く、プライドも四苦八苦している。

「邪魔だぁぁぁぁ!」
 サルヴァの槍を避けずに受け、そのまま一刀両断するプライド。
「な…」
「俺は無敵なんでな!」
 プライドの傷は塞がりその分仲間が倒れているはずだ。
「ライド!!お前は出来るだけ傷を受けるなと言っただろ!!」
「うるせぇよ!これが俺のやり方だぁ!!」
 エンヴィにたどり着くといっそう炎の勢いが強くなる。
「お前のおかげで俺は匣に入れられたんだぞ!」
「妾のせいではないであろう?傲慢さ故に賢者に封じられたくせに」
「あの時お前が俺の嫁に手を出さなければ俺だって…シャインの仇は取らせてもらうぞ!」

“ザクッ”
「それは無理な話ですねぇ。なぜならあなたはもうすぐ死ぬのだから」
「ウガッグ!く。クソ…な、なにを」
「サルヴァの槍には私の毒を仕込んでおいたからね」
「『アンチポイズン』!」
 俺は慌てて解毒を試みるが、
「そんなもので私の毒が消えることはない!」
「グッ!コフッ!」
「ライド!」
「あ。あいつだけは…ルシエ!俺の…」
「…分かった」

 俺はプライドをその場に残すとエンヴィの前に立つ。

「さて、これでお前だけだな?」
「なにを言っている?まだ終わっておらぬぞ?」
 エンヴィはまだ分かってないように玉座に座っている。
「いや、これを聞けばおまえは震え上がるさ」
 身構えるエンヴィだが、

「『古より解き放たれた獣を今ここに封じん!』」
「ま、まさか!」
 後ろに飛ぶがもう遅い。

「『聖なる匣』」

「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
「くっ!入れぇぇ!!!」
 エンヴィは逃げようとするが匣の威力に少しずつ吸い込まれていく。
「も、もう嫌じゃ!!匣の中はアァァァァァァァァ」
 光の匣に飲み込まれたエンヴィは蓋が閉まり出て来れなくなった。
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