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第八十八話
しおりを挟む「やっぱり私達も行く!」
「ここはどうするんだ?守る人がいなくなるじゃないか?」
出来ればリミ達にもいて欲しい。
「それは男のエゴだよ?私達だって戦える」
アビーが言う。
「俺が言うのもなんだが、やっぱりここはリミ達にも来てもらうのが良いと思うぞ?」
ラビオンも言う。
「わかった、だが危険なところには行かないで欲しい。みんなは後衛だ」
「私は斥候です」
ネイルが言うが、
「斥候は必要ない、ダンジョンじゃないんだからな」
「リミ、アイラ、アビー、ネイル、それにスロウスも来てもらう!」
「やった!」
「僕も?」
「あぁ。残りはここの防衛だ」
仕方ないか。
「「「「はい」」」」
「グレンがリーダーだからな?気をつけて守ってくれよ?」
「はい!」
それからギルドに行きポートに話を聞く、SOD、暁の獅子、はもう向かったらしい。俺たちに頼むのはビゼン辺境伯の護衛だそうだ。
できるだけ前線には出てほしくないのだろう。
人数も少ないからな。
「分かった、明日、出発しよう」
「死ぬなよ?」
「わかってる」
ブランドーで物資を買い込み、ブラハムに乗って辺境伯領に向かう。
勝っているといっても怪我人は多く、やはり戦争なのだと思い知らされる。
ブランドーから南に向かい5日ほどで辺境伯領にたどり着く。
ギルドに行き、辺境伯に取り次いでもらう。
「おぉ。お前達が『クラウド』か、噂は聞いている。今回は護衛だからよろしく頼むよ」
「はい!戦況はどうですか?」
ビゼン辺境伯は地図を見せると、
「SODと暁の獅子が奮闘している。兵士の覇気も上々だ?こちらが負けることはないだろう!」
「私達はビゼン様を精一杯お守りいたします」
「うむ、よろしく頼むぞ!」
次の日から戦場に足を運んだ、
SODが、暁の獅子が、王国兵士達が戦っているのを遠くから見ている。
あそこに俺たちもいた可能性があるんだ。
「いけぇぇーー!!」
「「「うぉぉぉぉ!!!」」」
戦争が展開を迎えてしまった。
帝国軍は兵士ばかりで民間人は少ないな。
「俺に着いてこい!!ここを突破する!」
プライドが声高らかにみんなを陽動し、中央を割って入る。
こちらは民間人や冒険者もいるのだが、左右からの帝国兵には目もくれず真ん中を突っ切ると帝国の指揮官を殺し、勝鬨を上げる。
「指揮官は俺が獲った!!あとは雑兵だ!みな殺しだ!!」
「「「うおぉぉぉおぉぉぉ!」」」
こちらも少なくない犠牲者がいるのに、士気は下がっていない。
俺たちはビゼン辺境伯を守っているだけでこの戦は勝ってしまった。
「よし!ライドと言ったな!あいつに兵をつける!」
『傲慢のプライド』がいる限り負けることはないと思うが、それ以上に兵が命を落とす。
あいつはそのためにたくさんの仲間を作ってきたのだから。
『再生』があれば死ぬことのない二人の戦いだ。
どちらが勝っても人間は大量に死んでいくだろう。
「止めなくていいの?」
「止められないだろ?ここまできてしまったら」
スロウスはゲイルベアのうえで死んでいく人間を見ている。
「俺たちはどうする?」
「先に進もう、ライドがやられたら『嫉妬のエンヴィ』が一番危ない」
帝国皇帝に扮したエンヴィは多くの帝国国民の命をその手の中に持っている。
いくらプライドとて、『無限再生』するエンヴィを倒せるとは思わない。
俺はそれを止めるために出来るだけポイントを奪っていかなければならないのだから。
とりあえず帝国兵からポイントを奪えるだけ奪う。
何千、何万人いると思ってんだ!くそっ!
これじゃ焼け石に水だ。
しかもさっきのように並んでいたらいいが指揮官が不在なので点でバラバラに逃げ惑っている。
「チッ!くそ。これじゃ思うようにポイントが取れないじゃないか!」
プライドが捕虜として捕まえた兵士達はやはり操られている。
そいつらからもポイントを奪う。
「ビゼン辺境伯、どういたしますか?」
「うむ、初戦は完勝といったところか」
「こちらもそれなりに負傷者が出ていますのでなんとも」
俺がいうと、
「あははは!何をいってる?これが大勝利じゃなくてなんとするんだ!俺に任せとけばいい!」
プライドは帰ってくるなり勝ち戦に酔いしれている。
「まだだ。相手は『嫉妬のエンヴィ』だぞ?お前に勝算はあるのか?」
「大丈夫さ、再生される前に斬り刻んでやるさ」
「はぁ、何十万人の人が犠牲になるぞ?」
「それで済めばいいけどね」
スロウスの言う通りだ。
プライドは人の命をなんとも思ってないようだな。
「人の命がかかってるんだぞ?」
「それはわかるが、エンヴィはそんなことじゃ倒せないよ?」
いってることはわかるが、他に方法はないのか?
「ここからどうする?」
「そりゃ、このまま進軍さ!帝都まで行くに決まってるだろ?」
エンヴィが帝都でふんぞり帰ってるのは癪に触るが、このまま大量の兵士の命を落としながら行くのも違うだろ。
「ライド?ここからは少数精鋭で行かないか?」
「どういうことだ?」
「このままいけばどちらにしろ兵士がいなくなると思わないか?」
「…で?」
「ここはビゼン辺境伯に任せ、俺たちは隙をついて帝都に入る」
「…分かった。やるからには成功させるからな?」
「あぁ」
行くのはラビオン、俺、プライドの三人だ。
「僕は?」
「スロウスはこっちでみんなを守ってくれないか?」
リミたちやアビーを守れるのはスロウスくらいだからな。
「うーん、分かった」
「よし!そうと決まればさっさと動こう!」
「分かった!いくぞ!」
帝都までの道のりは帝都軍の馬車を使う。
「止まれ!中はなんだ!」
「負傷者だ。置いて補給物資を積んで蜻蛉返りだがな」
「そうか、ご苦労!!」
兵士の格好で動きにくいが、こちらもポイントを奪いながら御者台に乗っているので文句も言ってられない。
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