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第七十八話
しおりを挟むあれから一週間、ミリアとミリムもだいぶ落ち着いてきたようで、普通に飯が食えるようになった。
「今日は唐揚げだ」
「「え?!」」
ミリアとミリムが驚いている。
「ん?お前たちまさか?」
「私達は日本ってところから」
こんなところで同郷かよ。
「待て待て、ここじゃなんだから…そうだな、荷車に行こう」
二人を連れて荷車に入ると座らせて飲み物を出す。
「さて、俺はお前たちと多分一緒で転生者だ」
「やっぱり!他にもいたんですね!」
「私の名前は木之内美梨亜です」
「私は斉藤美里夢」
「俺は名前がわからないが日本人だった」
聞けば二人とも20代のようで電車に乗っていたが、そこから記憶がないようだ。
神様にも会っていないらしい。
複雑な心境だが、ここで会えてよかった。
「二人ともなんとか無事でよかった」
「はい…助けてくれたのがルシエさんで本当に良かった」
「私はもうダメだと思ってました」
二人は涙を流す。
「二人はもうミリアとミリムとして生きてるんだな?姉妹って言うことも受け入れてるのか?」
「「はい」」
「ならそれでいいと思う、これからは普通に…ではないか、こちらの世界は残酷だからな」
「命が軽いってことですか?」
「いや、日本よりも重い。簡単に死ぬからな」
異世界は簡単に死ぬ。だから大事にしないといけない。
「二人を『鑑定』するぞ?」
「「はい」」
ミリアは状態異常無効を持っていて、ミリムは蘇生魔法を持っている。二人ともまだスキルツリーは育ってない。
このことを話すと二人は驚いていた。
「私がミリムより元気だったのはそのおかげですか」
「私が蘇生魔法?」
「ミリアは状態異常無効だから病気なんかもしないと思う。ミリムは蘇生魔法だが、これはおいそれと使っていいものじゃない」
「そ、そうですよね」
「それに使えるかどうかもわからないからな。まぁ、使わなければいいだけのことだ」
「はい」
ミリアとミリムはこれから活躍してもらうとして、話はここで終わりにする。
「あの」
「ん?なんだ?」
「ルシエさんは帰りたくないんですか?」
「日本にか?」
「はい」
「今は仲間がいるからな、それにあっちに未練はない」
「そうですか。私もそう思えるでしょうか?」
女の子だ、しかも20代だったから楽しいこともこれからだったのだろう。
「たぶん帰ることは出来ないと思う。二人とも分かってると思うが?」
「そうですね。小さい頃からの記憶もありますから」
二人は転生なのだろう。俺が特殊なだけだ。
「これからどうするか決めればいいと思うぞ?まだ12歳なんだからな」
「「はい」」
喋って少しは気持ちの整理がついたみたいだな。
「よし、唐揚げ作るの手伝ってくれるか?」
「「はい!!」」
二人は久しぶりの日本食に涙した。
ようやく元気が出てきたようでリミ達と買い物に出かける。
聞くとミリムはファッション系の会社だったらしく布を大量に買っていた。
ミリアは食堂勤務だったらしく食材をあれこれ買って試すらしい。
元気がでたので俺も安心だ。
ようやく馬車での移動も出来るようになったので、今後のことを話しておく。
「とりあえずは迷宮街に拠点を作ろうと思うが何かあるか?」
「家建てるの?」
「まぁ、クランハウスになるようなところを買うつもりだ」
「よしっ!!」
リミがガッツポーズをしている。
「パーティーは?」
アイラが聞いて来るが、
「とりあえず『リベル』と『ストロミー』に分散して入る感じだな」
「そう」
「あ!まだ人は増やすんですか?」
「その予定は無いな。まぁ、今後どうなるかはわからんが」
ラムザ、ミリア、ミリムはまだ経験を積まないといけないからな。
「僕は寝てられれば」
「スロウスも働いてもらうぞ?」
「えー、、、まぁ、いいけど」
『7匹の獣』のうち『怠惰のスロウス』が仲間になってるのは不思議だが、まだ子供だしこれからだな。
「あとはいいか?」
「「「「「はい」」」」」
と言うことでようやくスラールから出ることが出来る。
ギルドに顔を出すとギルマスがやって来る。
「ようやく金の準備が出来たからこっちにきてくれ」
ワイバーンの素材は高値で取引される。しかもレッドキャップもいたのだから、それなりの値段だ。ギルマスには待ってくれと言われて今日取りに来たのだ。
応接室に入ると、
「早速だが、ワイバーン一体、白金貨1枚で16体分。レッドキャップは白金貨3枚だから、合計白金貨19枚だ」
「確かに」
「それとランクアップだ。『リベル』がBランク、『ストロミー』がAランクに上がったぞ」
「ほう、いいのか?」
「ワイバーンをあれだけ倒したんだ、ランクアップするのが普通だ」
「そうか」
「個人だと、
ルシエがAランク、リミ、アイラ、ネイルがBランク。ラビオン、ウリン、アビー、ワルツがAランクだな」
「俺だけAか?」
「ワイバーン討伐にはお前だけだろ?」
「そうだったな」
「まぁ、他のメンバーも上げたのはこれまでのダンジョンドロップを確認したからな!なかなかやるじゃないか!」
ギルマスはニコリと笑い手を差し出して来る。
「これからもスラールにいるんだよな?」
「いや、今日にでも出るぞ?」
「え?うそだろ?」
ギルマスには悪いが俺たちの帰る場所はここじゃないからな。
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